ゲーム世界に三年居た俺は神様に助けを求められました①
……………ん?
日差しで目が覚める。
ああ……昨日のことがあったから、あんまり眠れなかったな。
無駄に早く目が覚めちまった。
まぁいいか……今日はサニーの枕ダイブで起こされる前に、自分で起きるとするか……。
「……ぬあ?」
思わず間抜けな声が出る。
同時に、昨日……寝る前の記憶を必死にたどる。
だって……だってだって…………俺の隣で……………。
「……スゥ……スゥ………」
ラナが寝てるんだもん。
え……? 俺……手を出してないよな……………?
なにもしてないよな? ラナのことを汚してないよな?
お、おちけつ……じゃなくて落ち着け。俺にそんな度胸はないはずだ。
瞳姉と天乃が居るこの家で、女の子に手を出すなんて命を捨てる行動には出ないはずだ……。
「スゥ……スゥ……」
しかし………。
普段は凛々しい表情のラナだけど。
寝顔めちゃくちゃ可愛いじゃん。
こうして見ると、ただの女の子だな。
……………………やばい。
ムラムラしてきた。
「ユッキー! 朝だよ……って、あれ? 起きてる」
そこへ、最悪のタイミングでサニーが登場。
俺に枕ダイブをしようとしてたんだろう。枕片手に、状況を分析。
隣で寝てるラナを見つけた。
「あれ? ラナ……ユッキーと一緒に寝てるのー?」
「いや。違うんだサニー。これはだな……別に決してなにもしてないと言うか……」
まて。なにを俺は純粋無垢な子供に言い訳してるんだ?
そもそも、言い訳する必要ないだろ。
だって、なにもしてないもん。なにもしてないもん!!!(自分に言い聞かせてる)
「サニー? どうしたの。あの馬鹿は起きたの……………」
あ。やばい。死亡フラグが立った。
サニーの後ろから、俺の隣で寝てるラナを目にした天乃の顔が………。
「……どういうこと? これは」
修羅の顔へと…………。
「ま、まて……誤解だ。俺はなにもしてないし。なんでラナが隣で寝てるのか俺にもわからない。ましてや! ラナの寝顔が可愛すぎて欲情なんてしてないぞ!」
「………………」
俺。心の声が素直に出すぎだ。
その後、ラナが起きて止めるまで、俺は天乃に首を締められていた。
ミ☆
「昨日言ったではないか。ヒロユキの護衛をすると」
朝食の席で、ラナが事の経緯を説明した。
「護衛がなんで一緒に寝ると繋がるのよ。やっぱり、浩之が無理やり一緒に寝かせたんでしょ。無垢なラナを騙して」
「俺をなんだと思ってやがる?」
俺はそんな鬼畜野郎じゃない。
どっちかって言うと、欲望に忠実だけど行動には出れないヘタレだぞ!!
……自分で思ってて悲しくなってきた。
しかし、瞳姉が朝から出かけてて助かった……絶対に問答無用で鉄拳食らってたから。
「ヒロユキさん。昨日……私を口説こうとしてたのはなんだったんですか? 私のことは……遊びだったんですね?」
「カンナさん。ストップ」
「うふふ。冗談です」
冗談です。じゃないよ。
冗談じゃ済まされないから。この状況。
カンナさんの悪意の無いその言葉も、火に油だから。
見て。天乃の顔がまた修羅に。
「あんた……やっぱりカンナさんにも手を……」
「出してないから。大体な、俺にそんな度胸があったら、天乃になんてとっくに手を出してる」
「は、はぁ!? なに言ってるのよあんた! 死ね! もうとりあえず死ね!!!」
あ。やべ。また心の声が素直に……。
ていうかなにを動揺してんのこいつ?
とりあえず死ねって本当に面倒なときしか言わないのに、言葉につまって言った感じになってるぞ。
「手を出すってどういう意味ー? ユッキー。私には手を出さないのー?」
「う~ん……サニーに手を出すと、俺は社会的に終わるし。どっちかって言うと、サニーのことは犬猫可愛いぐらいの対象かなぁ……」
「サニーに手を出したら、社会的に終わる前に、私があんたを終わらせるわ」
怖いことを言うんじゃない。
さすがに俺は社会のクズになるつもりはないぞ。
ていうか、話が脱線してる。そんなことよりも、俺の身の潔白を証明しないと。
つまり、ラナが言いたいことはこういうことだ。
俺の護衛をする。それはつまり、常に一緒に居るということ。
だから、ラナは俺と一緒に寝ていたということだ。
そう。それだけの話なんだよ!
