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ゲーム世界に三年居た俺は水着イベントフラグが立ちました③

 ……そういえば。当たり前っちゃ当たり前なんだけど。


「……海ってめちゃくちゃ久々に来たな」


 小学生以来じゃん。よく考えたら。ゲーム世界に三年居たから。


 そりゃ水着も小さいわけだ。最初は別に新しく買わなくてもいいやって思ってたけど、小学生のとき着てた水着なんて着れるわけない。ゲーム世界に居た時差ボケ? 違うか。


「僕は去年も来たけどね。ギャルゲーの聖地を巡りに」

「聖地?」

「ギャルゲーの舞台になった街にあった海だよ。聖地巡りは僕の趣味だからね」


 全然わからん。お前の考えることは。そういえばネットで聖地って言い方は聞いたことある気がするけど……。


 朝から瞳姉の車……には乗り切れなかったから、レンタカーで海に出発。一時間ぐらいで行ける観光地。そこの海水浴場だ。夏休みだけあって、学生っぽい奴らが多いな。天気も良いし。絶好の海水浴日和。


 俺と晃はすぐに着替え終わったんだけど……女どもが全く来ない。着替えにどんだけ時間かかってるんだよ。パラソルもとっくに組み立て終わったし。晃と二人で先行して海に行ってヒャッホー! なんてやる気がしないから、せっかくの海でぼーっとしてるだけっていう訳のわからない感じになってるんだぞ。


 …………暇だ。


「……なぁ晃。朝比奈生徒会長ってどんな人なんだ?」

「え? ……浩之。まさか虎上院さんってものがありながら、生徒会長のことを……」

「ちげぇから。天乃と俺はそんなんじゃないし。純粋な興味心だ」


 朝比奈蓮。正直言って、俺は名前すら知らなかった。さぼり魔の俺にとって、学校の生徒会長なんて雲の上の人間。どうでもよかったからな。


「どんな人って言っても、そのまんまだよ? 昨日言ったじゃん。才色兼備の優等生。弓道で県大会にまで行ってるし。真面目を具現化したみたいな人だよ」

「……」


 真面目を具現化したみたいな人……ね。


 そんな人が……初対面の人間をからかったりするか? なんか違和感がある。


 まぁ別にどうでもいいんだけどさ。


「あ。女神たちが来たよ」

「女神って……大げさなんだよ」


 こいつは女にフィルターかけて見すぎなんだよ。二次元と違うんだぞ? 現実に女神みたいな女なんて居るわけ……。


 ……………………………あれれ? 女神がいっぱい居るぞ?


「おまたせー」

「ユッキーたち早いねー」

「……みずぎ。なかなか動きやすいな」

「あ、あの……私も着替える必要あったのでしょうか?」


 瞳姉を先頭に、女神たちの行進だ。


 瞳姉……我が姉ながら、ものっすごい武器を持ってるな(もちろん胸のこと)。スタンダートな黒いビキニが眩しい。スタイルが良いと、ああいうシンプルな水着が似合うもんだな。


 そしてサニー……ワンピースタイプの水着で、白生地に赤い花がデザインされてる。下はスカートで、動くたびにフリフリ動いて……可愛い(子供的にだぞ?)。


 次にラナ。なんだっけ……ハイネックって言ってたかな? 上は黒色のシンプルデザインで、下は青色にカラフルなボーダーが入ってる。一見、下着みたいで少しドキッとした。そして瞳姉に負けず劣らずの武器を持ってる(もちろん胸です)。


 ……カンナさん。青のビキニに白いキャミソールがセットになった水着で、下も花柄のショートパンツっていう、ちょっと清楚な感じで、カンナさんにぴったりな水着だ。花の付いた麦わら帽子も似合ってる。そして……意外と良い武器をお持ちで(言わずもがな胸のこと)。


 そして……天乃……。


「……なによ?」


 黄色のフリル付きのブラ。同じく黄色で両脇にリボンの付いたショーツ。見た目は文句なしの美少女だけあって、正直、どんな水着でも似合うから、特別な感想はない。まぁ純粋に可愛いとしか言いようがないな。あれ……? 馬鹿な……胸が少し大きく見えないか? あ。フリルのおかげか。盛ってるのかと思った。腰ほっそいなこいつ……折れそうなぐらい細い。これで胸と尻がもう少し大きければ……。


