表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/78

ゲーム世界に三年居た俺は闘技大会で無双します⑦

 オリビアの弱点を一つあげるとすれば。

 スキルをほとんど使えないから、どうしても直線的な真正面からの攻撃になることだ。

 まぁ、ステータス差があると、さっきの俺みたいにそれでも押されちまうんだけどな。


「はあっ!」


 でも今回は違うぞ。

 俺の方がステータスが圧倒的に上だ。

 そうなると、オリビアの直線的な攻撃は……。


「よっ」


 びっくりするぐらい簡単に止められる。

 ソードブレイカー状態だろうと、もう俺にはそんなの関係ない。

 さっきまでは俺と弾き飛ばしてた攻撃が、簡単に止められたことに、オリビアは動揺を隠せなかった。


「――たあぁぁぁ!!!」


 動揺をかき消そうとするような、オリビアの連続攻撃。

 大剣は普通、接近しながらの連続攻撃には向かないけど、半端ないなこいつ。あの細腕でめっちゃ細かく振り回してくる。

 まぁ関係ないけど。


「よっ。ほっ。はっ」


 オリビアの連続攻撃を、全部防いだ。

 片手で持ったエクスキューショナーでな。

 驚きと……怒り? が混じったような顔で、オリビアは一回距離を取った。

 あまりにも俺が適当にいなしてるからかな? やっぱりちょっと怒ってるよな。真面目だから、顔に出やすいんだ。


 よし……じゃあついでにちょっとからかってやるか。

 ウインドスカイを詠唱して、上空に飛ぶ。そして、オリビアに向かって手招き。

 完全な挑発だ。我ながらすっげぇ嫌な奴。

 オリビアの身体能力なら、ここまで跳躍してくるなんて簡単だろう。


「てやあぁぁぁ!!!」


 予想通り。オリビアは舞台を一蹴りで、俺が居る高さまで飛んできた。

 挑発成功。けっこう怒ってる顔だ。

 飛んだ勢いのまま、エクスセイバーを振り上げてくる。


「ていっ」


 さっきみたいに、剣先を足で踏んで受け止める。でも、今度はそれだけじゃないぞ。

 そのままエクスセイバーを踏み返して、オリビアを落とした。


「――!?」


 オリビアは体を反転させて着地。そしてまた跳躍。

 足だけで落とされたのが相当堪えたのか。すごく悔しそうな顔してます。

 エクスセイバーの光がさらに輝きを増した。生命力をさらに込めてきたな。

 よーし。来るなら来い。


「はあぁぁぁぁ!!!」

「よっと。おっと。ていっ。あらよっと」


 空中で、落下しながら大剣同士の打ち合い。

 速い攻撃だ。間違いなく、ゲーム世界でトップクラスの力。

 けど、相手が悪かったな。

 俺はドレルチを解除してから、初めて、エクスキューショナーを両手で持った。


「ちょっと強めに行くぞ」

「え?」


 打ち合いの中の一瞬の隙。その隙をついて、少しだけ強めの一撃をお見舞いする。

 さすがの反応で攻撃を受け止めたオリビアだったけど、衝撃に耐え切れずに吹っ飛ばされる。


「あぐっ!?」


 初めて、オリビアが舞台に背中を着けた。

 今まで、どんな攻撃を受けても膝すらつかなかったからな。

 ウインドスカイを解除して、オリビアが起き上がるのを待つ。俺が両手で攻撃したからな。見た目よりも、ダメージは大きいはずだ。

 痛みで顔を歪めながら、ゆっくりと起き上がったオリビア。

 おぉおぉ……俺を睨みつけてくる。さっきよりも悔しそうな顔だ。


「……ここまでの実力差はなかったはず……どうして……一体なにが……」

「言ったじゃん。強くてもう一回最初からって」

「……」


 黙るなよ。俺の言葉をスルーしないでください。

 これだから真面目は。二回目は触れてもくれない。寂しいじゃないかこの野郎!

 エクスセイバーの光が、少し弱まってきてる。

 もう、ソードブレイカー状態をかなり長く続けてるからな。

 さすがのオリビアも、そろそろ体力的にソードブレイカーの維持は難しいだろう。


「どうする? まだやるか?」

「当たり前です!!!」


 おぉ。良い声だ。まだまだ戦る気満々って感じだな。

 よぉし……だったら俺も。


 久々に、戦い(・・・)をするとするかぁ!






