表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/78

ゲーム世界に三年居た俺は生徒会長に告白されました④

「虎上院さんは、どういう理由でヒロユキ様とパーティを組んだの?」

「……」

「ヒロユキ様強いし。一人でも充分なのに、わざわざパーティを組んでるってことは、虎上院さんからお願いしたんだよね?

「……」

「私もヒロユキ様とパーティ組みたいな~」

「……」

「……無視しないでよ。私が一人で喋ってて馬鹿みたいじゃん」

「朝比奈会長が喋りすぎなだけです」


 さっきからこの調子なんだけど。怒鳴りたいのを我慢してるだけでもありがたいと思ってほしいわ。本当は置いていきたいけど、マムちゃんも居るから、一人だと守り切れないかもしれないし。いろいろ思考が巡りすぎてイライラするんだけど……。


「実際、虎上院さんはヒロユキ様のこと好きなの?」

「好きなわけないじゃないですか!? なんで私があんな奴を!!」

「だったら、私がヒロユキ様と結婚しても、関係ないはずじゃない。なのに、なんでそんなに嫌がるの?」

「……」


 なんで嫌がるのか……?

 そういえば、なんでだろ……よくわからないけど、朝比奈会長があいつにベタベタすると、すごくイライラするのよね。単純に、朝比奈会長が気に食わないってのもあるけど。


「……ヒロユキは、私のパーティメンバーですから」

「なんかそうやって言い訳してるようにしか聞こえないな~」

「うるさいですね! 少し黙ってくれませんか!? 喋りすぎで血管切れて死にますか!?」

「……なにその死に方? 喋りすぎたぐらいで血管は切れないと思うけど。叫んでるわけじゃないし」


 あ~~~~~~~~腹立つ!? もうマジで置いていってやろうかしら! ストレス溜まりすぎて、おかしくなりそう!


「……うぅ……ぐす……」


 小さな泣き声に、驚いて振り返ると……マムちゃんが、目に涙を浮かべてた。


「マ、マムちゃん? どうしたの? 怖くなっちゃった?」

「ぐす……お姉ちゃんたち……仲良くしよ? ケンカしてると……怖いよぉ……」


 こ、怖がらせちゃった……小さな女の子を泣かせるなんて……最悪だわ……私たち……。


 朝比奈会長と目を見合わせる。さすがの会長も、罪悪感を表情に出してるみたい。ここは……見た目だけでも仲良くしてる感じを見せないと……。


「だ、大丈夫よ! 私と会長はこんなに仲良しだから!」

「そ、そうだよ! ケンカするほど仲が良いって言うからね! ほらほら! こんなに仲良し!」


 無理やり握手をして、仲良しをアピール……って、会長……強く握りすぎでしょ。握り返してやるわ。あっ。もっと強く握ってきた。このっ……!?


「……仲直り?」

「「うん!」」

「……えへへ」


 マムちゃんがやっと笑ってくれた。あぁよかった……。生きた心地しなかったわ。小さな女の子を泣かせてるなんて。

 握手をやめて、会長に耳打ちをする。


「……とりあえず、ヒロユキたちと合流するまで、一時休戦にしましょう。マムちゃんを不安がらせないためにも」

「うん。また泣かせちゃうの嫌だしね……ヒロユキ様にも早く会いたいし」


 とりあえず停戦。私たちはなるべく協力して、ヒロユキたちを探すことにした。





ミ☆





 ボスモンスターが出現すると、一時的に、モンスターの動きが活発になる。そのせいで、モンスターの数が多いな……面倒くせぇ。


「ヒロユキ。リヴァイアサンは今どこに居るかわかるか?」

「もっと奥のほうだな。アマノとハスも、もう少し奥に居るみたいだ」


 アマノとハスも、モンスターと戦ってるみたいだな。おかげで、魔力を感じ取りやすい。でも、このまま行くと……リヴァイアサンと鉢合わせする。リヴァイアサンのレベルは、出現する個体にもよるけど、平均で60を超える。アマノとハスだけじゃきつい相手だ。


