冷たい肉球
寝込んで落ち込んでいるとき
元気を出せと
その少し冷たい肉球で顔を踏みにじるキミ
その絶妙な重さと柔らかさはいったい何なのか
絶望に涙するとき
何泣いてるんだと
その少し いやかなりざらついた舌で舐めるキミ
そのすべてわかっているよと言いたげな表情は何なのか
大人になって家を出てゆくとき
行くんじゃないと
その鋭い爪で引き留めるキミ
いや違う 行きたくないのは私の方だったか
キミに逢いたいとき
空をながめてみる
一足先に異世界へと旅立ったすばしっこいキミ
もう踏みつけても舐めても引っ搔いてもくれないが
逢いたいときはひだまりで
ひとり丸くなってみる
私は人より耳が良い
うにゃーん ごろごろ
耳をすませば 愛しいキミの
声が聴こえるような気がします