「……」

「あの……天乃さん? 無言で俺の顔にビーチボール押し付けるのやめてくれませんかね?」

「人の水着姿見て、なんか失礼なこと考えてなかった?」


 被害妄想はやめてください(実は考えてたけど)。


「いや。可愛いから見惚れてただけだって」

「!? か、可愛い……? なに言ってんのよ! 馬鹿! サメに噛まれて失血死しろ!」


 褒めたのになんで罵倒されんねん。サメに襲われるとか海に入るの怖くなっちゃうだろ。


 ていうかこいつ、顔赤くなってない? 日射病じゃないだろうな? はしゃぎすぎてんじゃないのか?


「お前、顔赤いけど大丈夫か?」

「ち、近づかないでよ! 変態!」


 近づいただけで変態扱いって酷くない!? 俺の存在自体が変態ってことかよ! 人権侵害だ!


 天乃はプリプリ怒りながら、サニーの手を引いてさっさと海の方に行っちまった。待っててやったのに、先に行くとか自己中極まりないな。


「パラソルありがとね。カンナちゃんは大丈夫? 海に入るの初めてなんでしょ?」

「少し怖いですけど……水が塩辛いんですよね? 水の動きも……少し怖いです」


 波を見て、少し不安そうなカンナさん。今日はそんなに波は高くないけど、ときどき、それなりに大きな波が来るときがある。海が初めてだと、確かに怖いかもな。


「習うより慣れろ! さぁさぁ! 入ってみましょう!」

「あ、あの! 引っ張らないでください!」


 瞳姉に引っ張られて、カンナさんがわたわたと海の方に走って行った。病み上がりなんだから、あんまり無茶させないでほしいんだけど……。それから習うより慣れろって、あんまり教師の言葉ではない気がする。


「浩之。荷物は僕が見てるよ」

「あれ? お前入らないの?」

「ここからズームで思い出を記録するのが、僕の仕事さ」


 デジカメを構えて、ドヤ顔の晃。すでに、ラナの水着姿を何枚も激写してたのを、俺は見逃してない。そもそも、こいつが海に来た理由の七割はラナの水着姿だろうし。


 ……そういえばこいつ、あんまり体動かすの好きじゃないんだよな。海になにしに来たんだよ。


「まぁいいや。じゃあラナ、行こうぜ」

「……つ、冷たくないのか?」

「海は淡水に比べたらだいぶマシだぞ。今は夏だし」

「たんすい……?」

「いいからいいから」

「お、押さないでくれ!」


 ラナの背中を押して、無理やり海の方へと押しやる。瞳姉じゃないけど、習うより慣れろだ。最初は冷たいかもしれないけど、すぐに慣れる。


 ……あれ? 今更だけど…………何気に俺、めっちゃ楽しんでるじゃん。





ミ☆





「気持ちいいねー」

「サニー。まだ足は着く? 着かなくなったら私に抱き付くのよ」


 抱き付く必要はない。掴まれば充分だ。


「……カンナさん、大丈夫?」

「は、はい。うきわと言うものを借りたので……」


 カンナさんは波の衝撃に耐えられないで何回も水没してたから、今は浮輪を装備してる。これなら沈む心配はないけど……今度はそのまま波にさらわれそうで怖い。よく見てないとな。カンナさんを海に引っ張り込んだ張本人は、沖の方でめちゃくちゃ泳いでるし。瞳姉。水泳も得意だもんな。


「ヒ、ヒロユキ……なんだこれは? どうしてこんなに揺れるんだ?」

「海の中はそんなもんだけど……」


 ラナは海に入ること自体が初めてだから、波のせいで思うように動けないことに、恐怖を感じてるみたいだ。さっきから、俺の腕を離そうとしない。こんなに弱々しいラナは、初めて見た。可愛いもんだ。


「ひあっ!?」

「な、なんだ。どうしたラナ……」

「……な、なんでもない。なにか踏んだだけのようだ」


 びっくりした。いきなり抱き付いてくるから。


 ……胸当たってた。これが俗に言う、ラッキースケベってやつか!


