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ゲーム世界に三年居た俺は生徒会長に告白されました①

「エレカミヴォルト!」

「【セイントスター(聖なる星)】!」


 アマノとサニーが詠唱した魔法で、ブルークラブ(青くてでかい蟹)の集団は蹴散らされた。エレカミヴォルトで痺れさせてる間に、全体魔法のセイントスターで一網打尽。セイントスターは白色中級魔法。セイントオーブの上位魔法だ。サニーも中級魔法を覚えてきたから、充分に戦力になってる。


「ツイン・ソニックブレイド!」


 中心に居たビッグボスクラブ(さらにでかい蟹)を、ラナの二連続斬撃が切り裂く。ラナにとっては、この辺りの敵はレベル的には格下だ。問題なく倒せる。


【魔物の群れを倒した】


 朝からゲーム世界に行って、ブルーアのフィールドで夕方まで狩り続けるのスタイルを三日続けてる。ブルーアのフィールドは、青色属性のモンスターが多い。黄色属性の雷と相性が良い。アマノは青色以外の中級魔法もそれなりに扱えるようになってきた。




【アマノ】 職・マジックユーザー

Lv47

力     1

体力   20

素早さ   1

知力  173

技    90



 アマノは知力優先の火力型。技は詠唱を最低限の速度にできる程度。火力特化……アマノにぴったりの型だな。




【サニー=アカムレッド】 職・ヒーラー

Lv45

力     1

体力   20

素早さ   1

知力  133

技   120



 サニーは知力と技の二極特化。支援役は、詠唱速度が大事だから、アマノに比べると、技も知力と並行してあげてる感じだ。




【ラナフィス=ルミナシア】 職・双剣士

Lv78

力   195

体力   85

素早さ  85

知力   10

技    60




 ラナは力優先の打撃火力特化。剣士系はこの型が主流だ。力を上げて攻撃力を確保。体力と素早さは大体同じぐらいで調整して、技は最低限攻撃が当たる程度。




 こんな感じか。レベル上げに集中したおかげで、かなり上がったな。アマノとサニーも、上級職が視野に入ってきた。


 となると……次は装備か。レベルが45を超えたし。そろそろブルーアの町で売ってる武器防具が装備できる。


「そろそろ町に行ってみるか……ここから近い町はと……」

「【ゴンサ】だな。ここからなら、一時間もかからずに着く」

「……ゴンサか」


 あの町か……ブルーアの中でも、首都への通り道だから個人的には……まぁいいか。装備をそろえれば、戦闘が楽になる。それを優先しよう。


「時間的には、今お昼ぐらいかしら?」

「じゃあ町に行ったらご飯だねー」


 呑気だなぁ。これから行く町がどんな町か。アマノとサニーは知らないもんな。


 ブルーア国は、治安の悪さで言ったら、クロックよりも上だ。クロックは、なんだかんだ言って黒の女王って存在が、国の治安を守ってたんだ。何かやれば、黒の女王に消されるってな。


 でもブルーア国は違う。


 ……まぁ。おいおい二人には説明しよう。





ミ☆





 【ゴンサ】。


 普通、町の入り口には警備の兵士が立ってるもんだけど……ブルーア国の町は、首都以外は基本的に見張りの兵士はいない。


「……なんかおかしくない? この町」

「なんか楽しそうじゃないねー」


 さすがに、アマノとサニーも、町の雰囲気の悪さに気が付いたみたいだ。


 活気って物が感じられず。町のいたる所に、ボロボロの服を着た人が死んだような目で座り込んでいたり、寝ころんでいたり……中には子供も居る。一見すれば異様な光景だけど、ブルーアではこれが当たり前の光景だ。


「ブルーアはな。奴隷が合法的に認められてるんだ」

「ちょっとまってよ! 奴隷ってなによ!」

「そのまんまだよ。人間を奴隷として売り買いしてるんだ。町のあちこちに居るのは……奴隷としてこれから首都で売られる人達だ。満足に食べ物も与えられない。ゴンザは首都への通り道だから、奴隷の数が多いんだ」


 だからブルーアは嫌いなんだ。胸糞悪い光景だけど……ブルーアの国王が奴隷を認めてるから、どうにもならない。それこそ、これを変えるには……国王を倒すぐらいのことをしないとな。


