下手な弾き方、美しい音色
ネットでギターを弾く男をみた。
とんでもなく下手くそな奴で、これでよく動画アップしたなと、
それが疑問だった。
白けた顔でみていると、急にプロのような演奏を始めた。
ああなるほど、わざとか。そう納得していたら、また
下手な弾き方を始めた。再生時間は12分あるが、まだ3分しか
経っていない。別の動画を探そうとしたら、今度はロックスター
みたいに弾いているので困った。
見ているうちに気分が良くなってきて、そういう音楽なの
だろうかと考えた。それより、あまり興味も無くすぐ忘れた。
入試の当日ほど緊張するものはない。これで将来が
決まってしまうかも知れない。そんな余念があったもので、
テストを解いている途中に消しゴムを落とした。問題の
内容も頭に入ってこず、手が震えてきた。
試験監督を呼ぼうにも、消しゴムのためには遠くに
立っていて、気が引ける。態勢を落として拾うことにする、
ギターを抱えているかのようだ。下手くそな弾き方だろう。
だが、拾いあげる時は、ロックスターのつもりでスッと
起きた。手は震えている。酔いしれる音色が鳴っている
ことだろう。
数学は音楽でもあり、感性が大事なのだ。
下手な弾き方がXなら、Yは酔いしれる音色、図の
曲線はロックの振動を示している。
そんなことを考えているうちに、楽しくなって
きて、改めて数学の問題を解くことにした。
普通に集中して。
正解と間違いは、交互に繰り返されてそれなりの
点数にはなったのではないかと思う。ギターを弾く男の
動画は、341回の再生がされていたから、それと同じなら合格点。