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ゲーム世界に三年居た俺は闘技大会で無双します⑥

「やあっ!」


 開始と同時に突っ込んできたオリビア。

 下段から振り上げる形の攻撃。剣先を足で踏んで受け止めて、その勢いを利用して宙返りして回避する。

 おっとっと……相変わらずの馬鹿力だ。このままふっ飛ばされそうになった。


「ウインドラン」


 ウインドランを詠唱して、距離を取る。

 大剣同士だ。接近されると、ステータスが高いオリビアが有利。

 前に戦ったときと同じ、色魔法主体で戦うのが一番良い。


「エレカミヴォルト」


 エレカミヴォルトを詠唱。魔力で疑似的に作られた雷雲から、雷撃がオリビアに向かって落ちる。

 予想はしてたけど、オリビアは……。


「はあぁぁぁ!」


 簡単に避けながら俺に向かってきた。

 簡単にって言うけど、普通は簡単じゃないぞ?

 雷より速く動ける人間。それだけで普通じゃないのわかるだろ?


 まぁ避けられるのはわかってた。だから、本命はこっちだ。


「エレカミランス」


 中級黄色魔法の派生。エレカミランス。

 雷撃の槍を具現化して攻撃する近接魔法だ。

 雷撃の槍だ。剣で受け止めるだけでも。


「うっ!?」


 体に雷撃のダメージが走る。

 一瞬だけ怯んだオリビア。俺の特性色魔法を受けて一瞬怯むだけとかどんだけだよと思いながら、追撃。


「パワーストライク」


 闘気を込めたエクスキューショナーを力任せに振りぬく。

 体が痺れてたオリビアだったけど、エクスセイバーを盾みたいに構え直して防いできた。衝撃で数歩後ろに弾かれるも、全然効いて無さそうだ。

 悪いけど、攻撃の手は休めないぞ?

 後ろに弾いたオリビアに接近。スキル連発でいくぞー。


「スパイラルブレード」


 体を一回転させながらエクスキューショナーを振って、竜巻を起こす。

 さっき、オリビアはスキルも無しにやってたけど、これが本場だぞ。


「……あれ?」


 あれ? オリビアがいない。

 俺が一瞬。本当に一瞬……回転する時に目線を外した瞬間。

 オリビアは俺の死角に素早く移動していた。


「たあっ!」

「うわっ!?」


 スパイラルブレードを途中で中断して、オリビアの突き攻撃を刀身で受け止める。

 いっでぇ……腕が痺れる。何度も言うけど、馬鹿力め!

 ちょっと頭に来たぞ!

 受け止めた刃を押し返して、色魔法を詠唱する。


「メガフェルノス!」


 押し返されて体勢を崩したオリビアに、大火球が迫る。

 普通なら、避けられないタイミングだ。そういう撃ち方をしたんだ。

 でも、オリビアは……。


「げっ……」


 体勢を崩した状態のまま、無理やり上に跳躍して回避。

 あの無理な体勢で、なんであんなに高く飛べるんだよ! あんな細い足のどこにそんな筋力があるの?


「たあぁぁぁぁ!!」


 やべっ!? 油断してた! 完全に当たったと思ってたのに!

 落下の勢いのまま俺にエクスセイバーを振り下ろしてくるオリビア。ギリギリ、それをエクスキューショナーで受け止める。

 そのまま、しばらく静止。

 いや……グググ……と力任せに刃を押し付けてくるから、動けないだけなんだけどね。


「……その剣は、魔剣エクスキューショナーですね? 魔界の魔人が持っているはずの伝説の武器を、なぜあなたが持っているのですか?」

「よ、よく喋る余裕があるな……とりあえず、一回離れない?」

「私の聖剣エクスセイバーと対になる武器です。ただの冒険者が持っているはずありませんから」


 スルーすんな。離れろって言ってるだろ。

 ていうか、対の武器? そうなの? そこまでは知らなかった。確かに名前は似てるけど。

 なんで持ってるって言われてもな……。


「魔人をぶっ倒して奪っただけだけど?」

「魔王様でさえ、手を焼く魔人ですよ? あなたが倒せるわけありません」


 バッサリと切られた。

 そんなこと言ったって……事実なんだから仕方ないじゃん。

 ていうかおい……力をさらに込めるな! 今の俺は子供なんだ! 体格差的にもちょっときつくなってきたんだよ! 上から押し付けられてる感じなんだから!


