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『スコッレ』

作業BGM: 『OLIVE』by REBECCA

「今年はシズの村の連中がうちに対戦に来るってよ!」

「当然うちのに賭けるぜ!」

「いやぁ、あっちの組も新戦力のツモが凄いってよ?」


「何の話?」

「今年の祭のスコッレで、何処から来るかって話さ」

「スコッレって何? 祭って?」


開拓村生まれのぼくたちはこのサカヌキ村に来てから初めて存在を知ったが、世の中には『スコッレ』と呼ばれる特別な遊びがあるらしい。


ぼくたちがそれを知ったのは三年目の秋で、当該の時期は、それまでは拠点建設や食糧採集に夢中だったから村に寄り付かなかったし、小部落の人達もあまり興味がないらしかったから話題にも上らず、それで知ることも無かった。

偶々今年、拠点や漁など諸事項の確認の用事でやむなく上村へ行った時に、ついでに道端の世間話を聞き集めてるうちに知った。


『スコッレ』とは、参加勢力から選ばれた一定人数の組同士が対抗して、動物の頭骨スコッレを奪い合い、自陣に置いた大きな石の上に正しい向きで乗せれば勝ち、という遊びだ。


元々は、一つの大物を仕留めた時に参加勢力が複数あって分配で揉めた場合に、勢力間で殺し合う代わりに、まだ血の滴る獲物の頭部を使って行っていた、血が滴っている間に迅速に決着をつける決まりの、血塗れで非常に乱暴な儀式だったのだろう、と言われている。


でも、正確な事は伝わってないので、誰も本当のところは知らない。

もしかしたら、逆に元々は撲ったり蹴ったりは無くて、次第に乱暴になってきたのかもしれないじゃないか……。


選手の人数は、手の指の数と同じ、五人。

親指(ツモ)と呼ばれる、各組ごとに一人だけ選ばれた素手の選手のみが頭骨に直接触れる事が出来て、それを自陣の石に運べる。

それを邪魔したり援護したりするのが、四本指(フィグ)と呼ばれる四人の選手。

四人は規定の武器を持って対抗党派の選手を攻撃して打ちのめすことが出来る。

そういうとても乱暴な性質は、この遊びの起源を今によく伝えている、と言われる。


四人が持てる武器は、切ったり刺したり砕いたり削ったり出来るようにしてあってはならない。

幾ら乱暴な遊びであっても、危険だからこそ、無駄に命まで奪わずに済むように工夫されている。

使う武器は自由に選べるが、直接一撃を加えて叩きのめす為に緩衝材を分厚く巻いた棒を選ぶ者が多い。

その亜種で、足元を引っ掛けやすい大鎌状の枝に緩衝材を厚く巻いて使うのも居る。

中には、相手に絡みつかせて暫くの間動けなくできる網や鞭を選ぶ者も居る。

ただ、縄で縛り上げるのは禁止行為だ。

選手によっては素手で攻撃もする。

無論、運び屋も運ぶだけでなく、素手で攻撃できる。

その場合も絞め殺したり、関節を極めて砕き、再起不能にするような真似は禁止行為。


最初は互いに少し離れた所から、先ずはダッシュして先に頭骨を手中に収めないといけないから、いくら力強くても鈍足では忽ち負けてしまう。

だから普通はやはりもっとも突進速度の速い者が運び屋(ツモ)になる。


当然相応の防具が必要になる。

怪我するなんてのはしょっちゅうで、下手すると失明したり不具になったり、最悪は死ぬ危険もある。

でも、人によってはそういうのに最高に興奮するので、それで今に至るまで廃れていない。


いつ頃からあるのか誰も知らないらしいが、相当昔からプレイされていたらしく、主要な村であれば一つは代表勢力があって、大きな町だと複数の党派が活躍してたりする。


村や町などには、秋になると収穫祭というものがあるらしい。

毎年その時期には食糧採集に余念のないぼくらには縁がない催しだしな……知らなかったのも無理はない。


で、スコッレの集落間の対抗戦というものが収穫祭の目玉イベントの一つだったりして、夏の終り頃になって対戦情報が伝わってくると、村では噂話で場が賑やかになる。

ぼくたちが耳にしたのは、まさにそういうのだった。



この遊びが特別なのは、この遊びは賭け事であり、勝利を得た党派が利益の大部分を得るというところと、それが「遥かな昔からそうであった」決まり事ということで、その勝者の権利が国中で、いや海の向こうにあるという他の諸国の間でも認められているというところだ。


だから、この特別な遊び「スコッレ」には、それで利益を得て暮らしていく強者が居るらしい。

そういう強者たちの一党は、時として国の境を跨いで旅をしている、とも。

まるで傭兵のように。


サカヌキ村みたいな辺鄙な場所はともかく、街だとそういう強者たちが割合頻繁に訪れては地元のチームと対戦してゆくので、それを観戦するのが多くの者にとって凄い娯しみらしい。


言われて思い出したが、ぼく自身もそういう強者がサカヌキ村を訪れたのを目にした事があった。

最初に気づいたのは、例によって村の子で、何か大声で触れ回りながら村中に知らせるから、ぼくたちもすぐに気づいた。

草を採っていた手をちょっとだけ休めて街道に目を遣ると、林を煙らす冷たい霧雨の中、ぬかるんだ赤土の田舎道を、陽に灼けて薄汚いなりをした大小の男たちが六七人、棒や大きな袋を肩にかけて、黙って何かをくっちゃくっちゃと噛みながら、肩を揺らして悠然と歩いてくる。

いかにもタフそうな男たちばかりだったが、中に一人だけ小柄で抜け目なさそうな男が居た。

それまであれは傭兵だと思っていたが、スコッレの選手だったんだ。


貧乏閑なしのぼくたちには、じっくり観る閑なんてなかったから、気づかなかった。



拙作をお読み頂き、実に有難うございます。

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