ゲーム世界に三年居た俺は闘技大会で無双します⑩
モンスターの数が多いが……冒険者もかなりの数この場には居る。
私が進んでモンスターを倒す必要はない。観客はあらかた逃げたみたいだしな。
サニーとマムに危険が及ばないようにすることが先決だ。
バルドルのあの変化は気になるが……ヒロユキに任せればいいだろう。
「ラナ。マムちゃんのお姉ちゃん、大丈夫かなー?」
「それも気になるが、四角の疾風が向かっている。この状況では全てを把握するのは無理だ。任せるしかないだろう」
「モンスターがいっぱい居るから、心配だなー……」
「……お姉ちゃん!」
あっ!? マム! どこへ行くつもりだ!
一人では危険だぞ! まだモンスターがかなりの数居るんだ!
「マムちゃん!」
「サニー! 待つんだ!」
サニーまで、マムを追って行ってしまった。
しまった……二人を追わなければ!
マムが入って行ったあの先は……確か、関係者以外立ち入り禁止だった場所……。
迷いなく入って行ったな。姉の居る所がわかるのか?
とにかく、私も急ごう!
☆★☆★
さぁてと……獣人の可愛い子ちゃんは……。
捕らわれてる場所が変わってないなら、この先に居るはずだ。何回も様子を見に行ったからな。
闘技場の地下。戦わせる奴隷がまとめて閉じ込められてる牢屋。ふだんは関係者以外立ち入り禁止の場所だ。
ジメジメして空気の悪い所だ。耳がごわごわしちまうぜ。
「グワァァァ!」
「おっと」
【ブルーウルフ】か。さっきから何体も襲い掛かってきやがって。
闘技場で戦わせる、一番スタンダートなモンスターだ。弱っちいからな。よっぽどのことが無い限り、奴隷のほうが勝つ。無駄に数だけ飼いやがって。
しかし……牢屋にもモンスターが入り込んでやがるのか。獣人の女の子が心配だな。
と言うわけで、お前の相手をのんびりしてる時間はねぇ。
面倒くせぇ……とっとと消えろ!
「ラピッドファイア!」
ブルーウルフの体をハチの巣にしてやった。ざまぁみろ。
ブルーウルフの死体を捨て置いて、すぐにウインドランで牢屋を走る。
死んだ目をしてる奴隷たちが何人も捕まってやがるな……。
無理もねぇけど。希望もなにもないんだろうからな。今日明日死ぬかもしれないって生活をしてるんだ。
獣人の女の子は、闘技大会の賞品だから、環境的に大事があったら困るのか。牢屋にはいない。
一番奥にある個室。普段は牢屋の監視役が休む場所になってる所に閉じ込められてた。
よし! 見えてきた!
……って……あっ!?
おいおい……扉が破られてるぞ!
ちっ!? モンスターが入り込みやがったか! こうしちゃいられねぇ!!
部屋に飛び込むと、【オーク】が一体、仁王立ちしてた。
緑色の肌で、顔が豚みてぇな、巨体のモンスターだ。パワーだけなら相当なクラスだな。
闘技場で、奴隷が苦戦しながらもなんとか倒す相手だ。武器がちゃんとしてれば、だけどな。
オークは獣人の女の子を襲おうとして、部屋の隅に追い詰めてた。
この野郎……俺のことを完全にシカトしてやがる。
オークは女の子相手なら種族とか関係なく、時と場所を選ばず生殖行動をしようとするからな。
生意気に、あの子で欲情してやがるんだ。気持ち悪い奴だ。
けっ! こんな可愛い子……お前にはもったいねぇよ!
「おいコラ豚野郎!! その子とは俺が先約だ! 勝手に手出すんじゃねぇ!!」
俺の挑発に、オークが振り返った。やっと俺のことを意識に入れやがった。
おまけに、お楽しみを邪魔されてご立腹みてぇだな。
鼻息荒く呼吸して、よだれダラダラ……うげぇ。気持ち悪い面だな。相変わらず。
豚のほうがまだ可愛い顔してるぞ。豚みたいってのは豚に失礼だった。
こんな奴に犯されたら、女の子にとって一生のトラウマになるぞ。
そんなことさせるか。あの子の処女は俺が守る!!!
