悪逆非道?の転生賢者 ~ 悠々自適な暮らしを目指す賢者は身分を捨て冒険者となる ~
連載候補の短編です。
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人の為に尽くして幾年月…。もう疲れたしそろそろいい加減自分の為だけに生きたい。
だが私は大賢者。自分が自分である限り自分の為だけには生きられないだろう。
ならば自分で無くなればいい。
そう思い長年研究をしてきた転生魔法も完成し、後は発動させるだけ。
来世こそ何にも縛られない自由な人生を謳歌しよう!
こうして私は発動した魔法に身を委ねた ー
「何?今記憶は…。」
私は誰だっけ?
私はアリシア=フェリエルート
フェリエルート王国の第二王女
それは現世の名前
そう、私は ー
「私はアリア=アークライト…。だったわね。転生した今はアリシアだけど。魔法は成功したみたいで良かった。」
「それにしてもここは何処かしら?」
アリア…。いやアリシアはベッド代わりのソファーから起き上がり周囲をキョロキョロ見回した。
小さな窓が一つあるだけの石造りの寒々とした部屋でとても埃臭い。ある物といえばボロボロの机にキャビネット、それにボロボロの毛布にベッド代わりのボロボロのソファー。ここはまるで物置みたいだ。
「まるで物置じゃない。でもアリシアの部屋…。なのよね…。ここ。」
人格と記憶が漸く馴染み現世の自分の事をハッキリと思い出してきた。
現世の私、アリシアは国王と奴隷との間に生まれたために不遇な扱いを受けているようだ。
ご飯など残飯の様な物だし2~3日無くて当たり前。一応は王女でありながらまるで召し使いの様に毎日こき使われ暴言や暴力も振るわれる。
まあ身嗜みだけは最低限整えられているので内情を知らない者が見たら王族だとは気が付かないまでもまさかそんな有り様だとは思わないだろう。
「理由はともあれ幼い子供をこんな扱いするなんてろくな王族じゃなさそうね。」
見た目の確認の為に氷魔法で作り上げた姿見を見ながらアリシアは溜め息をついていた。
そこに写るのは中性的な顔立ちの見た目四歳~五歳位の蒼銀髪にアメジスト色の鋭い目付きをしたボロボロのワンピースを身に纏ったガリガリヒョロヒョロな少女の姿であった。
「…。仕事に呼ばれるまでまだ時間があるわね。現世がどうなってるか調べてみようかしら。星々の記憶発動!」
星々の記憶それは大賢者と呼ばれたアリアからアリシアへと受け継がれた固有能力。
星の記憶にアクセスし、過去と現在に至るありとあらゆる知識を得る事が出来る固有能力である。
発動と同時にポン!と言う音と共に表紙に星々の記憶と金色の文字が書かれた黒い大きな本が現れた。
宙に浮いたそれはパラパラと自然にページがめくれ始めると虹色に輝く文字の様な物がページから抜け出し吸い込まれる様にアリシアの中へと入っていった。
「…。うっわ~!最悪じゃん。この国の王族、ほぼ全員暗君暴君を絵に書いた様な奴等じゃない!!」
パタンと本が閉じ消えると同時にアリシアは思わず頭を抱え叫んでしまった。
星々の記憶によるとこの国の王族は色に狂うわ贅沢三昧に暮らし国庫を食い荒らすわ民を省みず重税を課し、税を払えぬ者や逆らう者を処刑するようなとんでもない奴等のようである。
ちなみに私の母親は私を生むと同時に亡くなったらしい。
「問題は私も一応は王族だって事と近々クーデターが起こるかもしれないって事なのよね…。」
星々の記憶によると近々圧政に耐え兼ねた民衆と貴族達によるクーデターが画策されているとの事だ。
マジですか!!
冗談じゃない!!
只でさえ召し使い扱いされているのにクーデターに巻き込まれるのは御免だ!
そもそも私は悠々自適に暮らしたくて転生したのに転生先が紛いなりにも王族だなんてだけでも最悪なのに…。
「よし、逃げよう!そうしよう!」
アリシアはボロボロのキャビネットから召し使い用の服を取り出しそれに着替えた。
「幸い私は王の子供として認知もされてないようだし、まだ四歳~五歳位だけど魔法で年齢誤魔化せば冒険者になれるだろうし今日、仕事のついでに奴らから宝石とかチョロまかせばある程度の生活資金になるよね。」
泥棒は悪。だけど給料はおろかご飯さえまともに貰ってないんだからそれくらい貰っても構わないわよね?