「……まぁいいです。あなたを倒して、その魔剣も回収します。その剣は、こちらの世界にあっていい物ではありません」

「どうでもいいだろそんなの……クソ真面目野郎め……」

「汚い言葉を使わないでください!!」


 あまりのオリビアの力に、俺の体は踏みつけられたボールみたいに弾かれた。

 宙に浮いた俺を、剣の柄部分で、顔を一撃。そのまま吹っ飛ばされた。


 ……いってぇ。


 おいおい……久々だな。本気で痛いって思ったのは。

 そもそも、レベルマックスになってからはダメージを負うってこと自体がなかったんだ。


 ……ははは。


 上等だ。


「……エレカミストーム!」


 上級黄色魔法エレカミストーム。

 さっきよりも大きな雷雲が発生して、雷撃が次々とオリビアに向かって落ちる。

 普通は一人相手にはあんまり使わない。モンスターの群れ相手に使う全体魔法だ。

 でも、すばしっこいオリビアには丁度良い。


 思った通り、オリビアは雷撃を避けながら俺に向かってきた。

 でも、雷撃のせいで動ける範囲が限定されてる。俺の狙いはそこだ。


「ソニックブレイド!」


 斬撃を飛ばして、雷撃を避けたオリビアを追撃。

 雷撃を避けるだけでも普通は難しいんだ。それにさらにソニックブレイドの斬撃だ。さすがのオリビアも、注意をその二つに向けて考えさせれば動きが鈍るはず。


 さぁ……どうする?


「はあっ!」


 どうするもこうするもなかった。

 雷撃を避けながら、ソニックブレイドの斬撃を……エクスセイバーで叩き落とした。

 えぇ……もう考えるとかじゃなくて力づくじゃん……。

 それでどうにかなっちまうのが、魔力持たずの怖い所だ。


「おっと!」


 雷撃の嵐を抜けてきたオリビアが、横なぎにエクスセイバーを振りかざしてきた。それを受け止めて……と、うわぁっ!?


「ぐっ!? あだっ!」


 受け止め切れずに、吹っ飛ばされた。おもいっきり体を舞台に打ち付ける。

 なんだ……? さっきよりも威力が……。

 あー……当たり前だ。そりゃあ受け止められないわ。


 ……あいつ……いつの間にか、ソードブレイカー使ってやがる。





ミ☆





「ちょっとヒロユキ! なにやってんのよ!!! 負けたら瞳先生に言いつけるわよ!」

「ヒロユキ様をいじめないでよぉ!!!」

「ユッキー。ボッコボコだね」

「……いや。無理もないぞ。むしろ、付いていけてるヒロユキも普通じゃない」





ミ☆





 外野がごちゃごちゃとなんか言ってる……恥ずかしいからやめてくれ。

 それとアマノ。瞳姉に言うのはマジでやめて。


 意外と早くソードブレイカーを使ってきたな。それだけ、俺を厄介だと思い始めてきたってことか。

 ソードブレイカーを使われたら……オリビアの攻撃を受けるだけでもきつくなってくる。


 だったら……受けなければいいだけの話だ!


「メガフェルノス!」


 もう一回。メガフェルノスで牽制。

 でも、それだけで止めない。どんどん行くぞ。


「エレカミストーム!」


 続いてエレカミストーム。大火球と雷撃の嵐がオリビアに降りかかる。

 でも、まだまだ! 続いて行くぞ!


「ドラゴンファング!」


 闘気を竜の形に具現化するドラゴンファングで追い打ちだ!

 近づいたら分が悪い。だったら遠距離攻撃の嵐で、徹底的に叩く!


 まず、メガフェルノス。

 普通に避けられた。


 そしてエレカミストーム。

 次々と避けられていく。


 そこにドラゴンファング。

 エクスセイバーで叩き落とされた。


 ……マジで?


