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過ぎし暗く寒い冬を振り返る 武具づくり3 防具と戈

トモがぐったりして寝込んでいる。


もう随分長く寝付いてしまっている。

最初は、そんなでも無かった。

ちょっと「気分が悪い、動けない」といって起き上がって来ないので、簡易寝台の後ろに屏風みたいに束ねた杖で菰を拡げて、少しでも温かく寝られるようにしてみた。

熱は無い様だったので、

「過労なのかな」

「寝ていれば治るよ」

と静かに休ませておいた。


もうそれから一週間。


保存食の悪くなった物でも食べてしまったのだろうか。

胃が受け付けないのか、干し魚を吐いてしまった。

簡易寝台(コット)から転げ落ちそうなトモをトヨが慌てて支え、吐瀉物はぼくが片づけておき、マサもトヨを手伝って、トモのコットを炉の傍へ移した。


今は落ち着いて寝ているが、顔色が悪くなって、皆とても心配している。


--


それで何かマシなもの、新鮮なものを食べさせてやりたくて、一面の雪の中だが、狩に行こうとぼくたちは決意した。

エイコにトモコの看病を任せて、ぼくらは準備を調えた。



ミントの香りも薄れ、主に煙の燻す匂いばかりになっている家の中で、

「オオヤマネコがたまに居るって本当かな」

「でももう材料も碌なもんがねえしよ、盾と槍と弓矢がありャ、いけンだろ」

「一応、首と背中と腹に、樹皮とかだけでも良いから、厚めに仕込んでいこうと思う」


防寒着の樹皮を縛り付ける紐の下に、更に樹皮を挿し込んで層を厚くするだけだ。

首の後ろや背中はやりづらいので、互いの背後に回って手伝う。

首の周りにも重ねた樹皮を宛てがい、蔓紐を巻いて縛り付ける。


防寒着の層を厚くしただけだが、今できるのはこのくらいだ。


樹皮を剥いだ丸太を石鑿で割いて、薄い短い辺材を多数とり、紐で結わえたそれらを首の後ろから防寒着の肩を経て吊るし、上腕外側に巻いて縛り付ける。

まだ紐があるので、腿や膝にも巻き付けていく。


--


木の槍はあるが、突き刺す武器だ。

その場から前に出なくても、振り回せば中てられる、うまく中てられなくても迫って来る敵を払い除けられる剣みたいな武器も欲しかったので、戈を作る。


木の槍みたいな長めの棒きれを用意し、先端を少し石鑿で割いて、細穴を削り、そこへ樹液を塗り付けた太い串を挿し込む。

一本だけでは心許ないなので、一列に三本ほど。

本当は釘バットみたいにあっちこっちへ棘を突き出させたかったが、棒きれが耐えられないと思ったので一方向にだけ棘を出した。

なので剣と同様にきちんと中てる必要が生じた。

それで、握りを削り込んで、振るべき方向が握れば分かるようにした。


棘をしっかり固定するために、樹皮の紐で裂目を巻いて縛った。


木製の戈は作りやすいので、すぐに作れたが、トヨは弓矢を携えて行くし、ぼくは今回は杭でいいので、マサの分だけにして、さっさと狩に出発することにした。


防寒着と雪沓の上から手甲脚絆をしっかり身に纏い、背負い籠に道具類を入れて背負い、盾と長い杭を抱えて、戸口を出る。

「エコ、閂ちゃんと掛けておいてくれ」

「帰るのは何時頃?」

「わからないけど、暗くなるまでには帰る」

戸口で荷が引っかからないように、身を屈めて出る。


山の方へ行くので、鳴子を外して防御壁へ近寄る。

杭のロックを外して簡易柵を退かし、梯子を持って隙間を抜けて、三人とも出た後にまた柵を隙間に立てかけておいて、梯子を土塁の上から壕の向こう側へ下ろして、一人ずつ降りる。

弓矢を構えたトヨが見張り位置で警戒して、ぼくとマサが先行して降りて盾を構えて警戒に就くと、トヨも下りて来て、梯子を藪に隠した。


--


そこで先ずは一人ずつ、籠からかんじきを取り出して、雪沓で乗って紐で足に巻いて縛り付ける。

籠を背負い直して、武器を構え直し、交代で全員が準備を終えると、


「どっちに行こうか」

「先ずは安全そうな方だろ、全く分からないから」

「杭で雪の中を突き刺しながら行った方がいいだろうなあ」

「ああ、それはあるな」

「左って、うっかりするとジンメ川にぶつかって崖から落っこちるかもなあ」

「その前に谷があるかもしれないけどね」

「右は多分ずっと行くと谷川だろ」

「ずっと先だろね」

「大変だけど、最初真っ直ぐ登ってみるか?」

「え、えー……」

「きっついな、それ」

ぼくたちは早速悩んでいた。

せめて雪がもう少し積もっていなければ……。


でも、結局真っ直ぐ登行する事になった。

雪中ではぼくとマサが先に立ち、マサは盾を背負って戈の柄で雪の中を突き刺して用心し、ぼくは杭と盾を背負って途中で枯草や茨に行く手を阻まれると石斧で切り払って進む。

使えそうな草を見つけると、今は一々摘む閑も無いので、踏み潰してしまわぬように、とりあえず避けて行った。

後ろからトヨが弓を手に周囲を見回して警戒しつつ尾いてくる。



しかし結局、この日は獲物らしき影を見つけることすらできず、空を舞う鳥以外に動物の姿の絶えた寂しい山を、トヨの指示で幾つかの足跡を追跡して歩き回っただけで終わった。

帰路には草木を採って背負い籠に詰めて持ち帰った。


--


雪の上に獣の足跡を幾つも見つけたが、幸い大型獣のは無かった。

それにしても、全く見かけなかったというのは、どういうことなんだろう?

「夜行性なンだよ」

一言でトヨに返された。

「なんとなく怪しい場所があったから、明日は罠を仕掛けに行く。作るの手伝ってくれ」

「わかった」

二つ返事で引き受け、その夜は持ち帰って来た材料で罠を作った。



翌日は一応未明に起きて暗いうちに出て、夜明けに一旦戻って食事を手伝い、トモコを少し看て、明るくなってから罠を仕掛けに出た。


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