「浩之! ラナに手を出すんじゃないわよ」

「俺が手を出してるように見えるのか?」

「ラナ! 浩之になんかされたらグーパンよ!」

「なにもしてねーっつーの!」


 ラナのグーパンとか食らったら、俺は一撃でKOだ。余計なことを吹き込むんじゃない。ラナは天然だから、本当にやるかもしれないだろが。グーパンすればいいのか? ぐらいのノリで。


「ユッキー。アッキーは遊ばないのー?」

「あいつはあれで楽しんでるから問題ない。見ろよ。あの嬉しそうな顔」


 パラソルの下で、鬼のようにシャッターを切る晃。こっわ。傍から見るとやばい奴だぞ。あ。監視員に怪しまれて話しかけられてる。必死に説明してる。友達を撮ってるだけとでも言ってるんだろうな。俺たちのほうを指さしてる。いちおう、手を振っておいてやるか。どうやら解放されたらしい。あのまま監視員に連れて行かれるのも面白かったけど。


「す、すまない浩之……私がくっ付いてるせいで、自由に動けないだろう?」

「むしろウェルカム」

「……?」


 は。つい素直な気持ちが出ちまった。天乃がめっちゃ睨んでる。


 でも実際、気にする必要はない。海ってのは、大勢で入ってるだけでも楽しいもんだ。海に慣れてない、サニーとラナとカンナさんがむしろ微笑ましい。


「もう少し向こうに行ってみたいなー」

「それならサニーも浮輪借りてきたほうがいいぞ。足が着かないだろうし」

「私が抱っこしてあげるわ!」


 煩悩全開だな。こいつ。いくら海の中だからって、サニーにべたべたしすぎだろ。


 でも、サニーは身長的にも、浮輪はやっぱりあったほうがいいと思う。何があるかわからないし。海に慣れてないから尚更だ。後で休憩がてら、サニーの浮輪も借りてこよう。


「アマノン。ここは足が着くよー?」

「駄目よ。ギリギリでしょ? 私が手を繋いでないと、大きな波が来たら危ないわ」


 けっこう余裕そうに見えるけど? 水嵩、サニーの肩より下だけど? お前が手を繋ぎたいだけだろうが。少しはサニーの自由に遊ばせてやれ。


 まぁ天乃の言うことも間違いじゃないけど。大きな波が来たら、体の小さなサニーなんか一瞬で沖に……。


「あ」


 俺が声を出したときには、もう遅かった。


 かなり大きな波が……俺たちに覆いかぶさるようにして、ぶち当たってきた。間違いなく、今日一番に大きな波だ。一瞬で、視界が水中に染まる。


「――ぶはっ!?」


 俺は水中で体勢を直して、すぐに海面に出た。

 あぶねっ……油断してた。水中を一回転したぞ。今。今日初めての水没だ。いやぁ。びびったびびった。


 俺以外は大丈夫か? 慌てて周りを探す。


 カンナさんは浮輪があったから、波の勢いで波打ち際まで流されてるけど、無事みたいだ。晃が慌てて駆け寄って救出してる。


「ラナ!」


 浅瀬で尻もちを着いてたラナを助け起こす。ずいぶん、波で流されたみたいだな。


「だ、大丈夫だ……油断していた……次は負けない……」


 勝ち負けの問題じゃないけど。その心意気はまぁよし。

 確かに、少し咳き込んでるけど、全然大丈夫そうだな。ラナは身体能力高いからな。このぐらいで怪我なんかしないか。


 えぇっと……あとは……天乃とサニーだ!


 俺とラナから少し離れたところで、天乃は必死に周りをキョロキョロと動き回ってた。おいおい……一体なにを探して……。


「サニー! サニー!? どこ!? どこにいるの!!!」


 なにを探してるか。そんなことは決まっていた。


 サニーの姿が……見当たらない。










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『おまけショートチャット』


「こうして水着美女が並ぶと、壮観だな。みんな良い物持ってるし。一人を除いて」

「……その一人って誰のことかしらね?」

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