 それにしても……首都への通り道ってことを考えても、なんか奴隷の数が多い気がするな。


「……子供も居るよー。お腹空いてるのかな……なにか食べ物をあげようよー」

「サニー。やめておいたほうがいい」


 サニーの優しさはわかる。誰だってこの光景を見たら、そう思っちまうだろう。


「ブルーアでは、これは当たり前なんだ。だから奴隷の人達に対して……そんな情を持ったら駄目なんだ。全員を助けるなんて無理だからな。目の前の人だけ可哀想だから助ける。それじゃキリがないんだ」

「……なによそれ」

「最低なこと言ってるのはわかってる。でも……奴隷ってのはそういうもんなんだよ」


 アマノとサニーの背中を押して、武器防具屋に入る。

 あんまり町をうろうろしてると、面倒ごとに巻き込まれるからな。さっさと用事を済まして、こんな町は出よう。


 武器防具屋に入ると、町中に居る奴隷とは全く違って、羽振りの良さそうな主人が俺たちを出迎えた。


「いらっしゃいませ。なにかお探しで?」

「マジックユーザーとヒーラーの武器防具を適当に見せてくれる?」

「はいはい。たくさんございますよ」


 主人がいくつかの候補を並べて見せてくれる。奴隷商法のおかげって言うのも癪だけど……奴隷を売るのと同時に、資材や武器防具も仕入れてくるから、物流はかなり良いんだ。なかなかの装備が揃ってる。


「アマノ。サニー。性能はもちろんだけど、自分で扱いやすいのを選んだほうがいいぞ」

「……そんなのわからないんだけど?」

「難しく考えるな。持ちやすいとかその程度でいいんだよ。とっさのときにそれ一つで大きく変わるぞ」

「ほう……そちらのお兄さんは、なかなかわかっていますね」


 それなりに熟練した冒険者なら、これは当たり前だ。性能が良くても、自分に合ってない武器もある。それを無理やり使っても、いざって時に武器を取りこぼしたりする。自分に合った武器を探すのも、冒険者の経験だ。


「主人。以前よりも、奴隷の数が多くなっていないか?」


 アマノとサニーが装備を選んでる間、ラナが町の様子について主人に聞いていた。俺と同じことを思ってたみたいだな。


「ああ……なんでも、首都にある闘技場で、珍しい奴隷を賞品にして闘技大会を開催してるらしいですよ。そのせいで……奴隷を大量に仕入れて、選別してるみたいなんです。賞品に使える珍しい種族はいないかとか……」


 そういえば、ブルーアの首都の中心に大きな闘技場があったな。

 珍しい種族の奴隷を賞品に? ったく……くだらないこと考えるな。

 確か……亜種とか獣人だと、一人で何十万から何百万するんだっけ? 種族によって優劣つけるとか、命を金としか見てないな。


「主催者は……やはりゴルディオか?」

「おぉ。よくご存じで。そうです。奴隷商法の総責任者のゴルディオですよ」


 出たな。ゴルディオ。


 ゴルディオは、ブルーアの国王と結託して、奴隷商法を国中に広めた張本人。今や国で取引される奴隷はほぼ全て、ゴルディオの息がかかってると言われても過言じゃない。他の国からも人間をさらって、奴隷にしてるって聞いたことがある。


「いやぁしかし……実際、迷惑な話ですよ。他の国の方は、奴隷商法を嫌っていますからね。奴隷が町に増えたせいで、お客さんが減って減って……」

「……」

「アマノ。落ち着け。別にこの主人が奴隷商法やってるわけじゃないから」


 アマノが主人をめっちゃ睨んでる。気持ちはわかるけど、この主人に当たってもなんにもならないぞ。


 選別……か。ゴルディオア主催の闘技大会ってことは、今この町に……ゴルディオの部下が居るってことか。面倒なことに巻き込まれないように、装備を買ったらさっさと町を出るか。




