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二年目は忙しく過ぎて行く 春から夏にかけて

「おはよう」

「お、おはよ~」

「おーす」

「大丈夫か?」

「別に……」


干からびてしまわないかと心配したが、杞憂だった。

実際には、きっと神経に良い作用を及ぼすのであろう。

トヨキはぼくらと較べても普段の調子を保っていた。

ぼくら同様に頬はこけていたが。


「今日は良い天気だよ」

そろそろ煮えるな、食器を出しておく。

「そか、どーする、エイコはまた何か摘むのか?」

「それはいいから、また壺作ってよ」

「あ~、わぁーった。作るよ。今すぐなん?」

「今は空いた壺がいっぱいあるからい~けど」

「置き場所が……」


今日はお花摘みはしなくてもよさそうだ。

まだ猟はできない。

漁も自粛した方がよい。

色々作るにも、基本材料の草もまだ生えて来ていない。

こうなったら、もう……。


「山菜摘みにいくしかないわね」

「うん、そうしよう!」

トモにマサが嬉しそうに同意する。

ぼくも好きなんだけど、まあ、笑顔で同意するに留める。


「あと、おやつを探しに行きたい」

「うん、オレも」

クワガタの幼虫とか。


ただ、まだ山には雪が残ってるし、雪掘りをしないといけないので、レーキも持って行くことにする。


--


そんな風に、腹を減らしたぼくらは、幾日も主に食糧を求めて山野を渉猟した。


自然、履物も消耗するのだが、その修繕も予め部材を準備したりして、いざ必要となったら手際よく済ませるくらいの知恵は付いてきていた。

あまり草を選り好みせずとも修繕できるように作っておいたお蔭で、今のような季節にも困らずに済んだ。

まだ早春のうちは雪も結構降り、そういう時に手のかかる類の修繕を済ませて、天気が良ければとにかく外へ採取に出た。

そうしているうちに少しずつ齧っていた干し魚も尽きた。


--


暫くはひたすら食糧と最小限の修繕用素材の採取に集中していたが、やがて春になると、資源保護の為に自粛していた漁を自律的に解禁し、草もまた伸びて来ると、色々な修繕や物作りが捗り始めた。

今まで疎かにせざるを得ずにボロっちくなってしまっていた被服類の代用品やクッション類や運搬用具などの修繕や作り直し、また男の子のキンタロ腹掛け作りなども実行した。


トモトヨは土器作りを再開して、早くも次の冬季に向けた貯蔵作業の準備を始めた。


去年と違い、今では何処に何があるか、何時何をすべきか、去年よりはずっと多くを知っていたし、拠点もあり、道具や設備もそこそこ揃えていたので、去年に比べて遥かに忙しくなってもどうにかこなせた。


そうして忙しく日々が過ぎて行った。


--


初夏から夏にかけてはやはり薬草摘みということで、エイコを守ってお花摘みに忙しくなった。


また狩猟も解禁されたと小部落の人から聞いたので、トヨは狩猟へマサとぼくを引っ張って行った。


ぼくたちの罠猟の場としてトールに報告した場所に、慎重に罠を仕掛けた殺し間を予め設けておいて、それから用心深く獲物を探し回り、なかなか獲物が見えないことに嘆息し、運よく獲物の足跡などを見つけると追跡し、習性を調べて、次の機会には逃さぬように仕掛けを追加し、また見つけると警戒しつつ展開して包囲し、運悪く完全に追い込まれた未熟な獲物は盾を構えたマサノリを中心にして追い詰め、キルゾーンまで追い込み、罠に陥れ、傷つけ、しっかり念入りにトドメをさして、とにかく怪我をしないようにして、未熟な日々を生き延びて、訓練を重ねていた。

ぼくは粗忽なので、よく転んでしまって生傷が絶えなかった。


狩りの成果がどうであっても、ともあれ沢の魚罠は日々の糧を与えてくれていたし、皆が教えあった食べられる植物の知識で、体調を崩すのを最小に抑えられていた。


魚獲りの罠仕掛けは、生活用の罠漁の許可を正式にとった。

これを、獲れた川魚で商売しようとなると、商売用の罠漁の免許をとらねばならず、そこで既に税がかかってくるし、また村で既に商売している物売り連中との競合もあるからどう転ぶか見通せないし、リスクも見積もれないので、まだ手を出す気にはなれなかった。

そんなわけで、相変わらず現金収入は全然なかったが、喰うことは出来ていた。


ただ、それだと塩気が足りない。

だから雪に沁みた獣血やガラも貴重な塩分として、多くの香草と一緒に土鍋に入れて煮込んだ。


食後に重い土鍋を洗うのが一苦労で、面倒くさいから沢に放り込んで洗いざらすのだが、汚れても良い使い捨ての大きな草を敷いた大籠に重い汚れた土鍋を入れて、藪を抜けて斜面の偽装小道を下って割らないように沢の定位置に置く作業は、狩りの獲物を運ぶ程ではないにせよ、やはり相当煩わしいので皆嫌がって、その都度じゃんけんをしたりして担当者を決めたが、一番非力なエイコがあたってしまったりすると、見かねて誰かが代わってやったりした。


獲物の屍からは食用部位の他にも、骨や皮、更には角や蹄などが得られていたが、きちんと加工する技術も閑もなく、沢の下流で籠に入れて洗いざらしておき、軽い下処理だけしてとってあった。


誰もがなにかしら健康を損ねて、火傷したり、知らないうちに生傷だらけになっていたり、風邪をひいたり、色々大変だったが、どうにか深刻な事態に陥ることもなく、非常に忙しい日々を乗り越えていた。


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