ゲーム世界に三年居た俺は生徒会長に告白されました②
……えぇっと。状況を整理しよう。
奴隷の獣人の子を助けて、攻撃してきた銃士を倒そうと思ったら……その銃士がなぜか朝比奈生徒会長で……さらになぜか……。
「私と結婚してください!」
告白された。
またからかわれてるのか? そもそも、なんで生徒会長がゲーム世界に居るんだよ。
「ヒロユキ! なにやってんのよ! 早く町を出るんじゃ……え? 生徒会長……?」
「あ。こんにちは~。虎上院さん」
生徒会長が居ることに、驚きを隠せないアマノ。続いてやってきたラナとサニーも、きょとんとしてる。
「あれ? あの人……前に見たことあるよねー?」
「……向こうの世界の人間だな」
いろいろと混乱してきた。俺たちの気も知らずに生徒会長は頑なに……。
「ヒロユキ様。新婚旅行はどこにする? 二人の愛を育める場所がいいよね~」
俺と結婚するつもり……ていうかこれはもうしたつもりで居るし。からかってるわけじゃないのか? いやむしろ、からかってくれてたほうがよかった。訳がわからないもん。この前初めて会ったばっかりなのに、いきなり告白って……美人に告白されてるのに、怖いもん。
「ちょ、ちょっと……新婚ってどういう意味よ?」
「俺が聞きたいわ」
「ヒロユキ様は私と結婚するんだよ? その為に、ゲーム世界まで追いかけてきたんだから!」
この人本気だぞ。からかってなんかいないぞ。顔がマジだ。顔を真っ赤にしながら「きゃ~~~~♥」とか言ってるし。これが演技だったら恐ろしい。
「どういうことよ!? 説明しなさいよ!」
「だから俺が聞きたい……ぐえっ!? 首絞めるなって!」
俺に言っても仕方ないだろ! この人が勝手に言ってるだけなんだから! 首掴んでブンブン振るんじゃない! 外れるわ! 首が!
「虎上院さん! ヒロユキ様に乱暴しないでよ!」
「ヒロユキ様ってなんですか! なんでこいつに様なんて付けてるんですか!」
「私の騎士様だからだよ? 私を助けてくれた……騎士様……」
助けてくれた……?
いやだから……この前初めて会ったばっかりでしょ。ていうか、生徒会長……。
「あの……この前とキャラ違くないですか?」
「あれは【学校モード】だったから。先生の前だったし。本当は今すぐヒロユキ様に抱き付きたいのを抑えてたんだからね!」
えぇ……あんなに初対面オーラ出してたのにぃ? 雰囲気もいかにも生徒会長って感じだったのに。心の中ではそんなこと考えてたのかよ。まぁ別に抱き付かれること自体は全然OKなんだけど。
「学校モードってなんですか! とりあえず……ヒロユキから離れてください!」
「学校で演じてる真面目な優等生モードってことだよ。私の素はこれなの。虎上院さんこそ、私のヒロユキ様から離れてよ!」
「あだだだだっ!?」
左右から腕を引っ張られる。ちょっ……このままだと半分に裂かれる!?
美少女二人に取り合いされるとか、どこのギャルゲーだよ。リアルでやられると、迷惑極まりない。離して離して!
「アマノ。落ち着くんだ」
「ラナ! だってこの人が!」
「ヒロユキが半分に裂けてしまうぞ。せいとかいちょう……さん? あなたも一度ヒロユキから手を離してくれ」
ラナが力づくで、アマノと生徒会長を俺から引き離した。ゲーム世界でステータスが絶対だ。アマノも生徒会長も逆らえない。た、助かった……。
「……」
「……」
アマノと生徒会長が、じっと睨み合ってる。女の戦いって怖っ……背中がぞくっとする。
【ハス】 職・銃士
Lv51
力 1
体力 20
素早さ 120
知力 1
技 163
武器 スナイパーボウ 攻撃力 200
防具 射手の制服 防御力 100
装飾品 鷹の御守 攻撃速度+10%
生徒会長はそれなりにレベルがあるぞ。俺を追いかけてきたとか言ってたけど……一日二日で到達できるレベルじゃない。かなりゲーム世界で冒険してたはずだ。この人……一体なんなんだ?
「ユッキー」
サニーが俺の服を引っ張ってくる。あ……そうだった。生徒会長のこともあるけど、まずはこの子を連れて町の外に出ないと。
「とにかく、町の外に出よう。生徒会長もいいですね?」
「ヒロユキ様とならどこまでも♥」
「手を握らないでください!」
あの……静かにしてくれませんか? いちおう、騒ぎを起こした後なんだからね?
