ゲーム世界に三年居た俺は生徒会長に告白されました④
「虎上院さんは、どういう理由でヒロユキ様とパーティを組んだの?」
「……」
「ヒロユキ様強いし。一人でも充分なのに、わざわざパーティを組んでるってことは、虎上院さんからお願いしたんだよね?
「……」
「私もヒロユキ様とパーティ組みたいな~」
「……」
「……無視しないでよ。私が一人で喋ってて馬鹿みたいじゃん」
「朝比奈会長が喋りすぎなだけです」
さっきからこの調子なんだけど。怒鳴りたいのを我慢してるだけでもありがたいと思ってほしいわ。本当は置いていきたいけど、マムちゃんも居るから、一人だと守り切れないかもしれないし。いろいろ思考が巡りすぎてイライラするんだけど……。
「実際、虎上院さんはヒロユキ様のこと好きなの?」
「好きなわけないじゃないですか!? なんで私があんな奴を!!」
「だったら、私がヒロユキ様と結婚しても、関係ないはずじゃない。なのに、なんでそんなに嫌がるの?」
「……」
なんで嫌がるのか……?
そういえば、なんでだろ……よくわからないけど、朝比奈会長があいつにベタベタすると、すごくイライラするのよね。単純に、朝比奈会長が気に食わないってのもあるけど。
「……ヒロユキは、私のパーティメンバーですから」
「なんかそうやって言い訳してるようにしか聞こえないな~」
「うるさいですね! 少し黙ってくれませんか!? 喋りすぎで血管切れて死にますか!?」
「……なにその死に方? 喋りすぎたぐらいで血管は切れないと思うけど。叫んでるわけじゃないし」
あ~~~~~~~~腹立つ!? もうマジで置いていってやろうかしら! ストレス溜まりすぎて、おかしくなりそう!
「……うぅ……ぐす……」
小さな泣き声に、驚いて振り返ると……マムちゃんが、目に涙を浮かべてた。
「マ、マムちゃん? どうしたの? 怖くなっちゃった?」
「ぐす……お姉ちゃんたち……仲良くしよ? ケンカしてると……怖いよぉ……」
こ、怖がらせちゃった……小さな女の子を泣かせるなんて……最悪だわ……私たち……。
朝比奈会長と目を見合わせる。さすがの会長も、罪悪感を表情に出してるみたい。ここは……見た目だけでも仲良くしてる感じを見せないと……。
「だ、大丈夫よ! 私と会長はこんなに仲良しだから!」
「そ、そうだよ! ケンカするほど仲が良いって言うからね! ほらほら! こんなに仲良し!」
無理やり握手をして、仲良しをアピール……って、会長……強く握りすぎでしょ。握り返してやるわ。あっ。もっと強く握ってきた。このっ……!?
「……仲直り?」
「「うん!」」
「……えへへ」
マムちゃんがやっと笑ってくれた。あぁよかった……。生きた心地しなかったわ。小さな女の子を泣かせてるなんて。
握手をやめて、会長に耳打ちをする。
「……とりあえず、ヒロユキたちと合流するまで、一時休戦にしましょう。マムちゃんを不安がらせないためにも」
「うん。また泣かせちゃうの嫌だしね……ヒロユキ様にも早く会いたいし」
とりあえず停戦。私たちはなるべく協力して、ヒロユキたちを探すことにした。
ミ☆
ボスモンスターが出現すると、一時的に、モンスターの動きが活発になる。そのせいで、モンスターの数が多いな……面倒くせぇ。
「ヒロユキ。リヴァイアサンは今どこに居るかわかるか?」
「もっと奥のほうだな。アマノとハスも、もう少し奥に居るみたいだ」
アマノとハスも、モンスターと戦ってるみたいだな。おかげで、魔力を感じ取りやすい。でも、このまま行くと……リヴァイアサンと鉢合わせする。リヴァイアサンのレベルは、出現する個体にもよるけど、平均で60を超える。アマノとハスだけじゃきつい相手だ。
「……ユッキー。マムちゃん、大丈夫かな?」
「大丈夫だ。言っただろ? アマノたちと一緒に居るって」
アマノたちの魔力を感じ取れたからわかったことだけど、傍に小さな魔力を感じる。獣人は亜種と同じで、特殊な魔力を持ってるからな。間違いなく、この魔力はマムだ。
「だけど、このまま行くとやばいな。早く追い付かないと」
「……進行速度を上げるか」
「だな。ウインドランを使う。サニー。俺におぶされ。一気に走るぞ」
「わかったー!」
サニーをおぶされば、俺とラナなら足場が悪くてもウインドランで突っ走れる。これでなんとか追い付けるはずだ。
「……!?」
「どうした? ヒロユキ」
「いや……」
海底大青洞の入り口に……一瞬、強い魔力を感じた気がした。
……気のせいか? まぁいいや。それよりも、今はアマノたちに追い付く方が先決だ。
ミ☆
「ゾロゾロとうざったい奴らね!」
「面倒くさいよ~」
半魚人の群れが、次から次へと向かってくるわ。黄色属性魔法で一網打尽にできるけど、倒した傍からまた新手が来るからキリがない! マムちゃんを連れながらの戦闘は、その内無理が出てきそう!
