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二度目の冬を乗り越え三年目へ 防具作り

また春が来た。

三年目が始まる。


干し肉の蓄えも全然足りず、今度もまた飢えに苦しんだ冬であったが、なんとか皆で乗り切った。

腹ペコでも時々夜にまったり楽しむのが健康維持に効果があってか、ぼくたちは体調は殆ど崩さずに済んだ。

ぼくとトヨは口ひげが少しずつサマになり始めており、マサもうっすら生え始めていた。


この二年間、サカヌキ村はぼくたち浮浪児に対して充分に生き延びる機会を与えてくれた。

有難いことだ。

これからも頑張らなければ。


今後は、傭兵になって独り立ちするのがぼくの目標だ。

前に見た、あんな強い男に、ぼくもなりたい。

あれだけ強ければ、魔物の群にだって呑み込まれずに、押し寄せる怪物を薙ぎ払い、蹴り飛ばし、寄せ付けずに、きっと……。


去年建てたマハリク村の墓碑前に立ちながら、そう思った。


--


北の傭兵や兵士はおろか、駆け出しの傭兵だった若者たちにもまだまだ手が届かないぼくたちだったが、闘えるようになるための準備を少しずつ進めていた。


この冬の間は、すきっ腹を抱えて辛かったので、それほど捗ったわけではなかった。

それでも、蔓や草や骨や皮や石など、冬の到来に備えて予め出来る限り色々と貯えた材料を用いて、新たな防具を作ろうと試みた。


或る日の炉辺にて。


「鎧ィ? それがァ?」

「そうだよ。例えば、このいつもぼくが座ってる円座ね、これにこうして紐を左右二本ずつ付けて、で、背後で、腰の後ろで結ぶじゃん? ……うまく結べねえや……ちょっと待って、腹側で結んでおいてから、ぐるっとな」

「腹殴って良い? 思いッきり」

「やめろよっ、まだだよ、これはっ待てってばあ!」

叫びながら顔を伏せて、うずうずしてるトヨのパンチから腹を守り、床から太串を拾って、トヨに脇腹や腰を小突かれながらも、腹の前に来た円座に真横から刺していく。

いつも穴あけに使ってる太串だと太すぎて無理だが、これは今回の為に専用に作った串なので、少し細めで、そのお蔭で何とか貫いて円座の草束の中へ潜り込んでいく。

突っ込んでいくうちに摩擦抵抗が増してきて大変だが、ぐしぐしと尺取虫みたいに少しずつ進めて、やっと全部ちゃんと通った。

「はあー、やっと一本か……」

「もう良い?」

「だあーっ、まだだってば!」


頑張って四本も挿し込んで、もううんざりしたんで、

「い~よ~」

とヤンキィ座りで頬杖ついてたトヨに向き直る。

「おぁ~~、いいよ撲りたくねえや、そンなの」

やっと理解してもらえたようだな。

ニンマリして

「な、こんな感じだよ。これはまだ少しだけど、もっとぎっちぎちに詰めて……」

「それさァ、最初から棒並べて紐で繋いで簾にした方が早えンじゃねェの?」

トヨにツッコまれて、うーん……と考える。

「なるほど……クッションは別の部品にして後付け、か……ありだな」

「いや、絶対そっちのがいいだろ」

「ぐぅ」

「大体オメー、前に手甲作った時には簀巻き方式とか言ってたじゃン。なんでわざわざ面倒な改悪してンの?」

「どうせクッションを後で裏に付けるんなら、最初からクッションに突っ込めば手間が省けると思ったんだよ」

「クッションがへたる度に、また一本一本、挿すのかよ。疲れンべ?」

「いーよもー、お前が作りゃーいーだろお!?」

「キレんなよ」

「うん、ちょっと疲れた」

色々あれこれ考えてると、混乱することもあるんだ。

とりあえず、円座に刺した串を引き抜く。


--


たしかに、前腕とか脛などは、棒状の部位を簀巻きで包めるから、手甲脚絆やガントレットのような最外殻且つ末端部の装甲であれば、トヨの言うような簀巻き方式で良い。

ぐるりと巻いて縛り付けるだけで、不都合はない。


ぼくは串を紐で綴じて簀を作り、からだのあちこちに当ててみる。

紐で上から縛り付けて見たり、端に紐を結わえて引っ張ってみたり。


他の部位との連繋を考えると、簀巻きというのは全く駄目だ。

縁の始末が出来ていないのが致命的だ。

突き出た縁の硬いギザギザで、自分の肉が削れる。


トヨにもう一回、

「ほら、見てよここ」

といって、腰の後ろに簀を右から左へ横に巻いてみせる。

腰の後ろとか、一見すると横へ簀巻きにするのも良さげなのだが、実際には、

「ね、腕とか肘の内側に縁が当たって痛い」

「あー」

自傷、待ったなしだ。

まず簀の縁を引き裂きや摩耗に強い柔軟な素材で包まないと、お話にならない。


色々考えが浮かぶ。


他の部位だと、簀巻きがそもそも合わなかったりする。

胸や背中なんかその最たるものだし、肩にも巻きようがない。

首の周りも……いや、実は首とか顔は案外できるかもしれない……首の周りに放射状の全周ペンダントを拡げて鎖骨や僧帽筋の下部を覆えるし、首自体には巾のごく狭い簀を巻き付けたり、顔にも簀を巻いて縦の隙間から周囲を見たり、実はアリかもしれない。

強さを持たせるとなると、太くなって無理かな?


腹は屈んだ時と伸びあがった時の違いが大きいので、簀巻きは全く不可能。

いや、横巻きは不可能にしても、縦巻きは一応縦の屈伸には追随できるんだが、縁の処理が面倒くさい。腹の中央の狭い部分だけなら良いかもしれない……けど、やっぱり連繋をどーすんだろうな、と悩み、それくらいなら今円座に串を挿し込んでみせたように、部位ごとに完結するパーツを作った方がマシじゃないかなぁ。

腰巻(スカート)は一種の簀巻きであり、硬質素材による装甲としての腰巻は有かもしれない。


つまり、確実に簀巻き方式で良いのは、

・臑当/脚絆(膝まで。膝裏・脹脛は短くする。下縁を受ける足・足首回りの保護材の存在が前提で、そこに負担が集中する)

・手甲(肘の外側まではいかない。上腕と干渉したり、自傷に繋がるから。肘の内側・両側面を除く。基本的に手首の辺りで締め付けるので、そこに負担が集中する)

・腿(膝裏近傍は除く。腰に専用ベルトを巻き、そこから紐で吊るして上下位置を維持するので、腰や骨盤に負担がかかる)

・上腕(外側のみ。肘近傍と腋近傍は除く。両肩のパーツを首の後ろに通した縄で繋いで肩から吊るすので、負担のかかる位置調整の部品が壊れやすい)

・腰巻(板を重ね合わせる感じ。脚の自由な動きを多少妨げると思われる。腰に負担が集中しそう)

の五カ所だけだ。

その五か所にしても、装甲材の端が露出する場合には、最低限バリ取りだけはして、端をできるだけ滑らかにしておくとか、できる限りは縁を始末した方が良い。


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