ゲーム世界に三年居た俺は闘技大会で無双します①
『さぁさぁ! 始まりましたよ! ブルーア首都、闘技大会! 普段はモンスターとの対戦をお届けするところですが……今回は! 希少な奴隷をかけた、トーナメント形式の大会となります!』
うるせぇな。奴隷をかけたとか、拡声機使って言うんじゃねぇよ。
普通の大会じゃあり得ないっての。その時点で開催強制停止だ。
『しかも! 今回は……ゴルディオ様が国王から授かった特別褒賞品も優勝者に贈呈されます! それではまず……賞品となる奴隷の紹介をいたしましょう!』
ゴルディオが、闘技台の上まで……鎖に繋いだ獣人の女の子を引きずって行く。
一昨日よりも……弱ってるように見える。だからどうせ逃げられないと思って、今日は檻に入れてないのか。
「……」
選手控場所から、アマノに目で合図する。
マムを落ち着かせろって意味だ。感情に任せて飛び出さないようにな。
アマノにいたっても同じだけどな。絶対に飛び出すんじゃないぞ。
『獣人は希少な種族です! しかも若いメス! 普通に購入すれば数百万ゴールドはくだらない!』
首を鎖で引っ張られて、痛みと苦しさで顔を歪めるマムの姉。
ゴルディオの奴……マジで奴隷を商品としか見てないな。首にある首輪の痕が痛々しい。
『みなさん。どうか優勝目指して、闘技大会を盛り上げていただくようにお願いいたします!』
盛り上げていただくように……か。
まぁせいぜい盛り上げてやるよ。お前らの思惑通りにはいかせないけどな。
昨日、宿屋で話し合ったことを思い出す。
ミ☆
~前日~
闘技大会も明日に迫って、町の活気がさらに上がってる。
奴隷獲得闘技大会で活気が上がるってのも気に食わないけど。
でも、町の外れを見れば……奴隷の人たちが死んだ目で座り込んでる。
「……」
「アマノ。抑えろよ? 大会前に騒ぎを起こしたくないからな」
「わかってるわよ」
だから連れてきたくなかったんだ。食料の買い出しで人手が必要だから仕方なく連れてきたけど。
ラナはハスとサニーの身の安全のために宿に残っててほしかったから、消去法でアマノになったんだ。
買い出しついでに、大会の出場登録を済ませてきた。
基本的に、誰でも参加OKで、自分を証明するものもいらない。
名前だけ伝えればよかった。俺が現世界からのプレイヤーってのもあったかもしれないけど。
プレイヤーはゲーム世界での身分証明的なものは全部免除されるからな。
宿に戻ると、一晩経って、ほぼ全快したハスが俺にすり寄ってくる。
「おかえり! ヒロユキ様! 待ちくたびれたよ!」
「ん? そんなに腹減ってたの?」
「ヒロユキ様を……だよ! もう離れない!」
俺に抱き付こうとしたハス……それを、額をガッと押さえて止めるアマノ。手をぶんぶん回してハスが抗議する。
「邪魔しないでよ~~~~! ずっと休んでたからヒロユキ様成分が足りないの~~~!」
「永遠に足りなくていいです。お昼ご飯にするので座ってください。まだ病み上がりなんですから大人しくしててください」
まぁ、宿で休めば全快するから、もう大丈夫だとは思うけど。
あんまりくっ付かれると俺の心臓に悪いからそういうことにしておこう。
「サニー。マム。昼飯だぞ。適当に選んで食べてくれ」
「はーい!」
パタパタと、サニーはすぐに駆け寄ってきたけど……マムは、窓の外を見たまま動かない。
あれ? 今までは、飯って聞くとすぐに寄ってきたのに、どうしたんだ?
