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四年目の春 スコッレの草試合

四年目の春。

今年もまた、晴れた日を選んで、川辺の石碑の前で開拓村の亡くなった者を偲ぶ。



スコッレの練習の時期が近づいてきていたので、スコッレの練習も一応してみた。

その為に、専用の武器が必要なので、枝に枯草のクッションを分厚く巻いたりして急造した。


ぼくが親指(ドゥモ)役なので、武器を持たず、最初にダッシュして、地面に打ち込んだ枝付きの杭を相手の親指(ツモ)に見立てて、草束を巻き付けた太枝に一撃を食らわして杭を少し動かすと、即座に頭骨に見立てた枯れ木を拾い上げ、素早く踵を返して自陣へ退き、置き石の上へトライを決める。

マサはぼく目掛けて襲い掛かって来る相手組の面々の動きを想定して、一人へ威嚇とフェイントを掛けながら、実際には別の標的を阻むことで、二人の前衛へ圧迫を加える。

女の子たちは一時的に前へ上がり、相手の仲間が上がって来る路を塞ぐ。

弓はスコッレでは禁じられているので、トヨはヒュンヒュンと威嚇的な風切り音を立てながら棒網を回転させて攻撃の準備をしつつ、全体の様子を見て、特に運び屋(トゥマ)であるぼくの支援を重点的に行う。

仮想的の動きは練習前に幾つかプランを立てておき、プラン1ならプラン1をやると決めて練習する。その時々で仮想的の動きをトヨが宣言するので、それに対応するように皆が動いて、一定の時間走り続ける。

一定の時間と言っても、ストップウォッチも無く、曖昧だ。

でも大体の感じは教えてもらったルールから推測できるので、トヨががんばって計ってる。

くたくたになって休憩を挟むと、今度は次のプランの練習だ。

そうしてインターバルトレーニングを繰り返して、心身を慣らしていった。


--


冬の間に揃えた防具とスコッレ練習用の武器とで、四年目の春になってから若者の党派に草試合を挑んだ。


夕方に待ち合わせ場所の尾根の上の草原に行くと、もう練習していた。


「よお! ぼくはマサシだ。この一党の頭だ。今日はよろしくな」

「トモコです。窓口役です。こちらこそよろしくお願いします」


初回は、若衆の中の年少組らしい一団との軽い手合わせから始まった。

ぼくたちとほぼ同じか、少しだけ年長に見える。


村の若者の誰かが口笛をピィーッと鳴らしたので注目する。

「じゃあ、石百個分、始めるぞぉっ」

「うーいっ」

「はーい」


小石を足元に百と一個だろう、小山に積み上げた少年が、木の枝から吊るした盾を前に立っている。

あの小石を盾にぶつけて、揺れが収まって、また次の小石を投げ、最後に百一個目をぶつけたら、即時間切れ。

それまでにトライを決めれば勝負がつく。トライが決まらなければ、時間切れの時に自陣に引き込んでる方が勝ち。


中央に引かれた線より盾5個分下がって、こっちの親指のぼくと相手組の親指のタカシくんが睨み合う。

間には頭骨に見立てた木彫りが置かれている。


スコッレ自体を訓練と位置付けて戦闘用フル装備のぼくと違い、タカシくんの装備はあくまでもスコッレに適した軽装で、防具らしい防具はショルダーガード以外にはニーパッドとエルボーパッド、それにヘッドギアくらいだった。

ただ、長袖の襟無しシャツと長ズボンとモカシンで肌は覆っている。

声変わりの終わりかけたような少しいがらっぽそうな声で、愉し気に話しかけて来て

「よお、凄いの着けてンじゃんっ。初めてって本当?」

「ああ、なんだか背中がぞわぞわするよ」

「おお~……」

とニヤニヤしていたが、トヨや向こうの鞭がヒュンヒュンと威嚇的に唸り出すと、神経質に目をぱちくりしだして、そろそろという頃合で、

「へ……オラッ行くぞォッ!」

タカシが気合を入れる。

「おオオッ!」

こちらも腹から鯨の声をあげて、気合で押すと、カウンター役の少年が小石を投げ、盾に当たってカツンと音を立てた。


途端に地面を蹴って飛び出す。

タカシくんが猛然と近づいてきて、ヘッドギアの中からまん丸に開いた目でぼくを見ている。

させるか!

こちらも目を開いて観続ける。


タカシが打てる感じで置いた額へ、のびてくる右腕へ、右へ上半身を逃がしつつ左外側から腕を払い、誘い込んで下になって倒れ込む。

すぐにタカシが馬乗りになって左膝を地面につき、右肘で俺の顔を撲ろうとする。


左手でタカシの腕を抑えながら、足を立てて全身を仰け反らせ、後頭部と踵でブリッヂして敵を頭上の地面へつんのめらせた。

そのまま右足をタカシの左脹脛へ掛けて、逃げられないようにしておいて、右手で敵の左前腕を頭上へ掲げて手を地面につけられないようにして、右肩を支点に、左脚で地面を蹴り押し、思いきり左側を仰け反らせて、全身で下から押して、上に乗ってる奴を右側へ転がす。




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