ズシズシと、重たい足音をたてながら、俺に歩み寄ってくるオーク。
あの自信満々な歩き方……肉ダルマみてぇな体をブルンブルン震えさせやがって。
どうやら、完全に俺を下に見てるみたいだな。
相手の強さもわからない低級モンスターめ。
ばーか。
てめぇなんか瞬殺だっての!
「【チャージショット】!」
ラピッドファイアみたいに、魔力で創った弾丸じゃない。
魔力を留められる特性のある弾丸に、魔力を込めた、威力倍増弾丸だ。
弓のチャージシュートは仲間からも魔力を集められるみたいだけど、チャージショットは自分の魔力だけしか込められない。だから威力は少し劣るけどな。
オークのどてっぱらに撃ち込んでやると、弾丸から拡散された魔力で……巨体が腹から四方八方に飛散してぐっちゃぐちゃになった。
おぉっと……ちょっと威力強すぎたか?
女の子に乱暴しようとしてたからな。つい魔力を込めすぎちまった。
「……」
獣人の女の子は、めちゃくちゃに怖かったんだろ。体をガタガタ震わせてる。
猫耳も完全に垂れ下がってるし。猫の獣人か。そういえば、妹ちゃんも猫だったな。
茶色の長い髪から、同じ茶色の毛の耳が生えてる。猫みたいなクリクリした黄色の目……。
やべ……改めて見ると可愛いなこの子。妹ちゃんも同じ茶色の髪と耳だったっけか? 姉妹揃って、将来楽しみな子たちだ。
おっと……煩悩退散。今だけは、ちょっと真面目にやらないとな。
刺激しないように、そっと近づいたつもりだったんだが……俺が少し近づいただけで、体をビクンと跳ね上げる。完全に怯えてるな……。
「心配するなって。俺も獣人だ。ほれ。耳があるだろ? 俺はパンダの獣人だ」
「……パンダさん?」
「そっ。パンダさん」
俺が同じ獣人だってわかって、少し警戒心が薄れたみたいだな。震えが収まってきた。
とりあえず、オークに襲われて怪我はないみたいだな。間に合ってよかったぜ。
「怖かっただろ? もう大丈夫だ。今すぐに自由にしてやる」
「……外は、どうなってるの?」
「ちょっとモンスターが暴れて怖いことになってるな。でも心配しなくていい。強い連中が集まってるからな。すぐに鎮圧される」
連れ出そうとして、足首にあった痛々しい痣に気が付いた。
足枷……鎖か……頑丈に繋いでやがるな。
まっ。チャージショットで余裕でぶっ壊せるけどな。
チャージショットで鎖を壊してから立ち上がらせると、フラフラと足元がおぼつかない。
やっぱり、かなり弱ってるな……最低限の食べ物だけもらってたって感じだ。やせ細ってる。
「歩けるか? 歩けなかったらおぶってやるぞ。早く外に出よう。妹ちゃんも心配してるぜ」
「いもうと……? マム……? マムがここに来てるの!?」
おぉっと。いきなり声がでかくなったな。
かなり興奮してる。さっきまでの死んだ目が嘘みたいだ。
そっか。妹ちゃんがここに来てるって知らなかったんだったな。
「ああ。元気そうだったから心配しなくていいぞ」
「……よかった……マム……無事で……」
妹が無事だってことがわかって、涙を流して感激してる。
自分のことよりも、妹のことが気がかりだったんだな。
こんな状況だってのに……。
健気だねぇ……めちゃくちゃに良い子じゃねぇか。
こんな可愛くて良い子を奴隷になんかしやがって。
ゴルディオの野郎。マジ許せねぇ。
「おっと。話してる場合じゃねぇや。とにかく行こう。えぇっと……」
「……私はコロナ、です。パンダさん」
「コロナちゃんか。可愛い名前だねぇ」
本当ならここでもっとコロナちゃんのことを知る為のトークをしたいところだけど、今はそれどころじゃないしな。おしいけど。めっちゃおしいけど。
「妹ちゃんにも早く元気な顔を見せてやりな」
「うん……」
コロナちゃんを連れて上に戻ろうとして……聞こえてくるバタバタとした足音に気が付いた。
……牢屋前の通路を、誰かが走ってきてる。警戒して、コロナちゃんを下がらせた。
最初はゴルディオの部下かと思ったけど、足音は単体だ。
しかも……かなり小柄な感じの足幅っぽいな。
見えてきた姿を確認して、力が抜けた。
噂をすれば、だな。
「はぁ……はぁ……お姉ちゃん!!」
獣人同士、しかも姉妹だ。匂いでどこに居るのかがわかったんだろ。
妹ちゃん……マムちゃんだったか?