ミ☆
町を出て、湖の畔にある旅人用の小屋まで逃げてきた。町からだいぶ離れたし。後は着けられてない。ここまで来れば大丈夫だろ。
「ユッキー。お昼ご飯食べられなかったね……」
「食料はそこそこあるから、適当に料理して食べようぜ」
「私がやろう」
食材を道具袋から出して、簡単な料理を作り始めるラナ。一人旅が長かっただけに、ラナは料理がけっこう得意みたいだな。手慣れてる。前に作ってくれたおにぎりも美味かったし。最低限の料理道具も持ち歩いてるみたいだ。
「あなたもお腹空いたー?」
「……」
獣人の子は、ニット帽で耳を隠している。もう見えちゃったから、意味ないけど
獣人ってだけで、人間は嫌悪を抱く場合が多いからな。俺たちのことも、警戒してるみたいだ。お腹は正直で、グーグー鳴ってるけど。
「お菓子食べるー? 美味しいよー」
「……」
サニーが手渡したチョコレートを、恐る恐る口にする。でも、一口食べてしまったら。
「――!?」
止まらなかった。あっという間に、チョコレートを食べきる。
「お名前はー?」
「……マム」
「マムちゃんかー。飲み物もあるよ。飲むー?」
「……うん」
……マムちゃん? 女の子だったのか。子供っていまいち性別がわかりづらいよな。サニーはよくわかったな。
さて……マムのことはサニーにとりあえず任せておいて……。
「……」
「……」
俺はこっちをなんとかするか。いつまで睨み合ってるんだ。この二人は。
「ヒロユキは私とパーティを組んでるんです。リーダーの私の許可なしに、連れて行こうとしないでくれませんか?」
「別に虎上院さんはヒロユキ様と付き合ってないんでしょ? だったら、そんなことを言う権利はないと思うけどな」
「付き合ってるとか関係ありません! パーティメンバーのことについての決定権はリーダーにあります!」
「じゃあ現世界に戻ったら、ヒロユキ様をもらってもいいんだね」
「駄目です!」
「理屈が通ってないじゃない」
「屁理屈を言ってるのはあなたでしょ!」
会話が平行線だ。このままじゃ拉致が開かない。頭が良い者同士の会話とは思えないぞ。確か生徒会長は、期末テストで学年一位だって晃が言ってたし。
まぁとりあえず、結婚云々の話は置いておいて……生徒会長の話を少し聞いてみよう。
「生徒会長」
「ハスって呼んでよ~。ヒロユキ様♥」
「……ハスさん」
「呼び捨てがいい~。敬語もやめていいよ!」
やべぇ。面倒くせぇこの人。駄々っ子かよ。
「……ハス。俺と前に会ったことあるのか?」
「あるよ。二年ぐらい前に……ゲーム世界で助けてもらったの」
二年ぐらい前? えぇっと……俺が現世界に戻る半年前ぐらいか。
なにやってたっけな……その頃。レベル上げ……いや、裏ダンジョンで魔人を倒してた頃かな?
「ボスモンスターに襲われて……パーティが壊滅しそうになったとき。リーダーは一目散に逃げちゃって、他のメンバーも怪我で動けなくて、私は……一人でどうすることもできなかったの。でも、そのときに……私の騎士様が現れたんだよ~~~~~♥」
……ボスモンスター。そういえば、ボスモンスターを馬鹿みたいに倒しまくってたときがあったな。ストーリー上のボスモンスターじゃなくて、フィールドとかダンジョンに時間経過でループ出現するボスモンスターが居るんだ。
「ヒロユキ。そうなのか?」
「……正直、覚えてない。一時期、ボスモンスター狩りにはまってたから。そのときついでに助けた形になったのかもしれないけど……」
それを騎士様って言われてもな……俺はボスモンスターのドロップ目当てで倒しただけなのに。
結果的に、命を助けた形になったわけか。だからってこんなに俺に惚れる? 一目惚れってやつか。その好意は純粋に嬉しいけどさ……。
「その後、私はゲーム世界で戦うのが怖くなって……現世界に戻って、冒険を辞めたの。でも……私を助けてくれた騎士様のことが忘れられなくて……そのときだよ! 学校で……ヒロユキ様を見つけたのは!」
俺が現世界に戻ってきてからの話か。会ったって自覚はなかったけど、同じ学校に通ってるなら、どっかで無意識に会っててもおかしくないか。二年生から生徒会長をやってたなら尚更だ。
「これはもう運命としか思えなかったもん! 私とヒロユキ様は……結ばれる運命だったんだよ~~~~♥」
「運命とか馬鹿みたいなこと言わないでください。生徒会長のくせに」
「生徒会長は学校モードの私だもん。今の私は……ただの恋する乙女だよ!」
俺にウインクをしてくるハス。アマノの嫌味にも怯まないところはすごいよ。この二人……相性最悪だな。
「ヒロユキ様が、またゲーム世界に行ってたから……私も勇気を出して、ゲーム世界に来たんだ! ヒロユキ様はやっぱり……あのときと変わらず強かったから……もう結婚するしかないと思って!」
結婚するしかない状況なんてないと思うんですけど……。
じゃあさっきの攻撃は、俺を試すための攻撃だったってことか。おいおい……俺じゃなかったら死んでるぞ? めっちゃ顔面を矢で狙ってたし。
……ていうか誰から漏れたんだ? 俺がゲーム世界に行ってるってこと。
「なんで俺がゲーム世界に行ってるってわかったんだ?」
「……? ずっと見てたから。虎上院さんとコントローラーを使う所もね」
すげぇことをさらっと言ったぞ。この人。
ずっと見てたって……いつからだよ! 怖いよお母さぁん!