「……お姉ちゃんのことを考えてるみたいなんだよー」
「ああ……」
すぐ近くに居るのに、会えない。それがさらに寂しさを強くしてるんだろうな。
でも、あと一日の辛抱だ。明日の闘技大会で俺が優勝すれば、助けられる。
「ヒロユキ。お前なら心配はないと思うが、逆にやりすぎないようにしないとな」
「ん?」
「相手を殺してしまわないように、な」
ああ。そのことか。確かに、四角以外にあんまり人間を相手にすることがないからな。
やりすぎて殺しちまわないように注意はしないと駄目かもしれない。
相手のレベルによるけど、デコピンで吹っ飛ばしちまうぐらいだからな。
あんまり手を抜きすぎて、客からブーイングの嵐になっても面倒だ。
でも、その件については心配ない。
「大丈夫だ。ドレルチ状態で戦うから」
「ドレルチって……ステータスと武器性能が十分の一になるんだっけ?」
「ああ。それなら殺しちまうことはない」
つまり、俺で言えばレベル100~110程度のステータスになるってことだ。
それでも充分に戦える。
「……手加減しすぎてやられないようにしてよね」
「俺がやられると思うか? まぁ万が一、やばいと思ったらすぐにドレルチを解除するから大丈夫だ」
そんな相手は居ないと思うけど。
あいつ以外は。
「それならば、ステータスのバランスが重要になってくるんじゃないのか? ヒロユキは今、全てのステータスに均等に振っているだろう? それがただ十分の一になると、バランスが悪いんじゃないのか?」
さすがラナ。そこに気が付くとはな。
俺は今全部のステータスが1110だ。それが十分の一になれば、111になる。
普通は、どれかのステータスを集中的に振って、特化させるもんだ。
レベル1000とかじゃなければな。
でも、その件についても問題はない。
「カラフルナイトは特典で、ステータスが自由に振り直せる。だからドレルチを使う前に、ステータスを振り直すから大丈夫だ」
「……あんたって、本当にチートよね」
「久々に聞いたなそれ。チート言うんじゃない」
レベル1000に到達した特典だっての。俺の努力の結晶なんだから。チート扱いするな。
「……えっと、さっきからみんなの言ってることがわからないんだけど……ヒロユキ様って、そんなに強いの?」
そういえば、まだハスには詳しく説明してなかったな。
もうパーティに加入したんだ。教えてやってもいいかな。
俺の秘密をな。
「俺はレベルが最高レベルの1000で。職は、最高レベルにならないと転職できない究極職のカラフルナイトなんだ。ぶっちゃけ、この世界で敵は無い(ドヤァ)」
「胸張って言うんじゃないわよ。傍から見たらチートなんだから。レベル上げに執着しすぎて廃人になって精神的に死ね」
おい。廃人って言葉調べやがったな?
俺にとってその死に方は洒落になってないから。死にはしてないけど、経験済みですよ?
「……」
ハスが俺のことをじっと見てくる。
美人にそんなマジマジと見られると、普通に照れるんだけど。
俺って意外と初心なんだよ?
「……私、玉の輿だったんだ」
じっと見てたと思ったら、いきなり何言ってんの?
ていうか言い方がおかしくない? 確かにゲーム世界では実質そんな感じだけど。
……あんまり嬉しくはないぞ。結婚してないし。アマノがジロリと見てくるし。
ミ☆
【ヒロユキ(幼児化)】 職・カラフルナイト
Lv1000(幼児化により100相当)
力 140
体力 100
素早さ 100
知力 135
技 80
武器 魔剣エクスキューショナー
攻撃力 1500
防具 無色の宝衣
防御力 1200
装飾品 限界突破の腕輪
ステータスオール+10
まぁステータスはこんなところかな。
なんだかんだ言って、俺はバランス的なステータスが戦いやすい。
力と知力少し大目で、技は最低限。残りを体力と素早さって感じだ。
『さぁさぁ……さっそく始まりました! 参加者が多いですからねぇ! さくさくと進んでもらいたいものです……では第一回戦を始めます!』
くじ運が良いのかわからないけど、組み合わせを決めるくじで1番を引いた。
そのせいで、一回戦目から試合だ。面倒くせぇな。いきなりとか。
まぁいいか……。
『選手の入場で……おぉ? 子供……子供が出場しています! 冒険者ヒロユキ!』
うっせぇな。子供で悪いか。
観客席がざわめきだした。大人の参加者の中に、明らかに年齢一桁の子供が居るんだから無理もないけど。
「ヒロユキ様ぁぁ!!! 可愛すぎるぅぅぅ!!!」
「会長! 恥ずかしいから叫ばないでくださいよ!」
一部、別の意味でうるさい所があるな。目を向けないでおこう。
相手は……見た感じ、ただの剣士っぽいな。ステータスを非表示にしてる。
まぁ試合で相手にわざわざステータスを見せる必要ないからな。
俺には神眼があるから、レベルは丸見えだけど。
【アルカード Lv57】
レベル57か。なんてことない。
『子供が戦えるんですかねぇ……対するは、熟練の剣士アルカード! これはもう勝負が見えたのではないでしょうか! 三十秒程度で終わってしまうのではないでしょうかね? サクサク進んでこちらは大助かりですけど!』
は? なに言ってんのこいつ?
三十秒?
そんなにいらねぇよ。
『では! 始めてもらいましょう! 試合開始です!』
開始の合図と同時に、相手の剣士に向かってウインドランで一気に接近。
そして、鞘に納めたままのエクスキューショナーで、腹に一撃。
反応もできず、悲鳴も出ないまま、剣士は場外に吹っ飛んだ。
試合の勝利条件は単純だ。
降参。気絶。場外に吹っ飛ばされる。このどれかだ。
だったら、場外に吹っ飛ばすのが一番手っ取り早い。
『……え?』
あはは。司会の奴、目が点になってやがる。ざまぁみろ。
さぁて……どんどん行こうか。あいつと当たるまでは、無駄な体力使いたくないしな。
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『おまけショートチャット』
「小さいヒロユキ様……可愛すぎてやばいよ……ハァ……ハァ……」
「朝比奈会長。もうただの危ない人ですから、もう少し自重してください」