息を切らせながら通路を走ってきて、コロナちゃんの姿を見つけた途端……。
「お姉……ちゃん……」
「マム……」
泣きながら、コロナちゃんに駆け寄ってきた。
そのまま小さな体を預けるように抱き付く。
「マム……よかった……よかったよぉ……無事で……」
「こっちの台詞だもん! お姉ちゃん……もう会えないかと思った……うえぇぇん……」
感動の再会…………。
やべぇ……俺は涙もろいんだ。もらい泣きする。
早く上に戻りたいところだったけど、そんな無粋なことは言わないぜ。俺は。
今だけは、温かく見守ってやろうじゃないか。
いやぁ。絵になるねぇ……可愛い女の子同士のハグは。真ん中に挟まれたい。
……ん? また足音だ。今度は単体じゃない。
でも今度は、感じる魔力ですぐに誰かわかった。知ってる魔力だ。
「マムちゃん! って……あれ? パンダの人だー」
「パンダ? ああ……疾風のことか」
美少女が増えたぞ。美少女祭りだぜ!
サニーちゃんと……おっぱいの大きい子! じゃなくて……ラナちゃんだったな。
マムちゃんがコロナちゃんを探しに突っ走って、それを追ってきたって感じか。
誰も怪我はしてないみたいだな。ラナちゃんはかなりの実力みたいだし。当然か。
「君たちは大丈夫だったか? 奴隷の女の子は御覧の通り、無事だ」
「そのようだな。ふざけた奴だが、仕事はちゃんとするようだ」
「さぼらないで偉かったねー!」
褒められてる……? なんか素直にそう思えない言われ方なんだけど。
でも可愛い女の子たちが相手だからなんでも許しちゃう!
さてと……コロナちゃんたちは任せるか。
オリビアちゃんも気になるし。俺は先に上に戻って……。
「うおっと!?」
突然の衝撃音。
それと同時に、天井が壊れて、瓦礫と一緒に人影が降ってきた。
間抜けに背中を打って、痛みにもだえる丸いフォルム。
……おい。こいつまさか…………?
「うぐ……いだだだ……」
ゴルディオじゃねぇか。
なんでこの状況の諸悪の根源が、牢屋の天井から降ってくるんだよ。
「逃がさないよ!」
「会長! 矢は駄目です! もっといたぶってやるんですから!」
なんか壊れた天井から物騒な声が聞こえてきたぞ。
ゴルディオを追うように降ってきた二つの人影。
おっとっとっとっと……美少女がさらに増えたぞ。
「ゴルディオ! 今すぐ奴隷の人達を開放しなさい! でないと全身黒焦げにしてやるからね!」
「ついでに額に矢を刺しちゃうよ! リンゴみたいに!」
アマノちゃんと……ハスちゃん。だよな。元気の良い美女たちだなぁ。
でもハスちゃん。ついでにやるような仕打ちじゃないと思うぞ。まず死ぬし。
アマノちゃんとハスちゃんは、ゴルディオのことを追ってたみたいだな。
追い詰めて魔法を撃ったら、床が抜けて落ちてきたってところか。
「あれ? サニーとラナ……ここでなにやってるの? パンダまで居るじゃないの。それにマムちゃんと……もしかして、マムちゃんのお姉ちゃん? あら……? いつの間に感動の再会やっちゃってるのよ!」
パンダって俺のことだよね? 名前すら覚えてもらってないのかよ。俺は。
感動の再会をやっちゃったら駄目だった? 立ち合いたかったの?