「……ユッキー。マムちゃん、大丈夫かな?」

「大丈夫だ。言っただろ? アマノたちと一緒に居るって」


 アマノたちの魔力を感じ取れたからわかったことだけど、傍に小さな魔力を感じる。獣人は亜種と同じで、特殊な魔力を持ってるからな。間違いなく、この魔力はマムだ。


「だけど、このまま行くとやばいな。早く追い付かないと」

「……進行速度を上げるか」

「だな。ウインドランを使う。サニー。俺におぶされ。一気に走るぞ」

「わかったー!」


 サニーをおぶされば、俺とラナなら足場が悪くてもウインドランで突っ走れる。これでなんとか追い付けるはずだ。


「……!?」

「どうした? ヒロユキ」

「いや……」


 海底大青洞の入り口に……一瞬、強い魔力を感じた気がした。


 ……気のせいか? まぁいいや。それよりも、今はアマノたちに追い付く方が先決だ。





ミ☆





「ゾロゾロとうざったい奴らね!」

「面倒くさいよ~」


 半魚人の群れが、次から次へと向かってくるわ。黄色属性魔法で一網打尽にできるけど、倒した傍からまた新手が来るからキリがない! マムちゃんを連れながらの戦闘は、その内無理が出てきそう!


「会長! 少しの間お願いします!」

「え? どうするの?」

「こうします!」


 マムちゃんをおぶさって、リボン(サニーに着けてあげようとしてた)で落ちないように縛る。これで、マムちゃんの手を引きながら動く必要はなくなったわ。


「おぉ……子守してるみたい。私もヒロユキ様との間にマムちゃんみたいな可愛い娘がほしいな~」

「くだらないこと言ってないで、来ますよ!」

「くだらなくないよ!」


 充分にくだらないわ。半魚人の群れの奥に……なんかでかい奴が居るんだから! 集中してよ!


 なにあいつ? 半魚人じゃなくて、下半身だけ魚の……人魚? でも、顔は白鬚のおじいちゃん。大きな槍を持ってる。あれもモンスターなの?


「ポセイドンだよ。ダンジョンに数体だけ居る、言うなら中ボスって感じのモンスターだね。前に戦ったことある」

「……勝てますか?」

「余裕だよ! 周りの半魚人は任せるからね。虎上院さん」


 会長が一本の矢をつがえて、構えた。体から……光が溢れてくる。魔力がどんどん強くなっていく。


 ……見てる場合じゃないわ。半魚人を倒さないと!


「エレカミヴォルト!」


 エレカミヴォルトは単体魔法だけど、青色属性相手なら、一体に当てれば感電して全体に伝わるから、使いやすいわ。半魚人は全滅して、ポセイドンにも私のエレカミヴォルトのダメージが伝わったみたいだけど……動きを止めないで、こっちに向かってくる。持っていた槍を振りかぶって、私たちに向かって投げてきた。しかも、放電してるじゃないの! あいつ、黄色属性だったの? だからエレカミヴォルトの効果が薄かったんだわ!


「いっくよぉ!」


 会長が矢を放したのは、それと同時のことだった。


「【パワーシュート】!」


 魔力を帯びて、さっきまでとは比べ物にならないぐらいの速度で、矢がポセイドンに向かって飛んでいく。飛んできた槍を弾いて、そのまま、ポセイドンの心臓を貫いた。それでも、まるで何にも当たってないみたいに速度を緩めないで、後ろの岩に矢は深く突き刺さった。すごい威力だわ……。


「虎上院さん! まだまだ来るよ!」

「わかってますよ!」


 その後も、半魚人の群れは途切れることなく、向かってきた。この場に留まってたらキリがないわ! 倒しながら、少しずつ離れないと!


 半魚人たちを倒しながら、無理やり突破して、なんとか岩陰に隠れた。はぁ……もう半魚人は見たくないわ……。


「ふぅ……とりあえず、落ち着いたかな?」

「……そうですね」


 なんだかんだ言って、私よりレベル少し高いのよね。パーティの戦いにも慣れてるみたいだし。少しぐらい、頼りにしてもいいかも。


「マムちゃん。大丈夫?」

「うん……」


 マムちゃんを下ろしてあげてから、少しだけ休憩することにした。この岩陰なら、そうそう見つかることはなさそうだしね。なにより……疲れたわ。サニーがいないから回復もできないし。慎重に進まないとね。


「疲れたね~。ヒロユキ様が居ればなぁ。あのぐらい、剣の一振りで倒しちゃうと思うのに」

「……」


 会長は、前にもゲーム世界に来てたのよね? ヒロユキに助けられたって言ってたけど。そもそも……なんでゲーム世界に来たのかしら? 私みたいに、なにか目的があったの? 生徒会長をやるぐらい、周りからは優等生って思われてたなら、特別な理由がないとゲーム世界に来るなんて考えられないけど。


