ラクマカ北の断崖台地上にて山賊の一派と夜戦
ハズレの一射で敵にトヨの居る方向の見当をつけられてしまった。
敵が喚いて駆け出してくる。
ブワブワと風に膨らむ襤褸切れが、月光の下で怪物めいた大きな影を生み出す。
岩陰で待ち構えるトヨが次の矢を番えて、肉薄した敵をまた射貫くが、残りがこけつ転びつ襲い掛かって来る。
そこに突然立ち上がったマサが楯を大きく翳して、スコッレで鍛えた大声で叫んで威嚇して、敵を引きつける。
俺もマサの背後へ、援護につく。
エコとトモは距離を取って背後で身を低くして荷物を守りながら、背後と側方から囲まれないように警戒する。
依頼人は静かに隠れ潜んでいる。
マサの石斧の一撃は、先頭に立って襲い掛かって来た一番威勢もガタイも良い奴の手甲で受け止められた衝撃で、夜の闇の中へすッ飛んでしまったが、そのまま勢いで猛然と押し倒そうとする敵を、腰を落として踏ん張り、空いた右手も使って楯を支えて防御に専念し、少しずつ後退しつつも敵の突進を食い止め続け、勢いを減じさせる。
マサが反撃力を失ったが、俺がマサの左後ろで援護して、左右から来る敵へマサの代わりに二刀流で跳びかかって攻撃し続けて、俺達二人の脇に食いつかせない。
俺が矢鱈と跳躍するのは、足元が凸凹して引っ掛かるんで、敵みたいに転びたくないからだ。
それと敵の目を攪乱する目的もある。
但し消耗するので短期決戦でないと先にバテる。
速く決着を着けねば。
反撃しつつ少しずつ後退する俺達だが、マサは予備の石斧を引き抜いて右手で反撃しだしたので、俺がカバーしてやらないとならん範囲が減って、俺もマサの死角を護ってやり易くなった。
飛び跳ねるのを減らして、消耗を抑え、長期化に備える。
前衛二人の背後へ廻りこもうとする敵を見つけたトヨが、跳び出して近接射撃して、また一人射貫いては素早く退いて、草蔭に潜むトモエコ二人の楯の蔭に隠れる。
それを追いかけた敵三人のうち、一人は地面に身を屈めたままのトモがギリギリで穂先を持ち上げて構えた槍に自ら飛び込んで串刺しになり、もう一人はトヨを守る為に立ち上って構えたエコに楯の上からのしかかったはいいものの、足の甲を地面に縫い留められて転倒し、三人目はトヨに槍を突き立てようとしたが、すんでのところで逆に至近距離で射貫かれて地に臥した。
マサの正面で攻撃し続けている盗賊のボスが、手下へ何か叫び、攻撃の勢いが強まる。
それに対抗すべく、マサもボスと右手の敵へ猛然と反撃しだす。
俺も後衛が無事に敵の遊撃隊を撃退したのを見て、
「おい! 右を援護してやれ!」
と腕を振って、トモとエコには前進して右翼の防衛を担ってもらう。
敵の圧力は右翼の方が少ないようだったので、女の子たちだけでも食い止める事が出来ると踏んだ。
倒れた敵にトドメを刺したトモとエコが右翼へカバーに出て、それに正面と側面に回り込んでぶつかる敵を、楯を構えたトヨが更に敵の側方に回り込んでから棘棒で足腰を傷めつけて、地道に地べたへ転がして敵の圧力を削って行く。
が、俺はそんなことは知らず、とにかく右翼は何とかしてくれと頼んだあとは、夜闇の中から敵が跳び込んで来るのを一人でひたすら両手の武器をぶんぶん振り回して、月の光の下にきらめく武器や腕を撲りつけ、出鼻を挫いて寄せ付けず、跳びかかって来るのを腕の影に棘棒を引っ掛けて躱しつつ引き寄せクルリと回して明後日の方向へ尻を尻で突き飛ばして街道脇の茨らしき藪へ頭から突っ込ませ、隙あらば腕を伸ばして膝裏にひっかけて引き転がし、或は更に転げた敵が起き上がるところへ頭を後ろからポカリとやってもう一度倒して、なんとしてもマサの方には寄せ付けないようにするので手一杯だった。
俺が雑魚三人に腿や脇腹をド突かれたり肩や背中をブッ叩かれながらも同時に逆にチクチク傷めつけて撃退しているうちに、トヨ達三人が右翼の二人を片づけて、ボスの背後を迂回して、左翼でまだ蠢いている雑魚三人の背後に回り込んで来てくれたので、それで混乱した雑魚三人を次々に押さえつけては頭を斧で絶ち割って仕留めていった。