「ここでなにやってるのかは、こっちの台詞だがな。二人とも無事そうでよかった」
「よくないよ! ゴルディオをまだ捕まえてないもん!」
「あっ! そうだったわ! 黒焦げにしてやらないと!」
ヒートアップしてるなぁ。
とは言っても、そんなに気合い入れなくても大丈夫だと思うぞ。
なにせ今のゴルディオは側近の一人もいない。この状況で、逃がす方が難しい。
じりじりと迫るアマノちゃんとハスちゃんにびびって、ゴルディオはわたわたと床を這って逃げた。
その途中で、抱き合うコロナちゃんたちを見つけた途端に、逃げることも忘れて怒鳴り声をあげた。
「なぜ賞品が外に出ているのだ!! お前は私の所有物だ! さっさと部屋に戻れ!」
この状況でもそんなことを言ってやがるのか。
こいつ……本当の馬鹿野郎だな。
なにが賞品だ。所有物だ。人間を物みたいに扱いやがって。
「姉妹の感動の再会なんだ。汚い声で邪魔すんじゃねぇよ」
「感動の再会? 馬鹿め! 奴隷の分際でなにを言っている? 私が飼わなければとっくにのたれ死んでいた。感謝されてもいいぐらいだぞ!」
感謝だと? 勝手に奴隷にしておいて?
こいつの思考回路はどうなってやがるんだ。脳を半分に割って見てみてぇよ。
「姉妹? くだらん! 奴隷にそんな関係は必要ない! 高く売れるか売れないかだ! 姉と妹などと……そんな情なんてすぐに消してやる! もう二度と会えないようにしてやるぞ! ふははははは!」
ここまで不快な気分になるのも久しぶりだな。
本当に馬鹿野郎で、クズ野郎だ。こいつは。
駄目だ。もう口も開けないようにしてやろう。
俺がゴルディオの顔面を殴ってやろうとしたときだった。
俺よりも、もっと強い嫌悪感と怒りを感じた。
……ハスちゃん?
ハスちゃんが、弓を構えて、ゴルディオの急所を狙ってた。
さっきまでの冗談な感じは微塵もない。
本気で、殺すつもりみたいにな。
「……会えないようにしてやる? なに言ってるの……? お姉ちゃんと妹が会えなくなることが、どれだけ悲しくて寂しいことか、あなたにはわからないんだよね。可哀想な人」
「き、貴様……私を殺してただで済むと思ってるのか? 一生ブルーア国から追われることになるぞ! それでもいいのか!」
「関係ないよ。私はこの世界の人間じゃないし」
この世界の人間じゃない……?
どういうことだ? 明らかに、ハスちゃんの様子がおかしいぞ。
さっきまで見せてた笑顔はどこにいったのか、ゴルディオに対して、殺気を向けてる。
おいおい……あんな可愛い女の子が見せていい殺気じゃないぞ。
「妹に会えなくなったお姉ちゃんの気持ちなんて、あんたにはわからないんだよね!!! じゃあいいよ!! あんたの顔はもう見たくない!! あんたが居る限り、マムちゃんたちみたいな人達が出るなら今ここで――!?」
「てぇぇぇぇぇぇぇい!!!」
台詞の途中でごめん! 我慢できなくて飛び出しちまった。
飛び出しついでに、ゴルディオの顔面にワンパン。おぉ。けっこう吹っ飛んだな。
「……え?」
「ストップストップ。確かにこいつの言ったこともやったことも、許せることなんてひとっつもない。でもな。こいつを殺したところで何にもならないぜ? 死に逃がすより、もっと辛い目に合わせながら償わせるのが俺は良いと思う。こんな野郎の血で、君の手を汚すことはないぜ」
仮に手を汚すとしても……。
それは俺の役目だ。女の子にそんなことさせられない。
俺の行動に呆気にとられたのか、ハスちゃんは弓を下したまま、固まってる。
アマノちゃんが肩に手を置くと、ビクンと振り返った。
「会長。そいつの言う通りです。会長が手を下す必要はありませんよ」
「……うん。ごめん。熱くなっちゃった」
「いいですよ。後で……ちゃんと話してもらいますから。昔、何があったのかを」
んん? なんだ? なんかわかり合ってる感がある。
前にもこんなことがあったのか?