「……会長。一つ聞いていいですか?」

「なにかな? ヒロユキ様との思い出を?」

「違います。思い出って助けられたときの一つだけでしょ。そうじゃなくて……会長は、なんでゲーム世界に来たんですか?」

「……」


 いつもヘラヘラしてた朝比奈会長が、少しだけ、真面目な顔になった。学校で見るときと……同じ顔に。


「……虎上院さんに話すようなことじゃないかな~」

「……まぁ言いたくないなら別にいいですけど」

「でも話しちゃおっと」


 思わず、え? って声が出ちゃった。話してくれなさそうだったのに、急に軽い感じで話し始めたから。


「私ね……親がけっこう厳しくて。小学校の頃から家庭教師とかつけられて……勉強ばっかりしてたの。でも……不満が爆発しちゃって。中学生のとき、全部辞めて家出しちゃったことがあったの。そのときだよ。ゲーム世界に行ったのは。反抗期ってやつかな?」


 それを聞いて、勝手に私は……自分と重ねてた。

 小さい頃からずっと、英才教育を受けて、その環境とお父さんが嫌になって……今、家出してる私と。


「でも、ゲーム世界で死にかけちゃったときに怖くなっちゃって……家に戻ったの。それからは、親もそんなに厳しくはなくなったけど。なんかそうなったら、急に申し訳なくなってね。学校モードっていう、優等生の娘を演じるようになった」

「……コントローラーをもらうには、親の承諾が必要ですけど、家出中だったのに許してくれたんですか?」

「偽装しちゃった!」


 す、すごいことをさらっと言ったわね。この人。


 優等生を演じる……この人も、いろいろあったのね。生徒会長としてのこの人は……あくまで、親への罪悪感から演じてるキャラクターだったのね。


 でも演じてるとはいえ……生徒会長を二年連続で務めるなんて、ふざけた人だけど、能力は確かみたいね。成績も学年で一番だし。


「虎上院さんはなんでゲーム世界に来たの? 私が話したんだから、お話してくれるよね?」

「……私はお姉ちゃんを探しに来たんです。一年前から、ゲーム世界で行方不明になってて……」

「え? そうなんだ……」


 自分だけ聞いておいて、話さないわけにはいかない。そう思って、今までの私たちの経緯を全部話した。


 ……そういえば初めてだわ。自分の事情を、ヒロユキ以外の現世界の人間に話すって。


「ヒロユキ様は虎上院さんのお姉さんを探す手伝いをしてるんだね。優しいな~~~。ますます好きになっちゃう!」

「私にあんなことさせたんですから当然です」

「あんなこと?」

「……なんでもないです」


 思い出しちゃった……ゲーム世界でパーティを組むことの代わりに、ヒロユキが私に言ってきたことを……キ、キスしたことを……。


「虎上院さん。顔赤いけどどうしたの?」

「なんでもないです!」

「見つかるといいね。お姉さん」


 ふざけた笑顔じゃなくて……純粋な、見守るような笑顔だった。

 ……こんな顔もできるのね。この人。ていうかこれまさか……。


「……その顔。学校モードですか?」

「ばれちゃった?」

「ばれますよ。別人ですから」


 騙されるところだったけどね。相手にしてると本当に疲れるわ。この人。


「……お姉さんもきっと、虎上院さんのことを心配してると思うよ」

「え?」

「お姉ちゃんってそういうものだもん! 妹が可愛くて仕方ないんだからね!」


 今度は少し寂しそうな笑顔で、意味深なことを言う生徒会長。

 まるで……自分のことを言ってるみたいな感じだったけど。これも学校モード? もうわからなくなってきたわ。


「……!?」


 マムちゃんが耳をピクピク動かして(どうでもいいけど、これ可愛いわ)、私にくっ付いてきた。なにかに怯えるみたいに。


「ど、どうしたの?」

「……なにか……来る……」


 来る……? なにが――。


 そう思っていた瞬間、大波みたいな音がして、水しぶきが高く上がった。そして、体を渦みたいにうねらせながら空中を走る巨体。うそ……もしかしてさっきの!?


【リヴァイアサン 出現】


 リヴァイアサン……さっきはいきなりスキルを撃たれたから、姿もちゃんと見れなかったけど……こんなに大きかったの? 大きすぎる……成体になったアカムと同じぐらいあるじゃないの。体の長さで言ったら、それ以上だわ!


「……虎上院さん」

「わかってます!」


 もう一回、マムちゃんをおぶって、リボンで縛って固定してから、私たちは戦闘態勢になった。










━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『おまけショートチャット』


「ところで、虎上院さんはヒロユキ様になにをさせられたの?」

「聞かない方がいいですよ。嫉妬しそうですから」

「大丈夫。私もヒロユキ様に同じことするから」

「絶っっっ対に教えません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