表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/78

ゲーム世界に三年居た俺はボス狩り癖になりました④

 【アストロ研究所】。

 ブルーア首都から北西に行った所にあるダンジョンだ。

 ブルーアもテンワプに登録してあったからな。すぐに移動できるってのも考えて、次の日、さっそくアストロ研究所に来た。


「……なんか不気味な所ね」

「廃研究所だからな。仕方ない」


 設定上、何十年も放置されてる研究所だからな。そりゃああちこちボロボロで不気味な雰囲気になってても仕方がない。


「ヒロユキ様。ここもクエストで来るダンジョンなの?」

「パーティによるな。クエストの過程で来ることになる場合もあるし。それ以外のパーティにとっては、ただのやり込みダンジョンだ」

「やり込み? なによそれ」

「別に攻略しなくてもいいけど、好きに攻略してくださいよってことだ」


 ゲームでよくあるだろ?

 ストーリー上、別に無視してもいいダンジョン。レベル上げとか装備調達の為に潜るダンジョン。それを俺はやり込みダンジョンって呼んでる。

 クエストはプレイヤー。パーティによって変わる。

 だから、それぞれでやり込みダンジョンも変わってくるんだ。

 今の所、俺たちはここに来る用はないからな。やり込みダンジョンってわけだ。


「アストロって人はどんな人だったのー?」

「人とモンスターを合成した生物を造ろうとしていたらしい。だが、最期は自身の生み出したその生物に殺されたと聞いた。しかし、その後も、アストロの造りだした生物が研究所をうろつき、研究を完成させられなかった無念を持ったアストロの亡霊が出現する」

「そう。その亡霊がボスってこと」


 んでもって、アストロの造った生物が、ダンジョンのモンスターってことになる。

 難易度的には、下級職だとちょっと難しいぐらいだ。上級職に転職した直後の肩慣らしには丁度良い。


「アストロの亡霊は直接攻撃は効果ない。アマノはもちろん色魔法。ハスはパワーシュート連打。ラナは前に出てアストロを止める。サニーはアマノとハスに攻撃力アップ支援とラナの援護だな。それでけっこう楽に行けると思うぞ」