 全部の攻撃をすり抜けて、俺に向かってくるオリビア。

 やばい。ソードブレイカー状態の攻撃を受けると吹っ飛ばされる。


 ……仕方ねぇな。だったらこれでどうだ!


「カラフリアブレード!」


 全魔力をエクスキューショナーに込めて、大きな刀身を具現化。

 俺の最強スキルだ! レベルもマックスで撃ち込んでやる!!!

 オリビアなら死にはしないだろう!


 巨大な魔力の刃を見て、オリビアもさすがに驚いた表情を一瞬した。

 でも、それは本当に一瞬だけだった。

 すぐに、エクスセイバーを構え直して、突っ込んでくる。


 受けて立つってか? 上等だ!!!


 オリビアに向かって、カラフリアブレードを振り下ろした。





ミ☆





 ……驚きましたね。最後の一撃は。

 ソードブレイカー状態でなかったら、おそらく……エクスセイバーのほうが打ち負けていたかもしれません。

 なんとか、打ち返すことができました。


 でも……これで終わりです。


 勢いのままの攻撃でしたが……私の生命力で撃った斬撃が直撃しました。

 ソードブレイカー状態での、本気に近い攻撃でした。


 命までは奪いませんが……もう立てないでしょう。


 それにしても、斬撃でまた舞台を壊してしまいました……砂埃がすごいですね……。



 ……?



 なんでしょう……悪寒が……。



 ……それに、この威圧感は……。



 ……まさかっ!?


 砂埃が晴れて、見えてきたその姿に、私はまた身構えました。





ミ☆




 ……ドレルチ解除。


 あーあ……あわよくば、ドレルチ状態で勝てればなと思ったけど。

 そんなに甘くなかったか。さすが、四角のリーダー。

 ドレルチ状態とはいえ、カラフリアブレードが負けるとは思わなかった。


「……え? 成長した……? あなたは一体、なんなのですか!」


 砂埃が晴れて、エクスセイバーを構え直すオリビアの姿が見えてくる。


 なんなのですか? その質問に対して、俺の答えは決まってる。


「……しいて言えば『強くてもう一回最初から』みたいな?」

「……? なにを言ってるんですか。意味がわかりません」


 くそ。相変わらず誰にも通じないな。この例え。


「戦えばわかる。覚悟しろ。ここからは俺の無双開始だ」

「……!?」


 ん? オリビアが俺の顔を見て、なんか驚いてる。

 いや。子供からいきなりでかくなったんだから、驚くのは当たり前なんだけど。

 なんかそうじゃなくてさ。俺の顔自体を見て、驚いてるような……。


「……なぜ、あなたがここに……」

「は?」

「………またあなたと戦うことになるとは思いませんでした」


 ……またあなたと戦うことになるとは思いませんでした?

 その言葉の意味は、すぐに理解できた。

 今までの四角たちとは、明らかに違う言葉だったからな。


 まさかこいつ……。


「お前、俺のこと覚えてるのか?」

「……? どういう意味ですかそれは。当たり前です! 私を打ち負かした男の顔を、忘れるわけがないでしょう!」


 おっとっと……これは急展開だ。


 今まで、四角の奴らは誰一人として俺のことを覚えてなかったのに。

 オリビアは、俺との闘いの記憶があるみたいだ。

 そういえば……気にしてなかったけど、オリビアだけは前に戦ったときとレベルも同じぐらいだったな。

 四角たちは少しレベルが下がってるのに。


 俺の記憶がある……つまりだ。

 なんでオリビアと四角たちが復活してるのかどうか、話が聞けるかもしれないな。


「これはちょっと聞きたいことができたな。話してもらうぜ。いろいろと。俺が勝ったらな」

「……今度こそ、負けません! 絶対に勝ちますから!」


 いや。無理だけどね。

 さっきも言ったけど。


 ここからは、俺の無双開始だから。










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『おまけショートチャット』


「ヒロユキの奴、途中からスキルの後に『!』が付いてるじゃないの。必死じゃないのよ」

「いつもは適当な、力の入ってない声だからな。あんなに必死なのは初めて見る」

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