ゲーム世界に三年居た俺はボス狩り癖になりました③
海底大青洞で、半魚人を虐殺すること半日。
本当は数日に分けてやろうと思ったけど、アマノが「面倒だから一気にやるわよ」と、一気にこもることになった。
「エレカミヴォルト!」
「バルカンシュート!」
前でラナが半魚人たちを抑えてる間に、アマノとハスが遠距離から攻撃。
半魚人の群れが、一網打尽。
「【リフレクト】!」
ヒーラーのスキル。【リフレクト】でラナの防御力が向上してるから、半魚人の攻撃を受けても、大したダメージにはならない。すぐにヒールで回復するしな。
「アマノ! ハス! ポセイドンだ!」
「わかったわ! 会長!」
「オッケー!」
半魚人の群れの後ろに、ポセイドンが一体確認できた。
ラナがすぐに半魚人たちの間を抜けて、ポセイドンに斬りかかって動きを止める。
その間に、ハスが弓を構える。
「パワーシュート!」
魔力を帯びた矢が、ポセイドンの体を貫いた。
チャージシュートより威力は落ちるけど、単体相手ならパワーシュートが弓を使う銃士のメインスキルと言ってもいい。これで大体は倒せるからな。
「エレカミヴォルト!」
向かってきた半魚人の群れは、おなじみアマノのエレカミヴォルトで黒焦げ。
なかなかに連携が取れてきたな。
俺はぶっちゃけあんまりパーティでの戦いはしたことがなかったけど、バランスってのはやっぱり大事だ。
前衛ばっかりとか、後衛だけとかのパーティとは全然戦力が違う。
「レベルが上がったよー」
サニーのレベルが上がったらしい。と、言うことは……。
【アマノ】 職・マジックユーザー
Lv62
力 1
体力 30
素早さ 1
知力 228
技 100
【サニー=アカムレッド】 職・ヒーラー
Lv60
力 1
体力 30
素早さ 1
知力 165
技 153
【ラナフィス=ルミナシア】 職・双剣士
Lv83
力 200
体力 95
素早さ 95
知力 10
技 60
【ハス】 職・銃士
Lv65
力 1
体力 20
素早さ 150
知力 14
技 190
これで無事、全員レベル60達成だ。
別にレベル60で転職するのと、60を超えてから転職するので差はないからな。
サニーがレベル60になるまで待ってたんだ。
上級職に転職すれば、このパーティはかなり戦力アップできるぞ。
「お疲れさん」
「……上から目線ね」
「この世界では上だから仕方ない」
「……」
「調子乗りました。ごめんなさい」
睨むんじゃない。めっちゃ怖いから。
「ヒロユキ様ぁ~。ご褒美のチューしてよぉ!」
「駄目です。ご褒美の意味わかりませんし。サニーが見てるんですから変なことしないでください。会長」
「あっ!? ちょ、ちょっと虎上院さん! ウォタル撃たないでよ~」
言っても聞かないから、力づくでハスを止めるようになってきたな。
まぁこれも……パーティ内のコミュニケーションと受け取っておこう。ケンカするほど仲が良いって言うし。
「ヒロユキ。さっそくアカムレッドに行くか?」
「そうだな。そろそろ現世界では夕方だろうし。今日は転職だけして、明日からボス狩りだな」
「やったぁ! マムちゃんに会えるー!」
テンワプでアカムレッドの首都を登録しておいたからな。
アカムレッド首都にはすぐ移動できる。奴隷の人達をアカムレッドに送るときも、テンワプのおかげで楽だった。
テンワプを詠唱して、アカムレッドに移動。
途中でアカムレッドクレープをアマノたちに買わされながら、懐かしの……でもないか。昨日も来たし。アカムレッド城の二階に居るボルフィナ神官の所に向かう。
「ユッキー。マムちゃんの所に遊びに行っていい?」
「転職してからな。ところで……ハスはどっちに転職するか決めたのか?」
魔法銃士と大銃士。ハスは選択肢が二つあるからな。
転職までに考えておいてくれと言っておいたけど……決めたのかな?