「どこに居るのよ? そのボスは」

「時間沸きモンスターはダンジョンにランダム出現するんだ。隅々まで探すしかない」

「……面倒ね」


 大丈夫だ。

 すぐに……探すことが面倒とか思わなくなるから。


 さっそくアストロ研究所に入って行く。

 入り口のほとんど崩壊した扉をくぐって、まずは第一層。確か……地下一階。一階。二階の三層だったかな。海底大青洞に比べると、そこまで広いダンジョンじゃない。


 一階。あちこちに割れた大きなカプセル。散らばった書類。古い薬品。そして……血の痕。

 べたな研究所の跡って感じだけど、初めて入ったときは確かに不気味さしかなかったな。


「怖いねー……」

「サニー。怖かったら手を繋いで行きましょうか?」

「戦いづらくなるからやめろ」


 お前が手を繋ぎたいだけだろうが。


「じゃあ私はヒロユキ様と手を繋ぐね!」

「……今の話聞いてた? 戦いづらくなるって言ったよね?」


 欲望に忠実な奴らだな。


 でも確かに暗いな。前に来たときは一人だったから別に気にしなかったけど、今日はパーティでの戦いだ。戦いやすいようにするか。


「【エレカミライト】」


 黄色魔法の【エレカミライト】。

 これは攻撃魔法じゃなくて、自分の周囲を光で照らす色魔法だ。

 白色魔法の光属性にも似た魔法があるけど、黄色は俺の特性色だから、ほぼ無限に継続させられる。

 エレカミライトで周囲が照らされて、さっきよりも視界が良くなった。


 ……おっと。見えない所で、俺たちを窺ってた奴らが居たみたいだな。


【ウルフマン Lv52】

【バードマン Lv50】

【リザードマン Lv55】


 人とウルフの合成モンスター【ウルフマン】。

 獣人とは違って、無理やり繋げられたって感じのいびつな形になってる。獣の本能で敵を狩ることしか思考にはない。ウルフの脚力で動きが速いから、そこだけ注意だな。

 そして人とバードン(鳥型モンスター)の合成モンスター【バードマン】。

 形だけ言えば、ハーピーだな。人型で、腕の代わりに翼。足には鳥の鋭い爪。

 こいつも無理やり合成されてるから、ハーピーみたいに綺麗な容姿ではない。

 翼もいびつに曲がってるし。どっちかと言うと、悪魔の翼みたいに見える。

 上空からの爪攻撃に注意だな。

 んで、一番厄介な人とドラゴンの合成モンスター【リザードマン】。

 ドラゴンの鱗を無理に合成されてるから、人としての体はほとんど機能停止してる。

 でも、代わりにドラゴンの細胞で、身体能力がかなり高いんだ。

 人型のドラゴン。そのまんまだけど、それだけでかなり強い。


「よし。上級職になってからの肩慣らしだ。行って来い。俺は見てるから」

「……ユッキー。あの人たち、元々は人間だったんだよね?」


 さっきのラナの説明を聞いて、サニーは戦うことに躊躇いをもったみたいだ。

 ……確かに、設定上は、このダンジョンのモンスターはアストロの実験の犠牲者ってことになってる。

 ゲーム世界出身のサニーとしては、殺したくないって感情が湧くのも無理はない。

 でも……そこはあくまでゲーム世界。

 モンスターは無限に沸き続けるし。厳密に言えば、こいつらは実験犠牲者って設定のモンスターってだけなんだ。実際に過去に人間だったってことはないと思う。

 それを説明したところで……優しいサニーにはきつい戦いになるかな……。


「サニー」


 ラナがサニーの頭を撫でながら、笑顔を向けた。


「ときには、その時間を終わらせてやることが救いになることもある。彼らもそれを願っているはずだ。安心しろ。戦いは私たちに任せて。サニーはサポートを頼む」


 そんな短い言葉だったけど。

 なによりも説得力のある言葉だった。ラナの笑顔効果もあるな。

 悲しそうに表情を曇らせていたサニーは……コクリと頷いて、ラナに笑顔を返した。


「わかった! 私も頑張るねー!」

「ああ。頼んだぞ」


 ……俺の出る幕は無かったな。

 こういうとき、最年長者は頼もしいな。俺とそんなに変わらないんだけどさ。

 それに比べて……。


「さっさと潰してボスを探すわよ」

「まとめて貫いちゃうからね!」


 ……めちゃくちゃに殺る気満々のあの二人。

 まぁいいんだけどさ……なんかサニーを見た後だと、すっげぇ悪者感がある。


「行くぞ!」


 ラナが一気に間合いを詰めて、まずリザードマンに斬りかかる。

 ドラゴンの鱗を持ってるリザードマンでも、赤色火属性を持ってるラナの剣なら、それを切り裂くのは簡単だ。胸を斬られて、リザードマンが後ろに倒れる。


「【ブレッシング】!」


 祝福って意味のある、攻撃力、魔法攻撃力アップサポート魔法の【ブレッシング】。

 クレリックのメインスキルでもある。転職したとき、これだけは自動習得してるんだ。

 アマノとハスの頭に小さな天使が舞い降りて、体に光が降りかかり、アタックアップの文字が表示された。


「パワーシュート!」


 ハスの矢が、高速で宙を移動してたバードマンの翼を射抜く。

 落下していくバードマンを、ラナが追撃。


「ツイン・ソニックブレイド!」


 二連続の飛ぶ斬撃が、バードマンの体を十字に切り裂いた。まずはバードマンを撃破だ。


「メガフェルノス!」


 まだ上級魔法を覚えてないアマノは、赤色火属性中級魔法メガフェルノスでウルフマンを狙い撃つ。巨大な火球が、ウルフマンの体を一撃で黒焦げにした。これでウルフマンも撃破だ。


「ラナ! 後ろ!」


 サニーが叫んだ。ラナが気配を察知して振り向くと、斬撃で倒れたリザードマンが起き上がっていた。

 鱗で包まれた硬い拳で、ラナへ一撃。


「【バリアー】!」


 サニーが詠唱した【バリアー】で、ラナの前に光の壁が造られた。

 バリアーは、魔力で造った壁で攻撃を防ぐ白色光属性魔法だ。リフレクターと合わせて使えば、前衛の安定性がかなり上がるぞ。

 バリアーでリザードマンの攻撃は弾き返されて、体勢を崩した。

 その隙を逃さず、ラナが剣でリザードマンを一刀両断した。これでリザードマンも撃破だ。


「……あ。スキル覚えたわ」

「私も私も!」


 転職したての頃は、モンスターと戦うだけでどんどんスキルを覚えて行く。

 ある程度のレベルにならないと習得しないスキルもあるけどな。

 アストロを見つける頃には、上級職のスキルがかなり増えてるはずだ。


「サニー。助かったぞ」

「うぅん! バリアーをちゃんと使うの初めてだったけど、上手くいってよかったよー」


 前から思ってたけど、サニーは七歳って年齢を考えると……サポートが上手いよな。

 七歳で上級職になってるってのも、他にいないんじゃないか? 俺とパーティ組んでるとは言えな。

 アマノも色魔法の使い方がどんどん上達してるし。ハスはそれなりに冒険してただけあって戦い慣れしてる。ラナは言わずもがな。ベテランの冒険者だ。


 ……冗談抜きで。けっこう強いな。このパーティ。


「さてと……このままモンスターを蹴散らしながらボスを探せばいいのよね」

「そうだけど。油断するなよ。ダンジョンの中には中ボスクラスも居るからな」


 アストロを殺した張本人の合成モンスター。

 そいつがダンジョンに数体居るはずだ。単体なら特に問題ない相手だけど。他のモンスターと一緒に束でかかってくるとけっこう面倒だぞ。


「ヒロユキ様。このまま適当に探すしかないの?」

「それしかない。時間沸きモンスターは基本的に探し回るしかないんだよ。ボスが落とすアイテム目当てでダンジョンに籠ってる冒険者も居るしな。発見次第即殺しないと横取りされる」


 まぁ。もしそんな冒険者が居たら、俺が実力の違いを見せてつけて即帰宅させるけどな。


「……そもそも時間沸きって、そのアストロってのはどのぐらいの時間で出てくるのよ?」

「アストロはまだマシだ。三十分周期だからな。三十分毎にお目当ての物が出るまで倒し続ける」

「……それがマシなの?」


 マシだっての。中には何時間沸きのボスも居るんだ。

 そんな長い時間待ってなきゃいけないんだぞ。


 ……まぁ、マシってだけで、楽ではないけどな。

 それはこれから身をもって知ることになるから……あえて言わない。

 運がめちゃくちゃ良ければ……すぐ終わるけど。無理だろうな。


 なにせ……。


 アストロがダンジョン装備を落とす確率は、1%程度しかないからな。










━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『おまけショートチャット』


「あんた。ここ最近マジで戦いに参加してないわね」

「監督役です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