アリシアはクスリと笑った。
●○●○
「ほらほら!もっと走らないと的にならないだろ!」
私を中庭に呼び出し魔法を浴びせかけている少年はこの国の王子である。
ちなみに彼は側妃の息子で私の腹違いの兄にあたる。
見た目は金髪に蒼眼の中性的な顔立ちの十歳~十一歳位の美少年だが、酷く傲慢で他人を見下す癖がある。
ちなみにこいつの魔法の腕は私から見ればはっきり言って才能無しの凡人以下だ。
初級魔法の火球や水球だと言うのに威力は魔力量のわりに低く、おまけにノーコンだというのだから…。しかも魔力操作も下手で魔力を無駄に消費している。これでは魔力量が多い傾向がある王族だと言うのに宝の持ち腐れだ!
ほら、もう魔力切れを起こしている。
「もう、飽きた。行って良いぞ。」
私を攻撃するのにも飽き魔力切れを起こした王子はようやく私を解放した。
●○●○
「アリシア!!この紅茶不味いわ!淹れ直しなさい!」
ガッチャーン!!
アリシアに向けて投げられたティーカップが体に当たり、床に落ちて割れた。
「…。申し訳ありません。只今淹れ直します。」
アリシアは表情一つ変えず新しいティーカップに紅茶を淹れ直すと淡々と割れたティーカップを片付け床を拭いた。
私にティーカップを投げつけたゴテゴテに着飾った九歳~十歳ほどの少女は側妃の娘で私の腹違いの姉にあたる第一王女だ。兄である王子と同じ金髪に蒼眼で可愛らしい顔立ちをしているが見ての通り酷く我が儘で癇癪持ちである。
「何時まで居るつもり?顔を見るだけで紅茶も不味くなるからさっさと何処かに行ってなさい。」
第一王女は虫や動物でも追い払うようにシッシとアリシアを追い出した。
ー お前が淹れろと呼び出したんだろが…。
●○●○
侍女長に言われトイレ掃除をしていると
「おねーたま!」
とアリシアに黒髪に蒼眼の二歳~三歳くらいの愛くるしい少女がペタリとアリシアに抱きついてきた。
この少女の名前はフェリシア。この国の第三王女で唯一の王妃の娘である。
「フェリシア殿下。今は仕事中ですので離れて頂けますか?」
「ぶぅ~!ふぇるってよんでよおねーたま。そりぇににゃんでよそよそしいいいかたするの?おねーたまだってふぇるのおねーたまなのに…。」
フェリシアはプクッと頬を膨らませていた。
「私は召し使いですから…。」
「そりぇばかり…。」
頬を膨らませながらフェリシアはつまらなさそうに何処かへと去って行った。
トイレ掃除が終わった所、フェリシアの母親である王妃カンナからの呼び出しを受けアリシアはカンナの部屋へと向かうのであった。
コンコン…。と軽くノックをした。
「カンナ様。アリシアです。」
「どうぞ。」
ガチャリ…。
許可を得たのでドアを開けるとそこに居たのはベッドに横たわるフェリシアによく似た黒髪に蒼眼の二十~三十歳位の女性であった。
カンナはミューラー公爵家出身の王妃である。
彼女は元々体が弱かったのだがここ数年、重い病を患い寝たきりになっている。
その為に王妃としての立場を側妃に奪われてしまっている。
「ワザワザ来てもらってごめんなさいね。」
カンナは柔和な笑みを浮かべていた。
「勿体ない言葉でございます。所でご用件とはなんでございましょうか?」
カンナは静かに眼を閉じこう言った。
「…。フェリシアを連れて城を出て欲しいの。」と…。
「な、何故フェリシア殿下が私と共に城を出なければならないのでしょうか?」
「…。フェリシアを守るためよ。」
「守るためとは?」
アリシアはカンナに尋ねた。
「私の固有能力、未来視によると後、一週間も経たない内にクーデターが起きるわ。その前にフェリシアをここから逃がしたいの。」
「そ…。そんな…。か、カンナ様はどうなさるおつもりですか?一緒に城を出ますよね?」
カンナからの思いがけない話にアリシアは面喰らっていた。
ー クーデターが近々起きるのは知っていたが、まさかカンナ様もそれを知っていたとは…。
「いいえ…。私はここに残ります。王妃として国王を諫める義務を果たせなかった以上、私にも責任があります。」
「…。そうですか…。」
「側妃とその息子の王子も王女も国王と同じく国を蝕む害悪です。彼らと共に私も罪を償います。しかし貴女やフェリシアには罪はありません。ですから巻き込まれる前に城を出てほしいのです。」
カンナは悲しげに微笑んだ。
「…。わかりました。」
アリシアはそう答えるしか無かった。
「ありがとう…。お礼に…。当面の生活費としてこれを貴女に渡します。」
カンナはアリシアに綺麗な装飾が施された箱を渡した。
蓋を開けると中にはいくつもの宝飾品が入れられていた。
「こんなに…。よろしいのですか?」
「ええ。その代わり娘を頼みますよ大賢者様。」
カンナはニコリと笑った。
ー 今、なんと言った?
