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たまには上を向いて。

作者: 魚太郎

中小企業に入り3年が経った主人公、雄平。

懐かしさを感じ上を向いた雄平。

彼が見てしまったものとは……

みなさんは駅の天井を見た事があるだろうか?

きっと意識して見ることは無いだろう。それは俺も同じであった。

こんなことが起きなきゃ誰も気づかない……彼ラの存在にハ…




中小企業に務めて3年、最近は大学時代が懐かしく感じる。

俺が務めてるところは大学の近くだから今でも時々思い出す。


(みんなでバカやって、毎日が楽しくて。

この駅だって大学時代はよくみんなで使ってたな……

あのベンチでよくサークルメンバーと飯食ったっけ……)


そうして俺は懐かしくなりベンチに座った。


(でも今となっちゃぁ上司にこき使われてロクに自分の時間も取れない。

おかげで下向いてばっかだ……)

サークルメンバーに見られたら情けねえなぁ…

たまには上向いてみるか。


そうして俺は方の力を抜いて上を向いた。

だがそこで俺が感じたものは"懐かしさ"でも"落ち着き"でもなかった。



俺はその晩からろくに眠れなかった。

あれは一体……疲れてただけなのか…?嫌でもそんなはずはない…だってたしかに"感じた"のだから。


そして毎日そこの駅を使うのが憂鬱になった。またあの感覚になるのが怖かったんだ。何かここにいたら悪い事がおきそうな……


そしてその勘は的中した。

あの日から数日後俺はいつもと同じようにその駅を使っていた。

本当は駅を変えたかったが田舎だしそれじゃあ遅刻してしまう。

仕方なく使っていたその時……


ドンッ!

キキィーー

「急停車しますご注意ください」


俺は目を見開いた。なぜあんな物が。おかしい。じゃあ何故……


駅員「大丈夫ですか?!」

駅員「慌てないでください」


突然の急停車に人々は驚いていた。


運転手「腕が……腕が落ちてきた……」

駅員「う、腕?んなもんなんで…とりあえず検査するから待ってくれ」


俺は恐怖で動けなかった。そしてその時……

「う……と……テ…」

え……

「……デ……お…チ…と…て…」

背筋が凍った。何を言っているか分からなかったがそのおどろおどろしい声に俺は駅を抜け出した。


そしてその日は会社を休んだ。


ニュース「今朝、○○駅で△△線が緊急停止致しました。10時頃まで運休状態でしたが、現在は復旧しておりー」

あぁ……復旧したのか…

ニュース「運転手によりますと人間の腕らしきものが落下してきたとの事ですが線路上や駅付近にはそのようなものは無く、見間違えではないかと言われております―」

見間違え……そうだ……見間違えなんだ…俺は何も見てないさ……は、は、ははは


翌日も俺はいつもの駅を使って通勤しようとした。

だがまたそれは起こった。


アナウンス「2番線に△△電車が参ります。黄色い線の内側にー」


え?

アナウンスと共にどこからともなく足が落ちてきた。

それも何十もの……

それは山積みになり悲鳴をあげていた。

昨日聞いたような声、だがその苦しい声の中に一つだけ聞き覚えのある声がした。

「ゆ……へ……お…で…」

懐かしく愛おしいような声。

「ゆ…う……お……で…い……しょ…お……い……」

まさか……俺は思い出した。大学で付き合っていた彼女のことを。

彼女は俺が2年の時、自殺した。

どこかは知らないが駅に飛び降りたらしい。

後で教授からパワハラを受けていたと聞いた。

その時の遺体は酷く、顔は原型を留めていなかった。そして足だけが未だに見つからないらしい……

もしかして……俺は彼女を呼ぼうとした。

だがその時―


ガタンガタン……プシュー


俺は声が出なかった。彼女が居たのだ。たしかに彼女はいた。だが運転手は彼女の1部を引いたのだ。あの足の山ごと。

ショックだった。もう彼女は死んでいる。これは幻覚。そう思っても思いきれなかった。


アナウンス「△△線発車いたしまーす」

ガタンガタン……


電車が通った後にあの山は見当たらなかった。


俺はその日も会社を休んだ。


行けるような精神状態じゃなかった。

でも2日も休めば上司からきつく言われる。

たいして体が悪い訳でもないのに休むなと。明日休めば仕事を増やすと。

もう限界だった。


夜、俺は駅に向かった。

何も持たずにただ何かに呼ばれて……

そして俺はベンチに座った。


最期くらいは上を向こう。下を向いてばかりいないで


そして俺は上を向き彼ラの中へと消えていったのだった。いつまでも彼女と一緒になれた瞬間だった。

読んでいただきありがとうございます!

夏のホラー2020のための短編です。

楽しんでいただけたら光栄です。

彼は一体あのベンチで何を見てしまったのか。

きっとそれは全てが混ざり混ざったものなんでしょう。

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