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草試合での初勝利

と、同時にすぐに両腕を引き抜いてタカシに掴まれないようにして、少し退くと、タカシの両足を掴んで引きずり、持ち上げてから両腿の裏に腰掛けるように押し込むと、

「むぎゅうぅっ」

と息を吐き出させられて苦しがるので、その隙にもう一個追撃しようとした。


追撃したかったが、そこにトヨの声が

「来てるぞッ!」

と飛んできたので、ぱっと見れば、女子を勢いよく押し込んで下がらせた少年が襲い掛かって来て、長い棒をぶんと振って来た。

咄嗟にタカシの足で受けて減殺し、棒を逆に掴むと、押して引いて押し込んで片手で胸倉を掴んで股座に跳び込んで巴投げで転がして、すぐに乗りあがって肘撃ちしておき、棒を踏みつけて、立ち上がって来たタカシが頭骨を拾い上げたのを見て、ダッシュして捕まえようとするが、相手側の一人が長い棒を持って立ち塞がるので、身を翻してそのルートを止め、横へ走りだしながら戦況を見て、空いてる場所へ跳び込んで、敵陣の中をショートカットすると、それを見たタカシが必死に迂回してゴールの置き石へ辿り着こうとして、ラインを下げてきた敵のディフェンスがまた一人立ち塞がり、鞭が飛んできて足に絡まり、転びかけて自分から横回り受け身を取り、ぐるりと回る視界に耐えて観続けながら立ち上がるうちにも、素早くタカシくんにトライを決められてしまった。


敗北……。

ハァ……。

どうすれば良かったのかなぁ……。

まあ、女の子たちは怪我をしていないし、良かった。


「おつかれー!」

「おーす!」

「おつかれ!」

「おつー!」

互いに終了の挨拶をしてから陣地に引き揚げる。


「あー、疲れたー」

「負けたー」

「あー、ドキドキした~」

「まあ、頑張ったわよね」

こちらはギリギリの5人しか居ないし、二人は女の子だし、そもそもやや年少の初心者なので、若者にとってはかなり手加減が必要な物足りない相手であったろう。


マサシさんが近づいて来た。

ニコニコして、

「お疲れ様。初めてにしては動きがよかったじゃないか」

「あー、頑張りました」

「なかなかいい感じだったし、もう一遍どう?」

「お願い……」

振り返って

「みんな、いいわよね?」

うん、と全員がそれぞれに頷いたり、親指を立ててやる気を示したりするのを見て、また向き直り

「お願いします」

「よーし! おーい、もう一回だー!」

「おー!」

「えー」

「あ、規定の休憩時間ちゃんととるぞー」


あ、時間なんか頭からすっぽり抜け落ちていた。

小石を盾に投げて計時してた筈だけど、

「石の音なんて全く耳に入ってなかったよ」

「ああー、ぼくもだ」

「そういう所だな、まだまだだなー」

と反省しつつ、さっきのをどうしたら良かったのか反省しているうちに、再度対戦練習。


またしても負けてしまったが、幸いにも怪我無く終了。

その後も3対3での練習をさせてもらったりした。

ぼくたちにとっては素晴らしい娯楽だったし、良い訓練にもなった。

半分くらいは打撃の痛みに耐える訓練になっていたが。


女の子には盾だけ構えさせて、ひたすら防御に徹してもらったが、ちゃんと出来ていたから満点。

トヨキは間合いのある棒網を使いこなせていなかったようだが、一応ちゃんと全体を見回して指示を出せていたし、マサは盾と棒で二人を相手にする練習ができていた。

ぼくの運び屋役は……なんか、半端に必要以上の事をしようとして、足を掬われていたかなあ……。

うーん……また後で反省しないと……。


スコッレは草試合でも賭け事だが、こちらは金を殆ど持っていないので、一試合ごとに炭十本で勘弁してもらった。


--


その後も時々、練習させてもらいに行った。

大体毎回炭を貢ぎに行くようなものだったが、それでちゃんと相手をして貰えるし、試合の後では若者たちとは何となく友好的な関係になった。


稀に草試合で作戦が巧く図に当たって勝利すると、尾根の上の草原を囲むそれほど多くはない観客から驚きの歓声があがる。

そういう時には、試合の後に僅かだが賭け金が貰えた。

まあ、いつも炭十本でしか賭けてないから、大した金額ではない。

銅貨が数十枚といったところだ。


それでも、初勝利の時には物凄く嬉しかった。

持って行った炭をいつものように回収されて終わるどころか、手元に戻されてきて、尚且つ初めてお金をこの村で手に入れたのもあって、相当興奮した。


そして、ぼくらのことを『やられ役』と認識している少女、対戦相手の少年の中に意中の者が居る子から、睨まれてしまった。

一方ではそういう不本意で理不尽にも思えるような、でも自然当然にも思える事があるが、しかし他方ではそれまで中立に観ていた少年少女がぼくたちに惹かれ始めて、草試合の勝利後に近づいて来た。

それが、或る程度までは近づいて来るのだけれども、少し離れた所からでもじもじしていて、視線だけ下げたり上げたりして気持ちを伝えて来るので、こちらから歩み寄る必要があった。

トモコやエイコにも新しい友達ができたし、ぼくも一人の女の子と仲良くなった。

スカーフを巻いた子だったけど、気紛れで、甘えていたのに急に()ってきたり、つと帰っていったりしたのに、次の練習では笑顔で手を振ってきたりした。

名前は知らない。


--


スコッレや自主訓練で鍛え始めていたぼくたちだったが、狩りの為に土木工事用具を振るって落とし穴を掘ったり埋めたりするのもまた、良い感じの鍛錬となっていた。

罠だけでなく、キルゾーン全体の整地なども体力を要する作業だった。

同様に、本拠を守る土塁と壕を時々更に掘り下げては積上げ、堀切までは行かないが、少しずつ強化していて、そういうのも鍛錬になっていた。


狩をすることで栄養状態が多少改善され、ぼくたちはこの三年間で皆それなりに成長した。

トヨとぼくだけでなく、マサも一人前な感じにヒゲが生えていた。


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