「護衛はそういうものだ。護衛対象と常に行動を共にする」
「……そんなこと言ったって。風呂とかは一緒に入るわけにはいかないだろ」
「……? 駄目なのか?」
この人。一緒に入るつもりだったの?
……言わなきゃよかった!! この場で言わなければ……天乃に黙って一緒に……。
「そもそも、なんで護衛なのよ? こんなのを守る必要ないでしょ」
ああ。そういえば、そこから説明しなきゃいけないのか。
この際だ。ゲーム世界組には説明しといたほうがいいな。
昨日の通り魔が、俺たちを……俺を最初から狙ってた可能性があること。
そして、俺が助かったのが、普通ではあり得ない状況だったこと。
ラナの考察を交えて、全部説明した。
「……現世界で魔法……そんなことあるの?」
「ない」
それは断言できる。
あくまで、ゲーム世界はゲーム世界。
現世界までは、その仕様はもってこられない。
……まぁ、あくまで、普通はな。
でも、今は普通じゃないことが起こってる。
サニー。ラナ。カンナさん。
ゲーム世界の住人が、現世界に来てること。
もし……俺の知らない仕様があるんだとしたら……。
絶対、なんてことはないのかもしれない。
とは言え、間違いないのは……。
魔法がこっちの世界でも使えたとしてもだ。
使ったのは、俺たちの中の誰かではないってことだ。
あの状況で……誰かが俺を守る為に魔法を詠唱した。
考えれば考えるほどわからないけどな。
「まぁとにかく、しばらくはこっちの世界でも警戒したほうがいいって話だよ」
「……でも、あんたとラナが一緒に寝るのは禁止だからね」
そんな目で見るな。わかってるよ。
そんな生活続けてたら、瞳姉にぶっ飛ばされるもん。
それにしても……俺が命を狙われる理由…………。
全く見当がつかない。俺はこっちの世界では、一般的な高校生だし。
考えられるとすれば……。
ゲーム世界でなにかやったってことだけど……。
考えてもわからないな。
本当に俺が狙われてたかもわからないし。
朝食を終えて、ゲーム世界でのこれからを話し合うことにした。
とりあえず……今日は休む。
最近、装備調達で根詰めだったし。ちょっとはリフレッシュしよう。
んでもって……次にゲーム世界に行ったらいよいよ。
「ホワイトシロンを目指すぞ」
天乃の姉ちゃん。美空さんが最後に向かった国。ホワイトシロン。
いよいよ。そこに向かう。
天乃たちも上級職になったことだしな。ホワイトシロンのモンスターとも、まともに戦えるだろ。
「……でも、遠いって言ってなかった?」
「まぁ近くはないな。一番近いのは、アカムレッドからまた船でクロックに行って、陸路で行く、だけど……それよりも、もっと良い方法を思い出した」
クロックはできれば行きたくないし。
黒の女王が深手を負ったことで、警戒が強まってるだろうし。
それよりも、早くて確実な方法があったのを思い出した。
「飛竜。ワイバーンだ」
「なによそれ」
「この前、オリビアたちが乗ってただろ?」
飛行に特化した竜。
魔王軍では、調教して移動手段にしてるみたいだけど、それと同じことをしてる奴を、俺は一人だけ知ってる。
「もしかして……ワイバーンでホワイトシロンまで行くのか?」
「そういうこと。あっという間に着くぞ」
「そうだが……ワイバーンを飼いならすことは、人間には不可能だと聞くぞ」
ああ。だから、俺が知ってるそいつも、人間じゃない。
ワイバーンを飼いならすには、いろいろあるけど……まず、それを得意とする亜種の力が必要不可欠だ。
「ユッキー。アカムにお願いしてもらおうか? 私たちを乗せて行ってくださいってー」
「きゅー」
「アカムが食われて終わりだな」
「うぎゅー!!!」
唸るな。うっさいな。
いくら同じ竜族だからって、ワイバーンはむしろ、他の竜族を敵として見てるから、アカムを見た瞬間攻撃してくると思うぞ。
「ブルーア大陸の端にある【水晶谷】で、ワイバーンを飼育してる亜種が居る。そいつに頼んで、ワイバーンを貸してもらう」
「亜種? 大丈夫なのか?」
「ああ。知り合いだし。前に貸してもらったことあるからな」
亜種の中でも、竜族と心を交わすことができる種族。
竜人だ。
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『おまけショートチャット』
「ヒロユキ。私の寝顔がどうとか言っていたが……そんなに見苦しい顔だったか?」
「いえ。むしろ天使でした」




