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防具 とりあえず簡便・簡易・軽量に

満月に照らされての帰り道、マサと一緒に獲物を雪上に引き摺りながら、自分の行動を思い返して、つくづく

(俺って奴ぁ……)

と情けなく思う。

仲間と一緒なのに、一人で突っ走ってしまった。


振り返って思い出すほどに、胆が冷える。

一か八かの賭け、としか言いようがないような無謀な挑戦だった。


思い起こせば、エイコを助けに跳び込んだ時も、そうだった。

後先考えずに、目の前の機会を唯一と信じて、賭けに出た。


今回は別に、突っ走る必要などなかったにも関わらず、いきなり突っ走ってしまった。

ぼくは、なんだか、突っ走りたがり屋になってしまっていないか?

隙あらば暴走。

そんな奴、仲間にとってはとんでもなく迷惑な奴だろう、うーん……まるで狂犬だな。

『おい、狂犬』

とか呼ばれたくないもんだ、が……。


--


これまでうさぎやねずみ、いたちなど小型の獣しか獲ってこなかったが、今回は一匹の中型の獣を屠ってかなりの肉を得たので、或る程度の量を幾つもの土器でよく煮込んで数日分の食事として、一部は炙ってムシャムシャかぶりついて顎を悦ばせ、残りはタンニン汁を塗って燻して保存食にした。

血液もマサが幾つもの壺で持ち帰ってくれたので、真っ赤な血と脂の煮込み汁で塩分込みの滋養を補給できて、非常に活力を得て、成長を促され、仕事にも打ち込めた。


その後暫くは皮の処理で手間と時間を取られたが、雪が積もっているのと作業小屋があるお蔭で、時間を一切気にせずに好きなように作業を進める事ができた。


--


しゅっ、しゅっ

しゅっ、しゅっ

穴居内に据えた大き目の石で、根気良く細い骨を研ぐ。

一年前に仕留めたいたちの骨だ。

良い感じに枯れて来て、加工し頃だった。


「あの獣は、良い獲物だったなあ」

「ああ、相当な食いでがあった。まだ元気が出るよ」

「でも、やっぱりああいうのがこの辺りにも出るんだな」

「そうだな。オオヤマネコも噂通り本当に居るかもしれねえから、気をつけねえとな」

「ああ、うん……」


エイコが、

「お茶だよ~、休も~」

「はあ~い」

「おー、あいがとう」

「お、くれ、くれ」

「ど~ぞ~」


その日は、一寸大きいが一応使える針を数本作り、「繕い物に使って」と贈って、エイコに喜ばれた。


--


早春に入り、皆の体調も良いし、この季節は例によってまだ草は全般に不足してるが、考える時間はその分ある。


ぼくはまた防具に着手した。


人体のように柔らかく動くものを、硬いもので部位ごとに分けて覆い尽くそうとすれば、部位間の連結のしやすさだとか、部位の端に突き出て来る硬い素材の縁の始末だとかいった事どもを、当該部位ごとに面の角度や狭さ広さや動き方を色々考えて工夫せねばならない。


ただ、ぼくたちは成長途中なので、仮に今苦労してあんまり身体にぴったりした鎧を作っても、すぐに使えなくなるかもしれない。


とりあえず、簀巻きで済む箇所は簀巻きで済ませ、それ以外の処は防寒着と同様に、下に緩衝材を巻いて、上から樹皮などを少しずつ足して、あまり動きを制限しない、ふわっと分厚く全体を守る、その中に身体を埋もれさせるような感じで良いのではないか。

とりあえずは。


ぼくたちの場合、入手可能素材が著しく制限されているし、加工精度も粗い。

それだけでも酷く出来ることが限られてしまううえに、更に着用者の体力も少ない。

色々考えてみてはいるが、あまり大したことは出来そうにないのが現状だった。


とりあえず、鎖骨は折られたくないし、首も叩き折られたり掻き切られたくないので、首や鎖骨がその中に埋もれるくらい、たっぷりと枯草の束のクッションを肩に掛けて、胸から背中までを覆ってみる。

クッションに敵の一撃が入ってきたらクッションにならないので、表面を樹皮紐で織った布で覆いたいが、それもぼくたちにとっては貴重品なので、易々と出来上がったりはしない。

皆で少しずつ紐を作り、それを女の子が地道に織りあげるとしても、とりあえず必要な一枚にも十数日かかる。

それまでは、結局は今までのように樹皮を重ねて覆っておくのが、最も手っ取り早い。

それに、クッションだけでもあまり積み上げると、重さが莫迦にならない。

防具の重さで雪にうずもれてしまうのは、厭だ。


その間に、ぼくは軽量ヘッドギアの改善を実行し、額やこめかみの防護バンドを追加した。


また、性獣の頭蓋骨を縦に真っ二つに削り割って形を整えた部材を用意し、それで自分の頭を左右から挟む軽量防護板とした。

ただ、そんなのが仲間や村人の目につくと不味いので、草を二本ずつの平織にして布のように面を作り、性獣頭骨部材の上から宛って他人の目から隠せるようにする。

固定はとりあえず自分の頭髪の上へ直に宛がい、紐で巻いて結わえてみる。

その上からヘッドギアを被って全体として固定する。


ヘッドギアが獣の反撃を喰らってぐるっと回っていたので、回りづらいように、頭頂部から三層の防護帯を貫通して後頭部を守る細枝を、もっと長いものと入れ替え、首の後ろまで守らせる。

首の少し下まで伸びているので、或る程度首も左右に回せるし、でも一撃喰らって回転しても制動力がかかる。

ヘッドギアの後ろ半分の重量が少し増したので、バランスがとれるようになったことから、前半分にも防護帯を足せるようになった。今まで上中下と三段の防護帯を顔の周りにそれぞれ額・こめかみ、鼻・頬骨・耳、顎の前と横・後ろ首を守る高さでぐるりと巻いていたが、今度は顔の周囲、額の上からこめかみ・頬骨の横、顎の下にかけて、ぐるりと巻いて、紐で他の防護帯と結びつけた。

常時顎の下まで回しておくと着脱に困難を覚えるので、少し長さに余裕を持たせ、着脱時には裏返して顎の前へ出してから頭を通す。

それだけ足して軽量ヘッドギアの重量が増しても、バランスが良いので、それほど重い感じはしない。


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