「会長! 少しの間お願いします!」
「え? どうするの?」
「こうします!」
マムちゃんをおぶさって、リボン(サニーに着けてあげようとしてた)で落ちないように縛る。これで、マムちゃんの手を引きながら動く必要はなくなったわ。
「おぉ……子守してるみたい。私もヒロユキ様との間にマムちゃんみたいな可愛い娘がほしいな~」
「くだらないこと言ってないで、来ますよ!」
「くだらなくないよ!」
充分にくだらないわ。半魚人の群れの奥に……なんかでかい奴が居るんだから! 集中してよ!
なにあいつ? 半魚人じゃなくて、下半身だけ魚の……人魚? でも、顔は白鬚のおじいちゃん。大きな槍を持ってる。あれもモンスターなの?
「ポセイドンだよ。ダンジョンに数体だけ居る、言うなら中ボスって感じのモンスターだね。前に戦ったことある」
「……勝てますか?」
「余裕だよ! 周りの半魚人は任せるからね。虎上院さん」
会長が一本の矢をつがえて、構えた。体から……光が溢れてくる。魔力がどんどん強くなっていく。
……見てる場合じゃないわ。半魚人を倒さないと!
「エレカミヴォルト!」
エレカミヴォルトは単体魔法だけど、青色属性相手なら、一体に当てれば感電して全体に伝わるから、使いやすいわ。半魚人は全滅して、ポセイドンにも私のエレカミヴォルトのダメージが伝わったみたいだけど……動きを止めないで、こっちに向かってくる。持っていた槍を振りかぶって、私たちに向かって投げてきた。しかも、放電してるじゃないの! あいつ、黄色属性だったの? だからエレカミヴォルトの効果が薄かったんだわ!
「いっくよぉ!」
会長が矢を放したのは、それと同時のことだった。
「【パワーシュート】!」
魔力を帯びて、さっきまでとは比べ物にならないぐらいの速度で、矢がポセイドンに向かって飛んでいく。飛んできた槍を弾いて、そのまま、ポセイドンの心臓を貫いた。それでも、まるで何にも当たってないみたいに速度を緩めないで、後ろの岩に矢は深く突き刺さった。すごい威力だわ……。
「虎上院さん! まだまだ来るよ!」
「わかってますよ!」
その後も、半魚人の群れは途切れることなく、向かってきた。この場に留まってたらキリがないわ! 倒しながら、少しずつ離れないと!
半魚人たちを倒しながら、無理やり突破して、なんとか岩陰に隠れた。はぁ……もう半魚人は見たくないわ……。
「ふぅ……とりあえず、落ち着いたかな?」
「……そうですね」
なんだかんだ言って、私よりレベル少し高いのよね。パーティの戦いにも慣れてるみたいだし。少しぐらい、頼りにしてもいいかも。
「マムちゃん。大丈夫?」
「うん……」
マムちゃんを下ろしてあげてから、少しだけ休憩することにした。この岩陰なら、そうそう見つかることはなさそうだしね。なにより……疲れたわ。サニーがいないから回復もできないし。慎重に進まないとね。
「疲れたね~。ヒロユキ様が居ればなぁ。あのぐらい、剣の一振りで倒しちゃうと思うのに」
「……」
会長は、前にもゲーム世界に来てたのよね? ヒロユキに助けられたって言ってたけど。そもそも……なんでゲーム世界に来たのかしら? 私みたいに、なにか目的があったの? 生徒会長をやるぐらい、周りからは優等生って思われてたなら、特別な理由がないとゲーム世界に来るなんて考えられないけど。
「……会長。一つ聞いていいですか?」
「なにかな? ヒロユキ様との思い出を?」
「違います。思い出って助けられたときの一つだけでしょ。そうじゃなくて……会長は、なんでゲーム世界に来たんですか?」
「……」
いつもヘラヘラしてた朝比奈会長が、少しだけ、真面目な顔になった。学校で見るときと……同じ顔に。
「……虎上院さんに話すようなことじゃないかな~」
「……まぁ言いたくないなら別にいいですけど」
「でも話しちゃおっと」
思わず、え? って声が出ちゃった。話してくれなさそうだったのに、急に軽い感じで話し始めたから。