【アマノ】 職・マジックユーザー

Lv47

力     1

体力   20

素早さ   1

知力  173

技    90


武器  流水のステッキ   魔法攻撃力 180

防具  魔導石ローブ    防御力   110

装飾品 水面リング     魔法攻撃力+10% 魔法詠唱時間減少




【サニー=アカムレッド】 職・ヒーラー

Lv45

力     1

体力   20

素早さ   1

知力  133

技   120


武器  魔法のピコピコハンマー   魔法攻撃力 150

防具  ブルーワンピース      防御力   120

装飾品 十字架のリボン       回復魔法の効果アップ




 よし。これでだいぶ戦力は上がった。この辺のモンスター相手にも、戦いが楽になるはずだ。この調子でレベルを上げて行こう。


「ラナはいいの? 装備買わなくて」

「私はこのままでいい」


 自分たちだけ装備を買うのが悪かったのか、ラナに気を使うアマノ。

 でもまぁ……ラナはむしろこの店で装備を買うと、弱くなる。


「ラナの装備はダンジョン装備だろ?」

「ああ。そうだ」

「だったらしばらくはそのままで充分だ」

「ダンジョン装備ってなによ?」


 その辺の説明はしてなかったな。装備ってのは、大きく分けて二種類あるんだ


「ラナの装備は、ダンジョンにランダムで宝箱に入って設置されてるダンジョン装備。ダンジョンでモンスターがドロップする装備もこれに該当するな。んで、普通に町で売ってる店売り装備。装備はこの二種類あるんだ。ダンジョン装備のほうが、性能は高い」

「え? だったら、私とサニーもダンジョン装備のほうがいいんじゃないの?」

「上級職になるまでは、店売りで充分だ。ダンジョン装備は性能が高いから、基本的にレベル60以上じゃないと装備できないしな」


 ちなみに、俺のはダンジョン装備とかの次元じゃないけどな。裏ダンジョンの魔人から奪い取った魔剣エクスキューショナー(ドロップしたのかどうかは知らん)。色洞窟の大精霊を倒して奪い取った無色の宝衣(ドロップしたのかはやっぱり知らん)。一つの職を最高レベル(1000)まで上げると特典でもらえる限界突破の腕輪。もはや何装備と言えばいいのかわからない。


「だから、アマノとサニーはまず上級職になることだな」

「面倒ね……」


 面倒言うな。ゲームで時間がかかるなんてのは当たり前のことだ。根気が大事なんだよ。


 武器防具屋を出ると、冒険者が物珍しいのか、奴隷の人達が、俺たちに興味の目を向けてきた。もしくは……なにか集ろうとしてるのか。さっきアマノたちに言った通り、全員に恵んでたらキリがない。早くこの町から出よう。


「行くぞ。早く町を出ないと、面倒ごとにでも巻き込まれたら……」



「逃がすな! 獣人のガキだ! 商品を逃がしたなんて知られたら、俺たちもただじゃ済まないぞ!」



 ほーら。出たよ。面倒ごと。


 数人の男が、ニット帽を被った子供を追いかけて、こっちに走ってくる。おいおい……子供相手に剣を抜いてるぞ。物騒だな。


「あうっ!?」


 子供が石に躓いて、転倒した。その拍子で、ニット帽が外れる。その頭には……。


「……ヒロユキ。あの子供……獣人のようだぞ」

「……みたいだな」


 獣人ってのは、基本的にはモンスターの分類だ。でも……希少だけど、種族として繁栄してる獣人も居るんだ。見た目はほとんど人間と変わらない。違うのは……。


「捕まえろ! 猫耳のガキだ! 貴重な商品だぞ!」


 部分的に、獣の特徴を持ってるってことだ。あの子供は……猫の獣人みたいだな。


 明らかに、あいつらはゴルディオの部下だ。如何にもって感じの強面だし。手を出せば、ゴルディオにケンカを売ることになる。スルーしたほうが面倒ごとに巻き込まれないか……。


