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プロローグ
「ウィル!ウィル!頼む!開けてくれ!」
嵐の夜、女が森の中にある小屋の扉を叩いていた。
扉を開けて出てきたのは男だった。
その男に縋るように女が言う。
「ウィル!お願いだ!この子を受け取ってくれ!」
その女がびしょ濡れのマントの下から、抱えてみせたのは、まだ小さな赤ん坊だった。
「その子は…お前の子か?」
そう男が女に聞くと男が聞くと、女は慈しむように赤ん坊を見つめた。
「ああ、先ほど生まれた。私はこれから処刑されるだろう。だが、だが…私の腹から生まれたこの子には…何も罪はない。」
女は喉から搾り出すようにして言葉を放つ。
男はそんな女の姿に心打たれた。
そして思わずこう答えた。
「その子が俺に育てられて、どんなガキに育っても知らねぇぞ?」
そんな男の姿に、女はふっと笑いをこぼした。
そして大事に抱えていた赤ん坊を男に渡した。
「とびきりに強い子に育ててくれよ。」
私にはもう、できないから。
言わずともがな聞こえたその言葉に、男は目頭を熱くさせた。
そして、去っていく女に対し、赤ん坊を抱えている反対側の手で、最後の敬礼をしてみせた。