防具作り 続き
腰の後ろに横へ簀を巻いた時に、縁の始末をできないかなあ、と一寸思ったので、そこをもう少し考えてみる。
ぼくたちには丈夫な布なんて手に入らない。
どうやって痛そうな硬い縁を軟らかく包み込むか……。
籠とか笊とかでは、縁の始末をしている。
それは籠や笊を編む材料には、曲げに耐える性質のある素材を用いているので、縁に沿って当てた芯材の周りに縁の余した部分をぐるりと曲げて巻き込んでいくことができるからだ。
装甲に考えているような材料はもっと硬質なので、曲げることなんか……。
待てよ、籠に使う素材で編んでみようか……。
色々あるけど、口を締めて縛れるほど柔軟性のある背負い籠作ってたりするから、そういった素材を想定してみる。
かなり柔軟性があって加工しやすいが、入手可能な季節は或る程度限られているのでそこは要注意。
腰回りを、柔軟な素材で籠を編むように?
でも籠と違って、楽にぐるぐる渦を巻いていくことはできないぞ。
背面側だけだから。
籠で云えば半分だけだから。
両側があれば……お腹の側まで籠で作ってみる?
いっそ、パンツを履くように、籠を履いてみる……足を通す穴が必要だぞ?
地面にマネキンとして丸太を二本、脚に見立てて立てておき、脚の太さを模すべく何か巻いて太さを出しておき、それを避けるように籠を編んでいくか……。
その丸太の間を籠の中心として。
でも、うまくやらないと股ズレとかになったりして痛そう。
そして、そのやり方じゃ股の間に何本も太いのが通って、走るのが大変そう。
うーん、それらは上から見て一本に見えるように束ねて、脚へ当たりにくくするとして……。
籠の底はほとんどスカスカにしないと歩くことも満足に出来なくなるだろうな。
あと、どうやって着脱するのか。
身体の曲面に沿わせるほど、着脱が難しくなる。
あれ、俺、どうして籠のパンツを編むなんて、おかしなことを考えてるんだっけ……?
縁の始末の為だけに、籠を基材とするってのは、やっぱりちょっと……。
そもそも硬い装甲材を簀に仕立てて、その縁をどうにかするって話だったろ?
柔らかい素材で籠を編むんじゃ意味ないじゃないか、俺……。
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やっぱり、背面パーツと前面パーツとに二分しておいて、身体を前後からそれらのパーツでサンドイッチしてから帯を巻くなりして固定するのが、一番簡便なんだよなあ。
胴体は。
ただ、胴体の曲面に沿うように、どう成型するかが問題だ。
土器でマネキンを作っておいて、人体の曲面を成型しておき、皮をそこにピッタリと宛てて、張って、乾して、カチカチに硬くする。
この革を装甲基材とする。
尻から腰にかけての背面下部や、股から下腹部・腹にかけての胴前面下部の成型に、便利だ。
都合よく材料があれば、な。
ぼくたちの場合、作るタイミングで都合よく革素材が転がってたりはしないし、運が良くなければ獲物に行き会うことすら難しい。
素材入手に難がある。
一人分の素材を得るだけでも……。
ということは、つまり、破損した時に修理するのも大変だということだ。
まあ、攻撃を受けて鎧が破損した時には、中身である仲間の方がそもそも無事かどうか分からないけれど。
でも、湿気で酷くカビてしまったせいで部品交換というのもあるだろうし。
それに、胴体下部はともかく、胴体上部となると、屈伸や開閉、捻じれ、あと肩の動きもあり、最初にどこかの時点での肉体の曲面にぴったり合わせてしまう程、そうした動作に追随できにくくなりゃしないか?
一律に同じやり方ではできない。
難しいなあ……。
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「はあ~、疲れた」
「どうしたの? また何か考えてたの?」
じーっと動かずにいたぼくが、急に寝っ転がったまま声をあげたので、近くにいたエイコが訊いて来た。
「うん、何か鎧を作ろうと思ってさ、色々考えてた」
「鎧ねえ……」
「エイコならどんなのがいい?」
「あたしは別にいいな~。鎧なんか着たら、こういう事出来ないし……」
と肌に指を優しく這わせる。
「いや、さ……」
「そんなに傭兵がいいの?」
「傭兵になりたい。強くなりたいんだ」
「そう……」
「エイコも一緒に来てよ」
「そうね……置いてけぼりは厭だな」
「旅が辛くならないように、女の子のはできるだけ軽くしよう……鎧というより、防具だなぁ」
「軽いのならいいな~」
軽いのは今でも一応あるな。
「串」の字型の軽量ヘッドギアを取ってきた。
「こういうのなら、軽いでしょ?」
「これはね、まあ、ね。も~ちょっと格好い~ようにできない?」
すぽっと頭に被ったエイコが色々な角度でこちらを見て言う。
「そこは、もう少し頭を守れるようにって言って欲しかったけど、うーん、恰好ねえ……」
ぼくからすると、頭への打撃に対するクッションが少し足りてないこの軽量ヘッドギアには、頭頂部を囲む円周にもう一本ガード帯を取り付けたいところだ。
こめかみとか額への斜め上や横からの殴りつけはとても頻度が高いと思うし、それへの対処となるだろう。
今まではそれが足りていなくて……おつむが軽かったよ。
ガード帯を編みあげたら、ヘッドギアに通している補強材を一旦全部抜き取り──いや、全部じゃないな、頭頂部へ後頭部から刺さってる部分だけでいいや──、クッション同士を結合している紐を抜いて、新しい部品を宛てて紐を通し直して、補強材を刺し直すだけ。
簡易な作りなので、手直しも簡単に済むのが良い。
ぼくら向きの作りだ。
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あ、そうだ。
ぼくたちには布なんて手に入らないって、そう思って考えてなかったけど、自分たちで布を作るっていう選択肢もあるじゃないか。
必要なのは、柔軟に曲がり、でも引き裂きなどに強い材料だ。
樹皮の紐とかなら充分に強いんじゃないかな。
樹皮の紐で面を作れば……。
編んだり織ったり、そういうのは女の子も得意だろうと思って、エイコにその考えを話すと、
「面? 紐を布にして広くするの? なら、まずベッドを広くして欲しいな~、二人並んで寝られるのが」
「うん、そうだったね」
いかん、仕事が増えてしまう。
藪蛇だった。