「というわけで、ヒロユキ様……私と結婚しよ?」
「というわけじゃないですよ。頭沸いてるんですか? いきなり告白してOKが出るとでも思ってるんですか?」
「それは虎上院さんが決めることじゃないもん。ね? ヒロユキ様」
これは……どうするのが正解なんだ? 俺はどうすればいいんだ? 期待を込めた目で見てくるハス。睨みの目で見てくるアマノ。究極の選択……。
「ヒロユキ様。私……夜のお世話もちゃんとできるよ♥」
「マジすか!?」
「子供の前でなに言ってるんですかっ!? ヒロユキも反応するな! もがれて死ね!」
もがれてってなにをだよっ!? まさか俺の息子のことじゃないだろうな? 怖いこと言うんじゃないよ!
「断られたら…………ヒロユキ様を殺して、私も死ぬしかない……」
こっちはこっちで、なんか怖いこと言ってるし。
やばい……二人が詰め寄ってくる……これは返答によっては殺られるんじゃないか? ダブルの意味で。この世界では殺られないだろうけど、現世界に戻ったあと危ない。怖い……怖いよぉ!
「……昼食ができたが、取り込み中か?」
「いえ。全然! さぁさぁ! 昼食にしよう!」
「アマノもとりあえず食べたらどうだ? せいとかいちょうさんも、よければ一緒に食べてくれ」
とりあえず、逃げることにした。うやむやにして後回しにしよう。それが、今最善の選択だ。
「も~~~……ヒロユキ様ったらもったいぶるんだから」
「頭の中がお花畑で羨ましいですね」
ぶつぶつ言いながらも、二人は食卓に着く。簡素なテーブルと椅子だけど、食事をとるだけなら充分だな。ラナが作った野菜の入ったスープと、オムライス。おぉ……美味そう。
「……なんでヒロユキの隣に座るんですか?」
「虎上院さんこそ、私のヒロユキ様の隣に座らないでよ」
「ヒロユキはあなたのじゃありません」
「私のだよ?」
「……」
「……」
食事のときぐらい、静かにしてくれませんかね? どこに座るとかどうでもいいでしょ。俺は言い争う二人に挟まれる形になってるんだから。一番辛いの俺なんだぞ。
「ユッキー。マムちゃん、どうしようか?」
ラナの作った昼飯を、ガツガツと食べるマム。まともな食事を与えられてなかったんだろうな……すごくやせ細ってる。食べ盛りの年頃だってのに。
「んー……獣人ってことを考えると、もしかしたら……首都でやってる闘技大会に連れて行かれる所だったのかもな」
「珍しい種族を賞品にしている……と言っていたな?」
マムは獣人だ。普通に売買されても、かなりの値段になる。武器防具屋の主人の話が本当なら、賞品として首都に連れて行かれる途中だったのかもしれない。
「……!?」
首都。それを聞いて、マムの耳がピクピクと動いた。
「しゅと……首都! 首都に行かないと……」
「どうしたのー? なんで首都に行きたいの?」
「……お姉ちゃんが……首都に連れて行かれたの……それで私……逃げて誰かに助けを……」
首都に姉が連れて行かれた? マムの姉ってことは、獣人だよな?
獣人の女の子……ってことは、それこそ、闘技大会の賞品のために連れて行かれたのかもな。
「……お願い……お姉ちゃんを……助けて……誰も助けてくれないの……お兄ちゃんたちにお願いするしかないの!」
【クエスト 奴隷商の闘技大会 開始】
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『おまけショートチャット』
「ヒロユキ様! 結婚したらどうやって愛を育む? とりあえず……夜のお世話からしようか?」
「お願いしま……(殺気を感じる)」
「……その先の言葉によっては、あんたのをもぐから。女になって死ね」
「その死に方はもはや意味がわからないぞ」