「うん。私は大銃士にする」
「へぇ……大銃士は色魔法を使えないけどいいのか?」
「考えたけど……別にいいかなって。虎上院さんも居るし、私は弓での攻撃に専念したほうがいいかなって」
おぉ。ちゃんと考えてたんだな。
俺も正直、同じ意見だ。
ソロで冒険するならともかく、パーティでの戦いを前提で考えるなら、色魔法はアマノに任せて、ハスは弓スキルでの攻撃を考えたほうがいい。
まぁ強制するのもあれだし、最終的判断はハスに任せようと思ってたけど……安心した。
純粋な弓と銃の火力なら、もちろん、大銃士のほうが上だからな。
「よし。じゃあさっそく上級職に転職してくるといい。三人とも」
「みんなで手を繋いで行かない?」
「会長。恥ずかしいからやめてください」
「上級職楽しみだねー」
ラナに送り出されて、三人がボルフィナ神官の前に行く。
懐かしい光景だな……アマノがマジックユーザーに転職したのはそんなに前のことじゃないのに、ずいぶん前のことみたいに感じる。
……あれ? なんか俺……大事なことを忘れてるような気が……。
なんだっけ? 確か転職のときのことだと思ったけど……えぇっと……。
「ではアマノ。サニー。ハスよ。マジックマスター。クレリック。大銃士の気持ちにそれぞれなって祈ってください。この世の全ての命を司る神よ! アマノ。サニー。ハスにそれぞれ新しい人生を歩ませてください!」
同じパーティなら、一気に転職受付を済ませられるけど……なんか面倒だから一気にやってる感じがするな。
……いちおうツッコんでおこう。
マジックマスター。クレリック。大銃士の気持ちってなんやねん。
アマノたちの体を光が包み込む。ふわっと、風が吹いたかのように服がなびき、いよいよ転職の始まりだ。
……あっ。なにを忘れてたか思い出した。
「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
これだ。
アマノ。サニー。ハスは武器防具が強制解除されて、生まれたままの姿になってしまった。
最初の転職のときは、初心者から全く別の職業に転職するから装備が外れたけど。
上級職になるときは、体を真っ新な形に清めるって意味があって、装備が全部外れるんだ。
なにも装備してない状態を【裸】なんて言ったりするけど。これをリアルでやると……ごらんの通り。
「あれ? なんで二人とも裸になってるのー?」
「サニーもよ! ちょっ……駄目よ! そのまま手をパタパタさせないで!」
「いやあぁん! ヒロユキ様! 私のことを隠してぇ!!」
「会長はヒロユキに抱き付こうとしないで!! まず自分でちゃんと隠してください!!」
……ものすごく見たいが(サニーは別だぞ?)、欲望を押えて目を逸らしてやった。紳士だろ? 俺。
それにしても、なんで下着まで解除されるんだろうな? やっぱりこの世界の神秘だ。
「……早く装備欄で装備し直せー。最初の転職と違って、装備はそのまま使えるから。下着は無理だけど。とりあえず隠せるぞー」
「ヒロユキ。アマノとハスはなぜあんなに恥ずかしそうにしているんだ?」
「二人に聞いてくれ」
そんな恥ずかしい質問を、男の俺に聞かないでくれ。
ミ☆
【アマノ】 職・マジックマスター
Lv62
力 1
体力 30
素早さ 1
知力 228
技 100
武器 流水のステッキ 魔法攻撃力 180
防具 魔導石ローブ 防御力 110
装飾品 水面リング 魔法攻撃力+10% 魔法詠唱時間減少
【サニー=アカムレッド】 職・クレリック
Lv60
力 1
体力 30
素早さ 1
知力 165
技 153
武器 魔法のピコピコハンマー 魔法攻撃力 150
防具 ブルーワンピース 防御力 120
装飾品 十字架のリボン 回復魔法の効果アップ
【ハス】 職・大銃士
Lv65
力 1
体力 20
素早さ 150
知力 14
技 190
武器 スナイパーボウ 攻撃力 200
防具 射手の制服 防御力 100
装飾品 鷹の御守 攻撃速度+10%
上級職になったときは、ステータスを振り直すかどうかを選択できる。
でも、アマノたちはとくに振り直す必要はない。
アマノとサニーは型が変わらないし。ハスも大銃士なら銃士とステータスは同じでいい。
装備もとりあえずそのままでいいだろ。上級職になったら、ダンジョン装備がメインだしな。
「じゃあ私、マムちゃんに会ってくるねー」
「あんまり遅くなるなよ。夕飯までに帰りたいからな」
「わかったー」
コロナとマムは、サニーのお世話係だったメグさんって人が世話をしてるみたいだから、安心だな。他の奴隷の人達も、それぞれ街で仕事をさせてもらうって聞いたし。
「……すぐに上級色魔法を使えるわけではないのね」
「当たり前だ。転職をなんだと思ってるんだよ。レベルを少し上げればすぐ覚えるから安心しろ」
スキル画面を開いて確認してたアマノがぼやく。
転職直後に上級色魔法が使えますよなんて簡単お手軽仕様はない。
「ヒロユキ様。大銃士って、大型ボウガンを使うんだよね? 今の弓だと……あんまり銃士と変わらないのかな?」
「あ。そっか。じゃあハスにはとりあえず……俺が持ってるボウガンを渡すよ。あんまり強くないけど、ダンジョン装備を取るまでの繋にはなる」
「やったぁ! ヒロユキ様大好き♥」
抱き付かないで。アマノがめっちゃ睨んでるから。
私にはなにも餞別ないわけ? って目が言ってるから。
「……アマノにはアカムレッドクレープを買ってやるから」
「五個」
食いすぎだコラ。さっきも食ったくせに。
「ヒロユキ。明日からボスを狩ると言っていたが……どこのボスを狩るか決めたのか?」
「ああ」
今日一日、ずっと考えてたからな。
時間沸きのボスモンスターはかなりの数居るけど、今のアマノたちで倒せて、良い装備を落とすボス。
その中でとりあえず、アマノとサニーの武器を落とすボスモンスターを倒しに行こうと思ってる。
「【アストロ研究所】で、【アストロの亡霊】を倒しに行こう」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『おまけショートチャット』
「……スースーして落ち着かない…………」
「え? なにが? なにがスースーするんだ? 声を大にして言ってみろ」
「あんた。わかってて言ってるでしょ。アカムレッドクレープ食べ過ぎて死ね」
「……その死に方しそうなのお前だろ」