「私ね……親がけっこう厳しくて。小学校の頃から家庭教師とかつけられて……勉強ばっかりしてたの。でも……不満が爆発しちゃって。中学生のとき、全部辞めて家出しちゃったことがあったの。そのときだよ。ゲーム世界に行ったのは。反抗期ってやつかな?」
それを聞いて、勝手に私は……自分と重ねてた。
小さい頃からずっと、英才教育を受けて、その環境とお父さんが嫌になって……今、家出してる私と。
「でも、ゲーム世界で死にかけちゃったときに怖くなっちゃって……家に戻ったの。それからは、親もそんなに厳しくはなくなったけど。なんかそうなったら、急に申し訳なくなってね。学校モードっていう、優等生の娘を演じるようになった」
「……コントローラーをもらうには、親の承諾が必要ですけど、家出中だったのに許してくれたんですか?」
「偽装しちゃった!」
す、すごいことをさらっと言ったわね。この人。
優等生を演じる……この人も、いろいろあったのね。生徒会長としてのこの人は……あくまで、親への罪悪感から演じてるキャラクターだったのね。
でも演じてるとはいえ……生徒会長を二年連続で務めるなんて、ふざけた人だけど、能力は確かみたいね。成績も学年で一番だし。
「虎上院さんはなんでゲーム世界に来たの? 私が話したんだから、お話してくれるよね?」
「……私はお姉ちゃんを探しに来たんです。一年前から、ゲーム世界で行方不明になってて……」
「え? そうなんだ……」
自分だけ聞いておいて、話さないわけにはいかない。そう思って、今までの私たちの経緯を全部話した。
……そういえば初めてだわ。自分の事情を、ヒロユキ以外の現世界の人間に話すって。
「ヒロユキ様は虎上院さんのお姉さんを探す手伝いをしてるんだね。優しいな~~~。ますます好きになっちゃう!」
「私にあんなことさせたんですから当然です」
「あんなこと?」
「……なんでもないです」
思い出しちゃった……ゲーム世界でパーティを組むことの代わりに、ヒロユキが私に言ってきたことを……キ、キスしたことを……。
「虎上院さん。顔赤いけどどうしたの?」
「なんでもないです!」
「見つかるといいね。お姉さん」
ふざけた笑顔じゃなくて……純粋な、見守るような笑顔だった。
……こんな顔もできるのね。この人。ていうかこれまさか……。
「……その顔。学校モードですか?」
「ばれちゃった?」
「ばれますよ。別人ですから」
騙されるところだったけどね。相手にしてると本当に疲れるわ。この人。
「……お姉さんもきっと、虎上院さんのことを心配してると思うよ」
「え?」
「お姉ちゃんってそういうものだもん! 妹が可愛くて仕方ないんだからね!」
今度は少し寂しそうな笑顔で、意味深なことを言う生徒会長。
まるで……自分のことを言ってるみたいな感じだったけど。これも学校モード? もうわからなくなってきたわ。
「……!?」
マムちゃんが耳をピクピク動かして(どうでもいいけど、これ可愛いわ)、私にくっ付いてきた。なにかに怯えるみたいに。
「ど、どうしたの?」
「……なにか……来る……」
来る……? なにが――。
そう思っていた瞬間、大波みたいな音がして、水しぶきが高く上がった。そして、体を渦みたいにうねらせながら空中を走る巨体。うそ……もしかしてさっきの!?
【リヴァイアサン 出現】
リヴァイアサン……さっきはいきなりスキルを撃たれたから、姿もちゃんと見れなかったけど……こんなに大きかったの? 大きすぎる……成体になったアカムと同じぐらいあるじゃないの。体の長さで言ったら、それ以上だわ!
「……虎上院さん」
「わかってます!」
もう一回、マムちゃんをおぶって、リボンで縛って固定してから、私たちは戦闘態勢になった。
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『おまけショートチャット』
「ところで、虎上院さんはヒロユキ様になにをさせられたの?」
「聞かない方がいいですよ。嫉妬しそうですから」
「大丈夫。私もヒロユキ様に同じことするから」
「絶っっっ対に教えません」