「ウォタルバブル!」


 相変わらず許可なく突っ走るな。おい。


 男たちが子供を捕まえようとした瞬間、アマノが詠唱した水弾が、広がって男たちを弾き飛ばした。


 あーあ……やっちまったよ。


「なんだお前!? 邪魔する気か!」


 ウォタルバブルが当たらなかった数人の男が、アマノに向かってくる。もうやっちまったんだ。どっちにしろ同じか。


「ぶげっ!?」

「ぎゃあっ!?」


 俺の蹴りと、ラナの剣一線(峰撃ち)で、残りの男たちが吹っ飛んだ。他にも仲間が居るかもしれないな……奴隷を選別してるって言うなら、この程度の人数なわけないし。


「面倒なことになったな……アマノ! お前が突っ走るからだぞ!」

「よく言うな。アマノが魔法を詠唱しなかったら、ヒロユキが剣を抜いていただろ?」


 ばれてた。


 アマノがウォタルバブルを詠唱する直前、俺も実は男たちを攻撃する体勢になってたんだ。突っ走ろうとしたのはお互い様か。


 サニーが倒れてる子供に駆け寄って、助け起こす。見た感じ……サニーよりも小さいか? 五歳ぐらいに見えるその子供は……ボロボロの白い服一枚を身にまとった状態。この子も、奴隷みたいだ。


「大丈夫ー?」

「うん……平気……」


 まだ周りに仲間が居るかもしれない。こういうときは……こっちから威嚇しておいたほうがいいな。エクスキューショナーを抜いて、地面に突き刺すのと同時に、魔力を込める。


「――!?」


 魔力が広がっていく。これは【魔咆哮】ってスキルで、魔力を咆哮みたいに響かせて、敵を威嚇できるんだ。自分より弱いモンスター相手に使うスキルだけど。人間相手にも通用する。


「……死にたい奴だけ前に出ろ。死にたくなけりゃ黙って引っ込んでろ」


 ついでに声でも威嚇。これだけ脅せば、まともな思考の奴は出てこないだろ。命知らずな奴以外はな。今のうちに、さっさと町を出よう。


「ラナ。その子を頼む。このまま町を出て、今日のところは――」


 ラナに指示をしてる途中、風を切る音に振り返る。同時に、俺に向かってくる……一本の矢。


「おっと」


 俺にとってはスローモーションだけどな。片手で矢を受け止める。


 ……誰だ? 俺の魔咆哮の範囲外に居たのか? それとも命知らず? 神眼で矢を撃ってきた人間を探す。


【??? 職・銃士】


 居た。銃士は銃だけじゃなくて、弓も扱える。かなり遠くだな……この距離を狂い無く当ててきたってことは、それなりのレベルか。


「ウインドスカイ」


 ウインドスカイを詠唱して、空中を走る。俺が接近してることに気が付いた銃士は、その間も矢を撃ちこんできたけど、ひょいひょいと避ける。空中じゃさすがに狙いが定まらないだろ。ウインドスカイのレベルを上げて一気に加速。顔は深くかぶったフードで見えないけど、あいつだ。矢を撃たれる前に弓を掴んで、そのまま胸元を掴んで地面に押し倒す。


「……なんの真似か知らないけどな。俺に手を出すってことは、それなりの覚悟ができてる……」


 ……あれ?


 掴んだ胸元が……柔らかい……。


 とっさに手を離した。こいつもしかして……女? 胸触っちまった!?


 じゃないよ。俺に攻撃してきたんだからそれは不可抗力だ。正当防衛だ。


「……二年前と変わらず、強いんだね」


 ……ん? この声……最近どこかで聞いた気が……。


 地面に倒れた拍子で、深くかぶってたフードが外れる。お、おいおい……この人……。


「奴隷の子供を迷いなく助ける……素敵……格好良い……♥」


 ……生徒会長?


 な、なななななんで生徒会長がゲーム世界に居るんだよ!?


「やっぱり。私の気持ちは決まってる……君以外に考えられない……ヒロユキ様……」


 ……ヒロユキ様?


 なんかこの人……この前とキャラ違くない?


「私と……結婚してください!!!」

「……は?」


 いきなり。生徒会長に告白されました。










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『おまけショートチャット』


「サニーは装飾品を交換しないのか?」

「これは……お母さんの形見だからねー」

「ごめんなさい。地雷踏んでしまいました」

「じらい……? 知ってる! 爆弾のことだよね! さすがユッキー! 爆弾踏んでも全然平気なんだね!」

「違うけど。もうそれでいいや……」

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