「カンナ様?大賢者とはどう言う事でしょうか?」
アリシアは顔をひきつらせながらカンナに尋ねた。
「隠さなくても良いのですよ。未来視で貴女が大賢者アリア様の生まれ変わりだと言う事は知っていますから。」
「…。なるほど。で、本来なら私はどうしていたのかな?」
「宝飾品をくすねた貴女は今夜独りで城を脱け出し隣国エスキースで冒険者になってたわ。」
カンナはニコリと笑っていた。
「そう…。なら行くのはエスキースがよさそうね。」
「ええ。」
「…。ついでだけど他にはなにか見えた?」
「それ以外は特に無いわね。」
カンナは首を横に振った。
「そう。ありがとう。じゃあ今夜フェリシアを連れて城を出るわ。それで良いわね?」
「ええ。」
「…。では、失礼します。それではさようなら。」
とアリシアは部屋を出ようとドアに手をかけた時、
「待って。もう一つ渡したい物があるの。」
とカンナに呼び止められた。
「渡したい物とは?」
「私の固有能力よ。」
「それ、どう言う意味かわかってる?」
「ええ。もちろん。」
カンナは肯定した。
ー 固有能力とは魂に根差すもの。本来なら譲渡など出来ない。
仮に譲渡するとなればそれは魂を差し出す事に等しい行為だ。
しかしアリシア…。いや、アリアなら固有能力を譲り受ける事が来る。
固有能力奪う者
とある事情からアリアが得た固有能力で、触れた相手の能力をコピーしたり能力を奪う事が出来る固有能力である。
「悪いけど流石に受け取れないわ。」
アリシアは溜め息をついた。
「貴女にはこの能力あった方が良いんじゃない?」
「悪人なら兎も角流石に貴女から固有能力を譲り受ける訳にはいかないわ。その代わり…。」
アリシアはカンナの額に手を当てた。
すると、淡い光がカンナを包みこんだ。
「能力をコピーさせてもらった。これで対価は全てもらったわ。任せておいて…。フェリシアは必ず連れ出すし私が必ず守るわ。私にとって貴女以外で唯一の家族と呼べる存在だもの。」
アリシアは悲しげに微笑みながらそう言うと部屋から出ていった。
その日の夜、約束通りフェリシアを連れてアリシアはこの城を密かに脱け出した。
そしてアリシア達が丁度隣国のエスキースに辿り着いた頃、フェリエルート王国でクーデターが起きたそうだ。
クーデターの末、国王と王妃、側妃や王子、王女達は処刑され、新たな国王が誕生したそうだ…。
「すみません冒険者登録をお願いします。」
「はい。では、こちらに必要事項をご記入下さい。」
その日、エスキースのとある冒険者ギルドに蒼銀髪にアメジスト色の眼をした十四歳~十五歳位の少女が登録に訪れていた。
後に少女は最高ランクのSランクの冒険者として名を上げる事になる。余談だその少女の傍らには黒髪蒼眼の少女がいたという。
ちなみに蒼銀髪にアメジスト色の眼をした少女は歴代最速でEランクに昇格したり等数々の伝説を打ち立てたそうです。
ついでに噂によると大変なシスコンで、妹らしい黒髪蒼眼の少女を大層溺愛していたと言う。