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濾過装置


エイコと二人きりで話す機会も無いうちに、一服を終えて、仕事に戻る。


マサとぼくは場所の見当をつけて、固定点にできそうな木の枝を見つけ、適した蔓を探して採った。

木に登り、太い枝の先へ歩いて行って、座り込んで、蔓を固定する。


「マサー、どう、こんなで?」

「引っ張るぞー」

「いーよー」」


自分が跨ってる枝が少し揺れるが、太い蔓を結わえたのは太い枝の途中で、揺れてもそれほどじゃない。


「いいんじゃないか?」

「うん、結び目も緩んでない。一応もう一つ〆たら降りる」

「おう、じゃあこっちは適当なのぶらさげとくぞ」

「助かる」


こちらが樹上で作業中、マサが杭を傍らに刺して辺りを見張りながら作業していてくれるので、安心して作業できる。

マサは、枯れても少し重量がある太い枝きれを、動作テスト用の錘として蔓の下端に結びつける。

こちらも樹上から辺りに注意を向けているが、作業中なので転落防止の為にもかなり手元に神経が集中してしまう。


無事に互いの作業が終わり、ぼくは木に元々這っていた蔓を利用して落下速度を減速し、高い枝の上からあっという間に降りて来た。


降下に用いた蔓をそのままぐいぐい引きずり下ろすと、マサの近くで自分の杭を手に見張る。

マサが結び終わると、今度はぼくの蔓を結び付け、それから二人して土塁を登って本拠に戻る。

戻りながら手にした蔓で時折錘を引いて、最後は小川まで引き落とした。

「マサー、ちょっと短かったぞー」

「うーん、失敗かー」

「もう……一尋か? とりあえず」


もう一度森へ戻り、長さを調整後、再試行して、今度は良かったので、


「それじゃ、汲み上げてみる」

「うん」

ぐいーーっ、と蔓を引いて、小川の流れに浸かっている錘を手繰って引き寄せる。

蔓を引けば引くほどに、次第に重くなるが、枯れ枝の錘が手元へ来た。

少し重たいな……。


「これ、どっかに引っ掛けながら引っ張りたいよ、蔓。重くてさ」

「だろうなあ……これでいいんじゃねえの?」


マサが示した木の枝の曲がって引っ掛けやすそうな枝ぶりに頷き、しかし──


「いや、ここに来たら、最後まで引っ張り上げた時に、なんか胸元に上がっちゃって、注ぐのにはちょっと……」

水を汲み上げた壺がこんなに持ち上がると、注ぎ込みづらいのでは?

「え? いや、いいだろそのくらいだったら」

「そう、か、な……?」

よくわからない。

「何だったら、足元を高くすれば? ……土とか石とか積んで」

「ああ、そういやそうだな」

問題解決。

これで場所は決まった。


--


マサがじっと何かを見つめている。


「ん? また何か見つけた?」

「ほら、あそこ」

ん~?

あ、蔓の上で影がきゅっと動いた、また動く。

まるで油断なく動物が出たり退いたりするみたいな動きだ。

だが、頭上に生き物の姿はない。


「あれ、上の蔓の影だねぇ」

「ああ、うん、そうだね」

ほぼ平行な上の蔓の影がちょうど下の蔓の上に落ちていて、僅かな振動でも大きく動くのだった。


時々そんな風に、身の回りの不思議に目を留めて、じっと観察するのが愉しい。


--


履き物の紐の締まり具合を確かめて、良さげな石を探しに土塁から森へ降りて、見つけてはもっこに放り込んでマサに引き揚げてもらい、近くの作業現場へ持って行ってもらう。


それから、現場の端っこで、地面を少し掘り削って窪ませておく。

出来た小さな穴へ、作ったばかりの蔓利用式水汲み仕掛けに壺を結わえて、小川から水を汲みあげると、水を適量注ぎ込み、壺を割らないように気をつけて防御壁から出た突起に蔓をひっかけておく。

あとでトヨに、森側から見て不自然でないか、チェックしてもらわないとな……。

掘り返した粘土を穴に戻し、少な目の水で捏ねて、固めの土玉を作る。


マサと集めた石を置き並べて、濾過装置の土台を作って行く。


仮拠点の時とは違い、もうここから移動することは考えなくて良いので、据置式の濾過装置を設置しておこうというわけだ。

もっと早く据え付けたかったが、閑が無かったり、他事に忙殺されていて、ここまで遅れた。

最初のうちは、隠蔽に力を入れていたので、はっきりと人の活動を示すそうした仕掛けを露出させるのに抵抗があったというのもあった。


で、水を汲み上げるのを楽にしたかったので、小川の上手側で水を汲み上げるのに、木の枝から吊るしたロープの先に壺を付けて、それを手元の縄で引っ張り上げるという仕組みをさっきまで作っていた。


捏ねた粘土の泥玉を、石へ勢いよく叩きつけ、押し付けて、並べた石と石の隙間を埋めていく。

穴を掘って出た粘土だけでは足りないので、近くの土盛から乾いた小さな粘土塊を短杭で突き崩して、持って来て、水で捏ねるのだが

「マサー、手伝ってー」

「おーん? どしたん?」

「粘土が重いよー」

「ほーん」

土台を作っていたマサが、手にした泥を現場に置いてからやってくる。

ぼくが固まってしまっている粘土の塊を叩いて見せると、

「担架使えばいいよ」

「あ、そうだな」

近くに防御壁の隙間を塞いでる携行柵があるので、それを外して担架として使い、粘土塊を何個か載せると、引きずって作業現場まで運び、水の入った穴の傍に土塊を転がした。



数日後に土台が固まると、今度は浄水筒を作った経験のあるトモトヨの協力を得て、濾過装置を作った。

携帯式と違って屋外に据置だと、枯葉などが積もるので、対策が必要だった。

色々必要なものが多くて大変だが、ぼくたちは順調に進捗させていた。


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