まぁ……女の子の過去を詮索するような行動は、俺はしたくねぇけど。
アマノちゃんが俺の傍に寄ってきて、じっと顔を見てきた。
……俺に惚れた? さっきの俺、相当に格好良かっただろうしな。
「……似てるわね」
「ん?」
「あんたとヒロユキ」
「それは全力で嬉しくないぞ!!!」
あんな野郎に似てるなんて言われても気持ち悪いだけだって!
俺の方が百倍格好良いし! 見て見てこのパンダ耳! 格好良くて可愛いでしょ! 撫でてもいいんだよ!!!
……って、あんな野郎に対抗心を持ってる場合じゃない。
ゴルディオの野郎、この後どうしてくれるか。この国に置いておくとブルーア国王がうるせぇから、やっぱり別の国に……。
「……なっ!?」
いつの間にか、起き上がってたゴルディオ。
いや。そんなことよりも……。
その手に持ってる玉には、見覚えがある。
ガンマのイカレ野郎が体に埋め込んでる……ダークマターだ!
「おいてめぇ。それをどこで手に入れやがった。魔界にしかダークマターは存在しねぇはずだ」
「私は人間以外の種族も奴隷として売り出しているのを知っているだろう…もちろん、亜種もな!」
ちっ……奴隷の亜種が持ってたのを奪ったのか。
ダークマターは魔界の魔力が込められた玉だ。体に埋め込むことで効力を発揮するが……こいつ、まさか……。
「やめろ!?」
「もうおそい!!!」
ゴルディオが、ダークマターを体に埋め込んだ。
ダークマターは生物の心臓と接触すると、自動的に融合しちまうんだ。
馬鹿が……。
ダークマターは亜種じゃないと体に適合しない。
人間が魔界のダークマターを体に埋め込んだら……。
「ぐ……? ぐげ? ぐぎゃがっ!? があぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
体が崩壊しちまうぞ!
ゴルディオの体が、黒い霧になって崩れ落ちた。
かと思ったら……また何かの形を。黒い霧が造って行く。
……これは。やべぇかもな。
☆★☆★
暴れてたモンスターはあらかた片付いたか。
さすが数の力はすごいな。冒険者がこれだけ集まってれば、これぐらいのモンスターの群れはどうってことないか。
さて……あとは……。
「バルドルは生きてるのか?」
「はい。なんとか生きています。色の雫を飲ませましたし、しばらく様子を見ましょう」
エクスウェポンの刃で一刀両断されたバルドルだったけど。
その体は全くダメージが無くて、体にあった神器の魔力だけを、消し飛ばした。
神具……だったっけ? 半端ねぇな。魔力だけを消し飛ばすなんて、俺でもできないぞ。
今は元通り、エクスキューショナーとエクスセイバーに戻ってる。
バルドルに一撃してすぐに、戻っちまったんだ。
オリビアの言った通り、人間が融合させても、すぐに戻っちまうみたいだな。
「……ん?」
「どうしました?」
「……いや」
下のほうで……嫌な魔力を感じたな。
これは……まさか、ダークマターか?
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『おまけショートチャット』
「ところで俺ってパンダで定着してるの?」
「え? パンダだよねー」
「ああ。パンダだな」
「パンダ以外なんだって言うのよ」