━━━━━


 ヒロユキとオリビアは同時に踏み込んだ。

 大剣と大剣がぶつかり合い、激しい金属音と、その衝撃で舞台が震える。

 お互いに弾かれ、お互いにすぐに体勢を整えて次の攻撃に出る。

 オリビアの鋭い突き。ヒロユキはそれをかわし、さっきのお返しと言わんばかりに、柄部分でオリビアの腹部を一撃した。

 後ろに下がったオリビアは、エクスセイバーを構え直して、再びヒロユキに突っ込む。

 腕の力だけではなく、体の捻りも勢いに変え、速く重い、横なぎの斬撃。

 避けず、それをあえて受け止めるヒロユキ。それを合図に、激しい打ち合いが始まる。

 受けては返し。弾いては弾かれるの繰り返し。

 同じ武器同士。攻撃もパターンが似ている。だからこその、打ち合い。

 次の攻撃がどうくるのかがわかるからこその、攻撃と防御。

 ヒロユキはあえて色魔法を使わなかった。

 使おうと考えもしなかった。

 それよりも、真正面からぶつかり合いたいという気持ちの方が大きかった。

 お互いに体を一回転させての回転斬り。

 刀身同士がぶつかり合って止まっても、真空破の斬撃が周囲に風を巻き起こす。

 一瞬、体勢が崩れたオリビア。隙を逃さず、ヒロユキの追撃。

 下段から斜めに振り抜かれたエクスキューショナーが、エクスセイバーを弾き飛ばした。

 武器を失い無防備になったオリビア。

 しかし、慌てる様子も見せない。ヒロユキの返し刃での下段からの追撃を見据える。

 さっきヒロユキがやったように、足で切っ先を踏みつけ、宙返りで回避する。

 そのまま弾き飛ばされたエクスセイバーの所まで跳躍して、体勢を整えながら拾う。

 普通ならば一度間合いを取ったまま様子を見るところだが……。

 オリビアは下がらず、ヒロユキに向かって走る。

 ヒロユキも、一歩も下がらない。

 オリビアがエクスセイバーを振り上げ、縦に一線。

 それを真っ向から受け止める。

 刃同士がぶつかり、力の押し合い。そのまましばしの静止。

 呼吸を整える暇さえない攻防。ここで初めて、オリビアは息を整えた。

 全く呼吸が乱れていないヒロユキを、遺憾に思いながらも。

 同時に、少しの嬉しさも感じていた。

 その静止を解いたのは、オリビアの方からだった。

 わざと力を抜き、ヒロユキが力の余り、前のめりになったところを、エクスセイバーで上空に弾き飛ばす。

 それを追いかける形で、跳躍したオリビア。

 エクスセイバーを後ろに引いた状態で構え、跳躍の勢いのままに、ヒロユキに斬撃を繰り出す。

 だが、ヒロユキはその斬撃を、小さな最低限の動作で弾く。

 それによって、同時にオリビアへの反撃が可能になった。

 上からエクスキューショナーを振り下ろして、オリビアを舞台へと叩き落とした。

 叩きつけられる寸前で、オリビアは体を一回転させて着地。

 それとほぼ同時に、ヒロユキも着地した。


「……なんだ? 嬉しそうだな」

「あなたこそ、なにをニヤニヤしているんですか?」

「いやぁ。久々に戦いになってるからな。ぶっちゃけ楽しいんだよ」

「……変な人ですね。私も……もしかしたら楽しんでいるのかもしれません」


 お互いに笑い合った二人。

 すぐに顔を引き締めたオリビアは、エクスセイバーに、自身の生命力を込める。

 残った生命力を、ほとんど込める勢いで。

 弱まっていたエクスセイバーの光が、再び輝きを増す。

 さっきよりも、眩い光になっていく。

 それを見て、ヒロユキも色魔法の詠唱に入る。


「カラフリアブレード」


 全色魔力によって具現化された巨大な剣。

 エクスセイバーから溢れる光も、巨大な剣のようになっていく。

 巨大な剣が二つ。

 観客たちが確認できるのは、それだけだった。

 その二つの剣が……振り下ろされた瞬間。


 魔力と生命力の爆発が、闘技場全体に広がった――。


━━━━━





『ど、どうなったのでしょうか……光の爆発が起こった後、舞台の様子が全く見えなくなりました……というか、途中から正直言いまして、なにが起こっているのかわからなかったのですが……』


 俺とオリビアの動きを視認できてる奴なんて、ラナとライトぐらいじゃないのか?

 カラフリアブレードとオリビアの斬撃がぶつかった衝撃で、魔力と生命力の爆発が起こったからな。

 いや。さすがに俺もびびった。

 圧倒的。じゃなくて、かなり近い力同士がぶつかったってことだからな。


『み、見えてきました! えぇっと……立っているのは……』


 まぁもちろん、俺は全力で撃ってないけど。

 今ので五割ぐらいかな? 俺に半分も力を出させるなんてな。


『ヒロユキ! 立っているのはヒロユキです! オリビアは膝をついています!』


 あの衝撃で、膝をつくだけかよ。どんだけタフなんだよあいつ。

 でも、さすがに生命力を使いすぎたみたいだな。肩で息をしてる。

 これ以上ソードブレイカーを使うと、命に関わってくるぞ。


「はぁ……はぁ……」

「もうやめとけ。それ以上は死ぬぞ?」

「まだ……まだです!」


 えぇ……立っちゃったよこいつ。フラフラだけど立っちゃったよ。

 エクスセイバーにはもう光が残ってない。

 ソードブレイカーは解除されてるけど、そんなにすぐに体力は回復しない。

 もう動くのもしんどいだろ。立てたのが信じられない。


「……やっぱお前強いわ。正直、ここまで戦り合えるとは思ってなかった」

「……上から目線ですね」

「上だもん」

「……ふふっ。そこまではっきり言われると、逆に気持ち良いものですね」


 オリビアが……笑った。

 初めて見た。笑ったところを。

 真面目に眉間にシワを寄せてるところしか見たことないもん。


 ……おいおい。元々顔は整ってると思ってたけど。

 可愛いじゃねぇかよ。


「別に俺たちの目的は似たようなもんだし、どっちが勝ってもいいだろ?」

「あなたに……神器は渡せませんから」


 ああ。そっか。俺たちはマムの姉ちゃんを助けるのがメインだけど。

 オリビアたちはそもそも、神器の回収が目的だったな。

 だとしたら簡単には諦めないか?

 かと言って、ソードブレイカーの使いすぎでヘロヘロのオリビアをこれ以上痛めつけるのもな……。


「いやぁ。お見事お見事」


 試合中にも関わらず。拍手をしながら、舞台に上がってくる、一人の男。

 試合をしてるときは、舞台に立ち入り禁止だ。

 それなのに途中介入。そんなことができるのは、一人しかいない。

 この闘技大会の主催者……。


 ゴルディオだ。










━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『おまけショートチャット』


「やばい……オリビアちゃんが動きすぎて……パンチラ回数が半端ない……」

「ぱんちらってなにー?」

「サニー。覚えなくていいのよ。こんなゴミクズの言葉なんか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