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ゲーム世界に三年居た俺は性悪女王にケンカ売られました④

「……」


 なるほどな。


 俺たちを引き入れる云々は、あくまでついでの目的。


 こいつの本当の目的は……神器。

 つまりはサンセットドラゴン。アカムだ。


「ヒ、ヒロユキ……」

「……」


 兵士たちは本気の殺気を放ってる。俺たちの返答によっては、剣をすぐにでも振り下ろしてくるな。面倒くせぇ。こんなに複数の殺気を向けられるのは気持ち悪い。


 最初から、四角が夕日森で神器を探してたことも、俺たちがその神器を持ってることも、わかってたんだな。だからこそ、神器の話を隠さずにすぐに話したんだ。くそ。神器を探してるって言った時点で気づくべきだったな。神器の一つのアカムも狙われるって。


「……なんのことですかね?」


 いちおう。とぼけてみる。まぁ意味はないだろうけど。素直に認める必要もない。両手を軽く上げて、とぼけ顔を作る。


「無駄だぞ。童は全てわかっている。夕日森で手に入れたサンセットドラゴンだ。魔王軍が召喚魔法で生み出した神器の一つ……それを渡せ」


 魔王軍が召喚魔法でアカムを生み出したことも知ってやがるのか。こいつ……神器についていろいろと調べてるな。一年前から神器を探してることを考えても、それは当然か。


 サニーを連れてこないで正解だったな。そうしたらアカムもセットで着いてきただろうし。この場にアカム自体が居ると、余計に面倒なことになった。


 まぁとぼけても無駄なのはわかってたけど。どうすっかな……。


「ヒロユキ……どうするのよ?」

「……大人しく渡すのも手かもな」

「ちょっと! なに言ってんのよ!」


 俺にとっては、あんなトカゲどうでもいいしな。俺に全然懐かないし。生意気だし。引き取ってくれるならむしろ嬉しいかもしれないぞ。


 でもな……。


「まぁ俺的にはどうでもいいけど、うちのお姫様のお気に入りだから。渡すわけにはいかねぇな」


 けっきょく、結論的にはそうなる。アカムが居なくなると、サニーが悲しむ。アカムを渡さない理由は、それだけで充分だ。


 なにより、黒の女王が神器を集めてなにを企んでるのか。それがわからないのに、大人しく渡すわけにはいかないし。それは、魔王軍に対してと同じだ。


 魔王軍も、黒の女王も……神器を集めてなにをしようとしてるんだか。


 アカムは……神器は渡さない。それで話は終わった。聞きたいことは聞いたし、これ以上話を続けても面倒なだけだ。俺はアマノの手を引いて立ち上がる。


「帰るぞ。アマノ」

「わっ……ちょっと! 引っ張らないでよ!」


 そのままさっさと応接間を出て行こうとした。でも、同時に兵士たちが……剣を俺たちに向かって振り下ろす。


 まぁ女王の申し出(命令か?)を適当にあしらったから、仕える兵士としては当然の行動だろうけど。


 ばーか。


 そんな鈍ら剣で、俺にダメージ与えられると思ってんのか?


「うわっ!?」


 振り下ろされた剣の一本を素手で受け止めて、そのまま持っていた兵士の体ごと振り回す。武器代わりだ。


「ぐあっ!?」

「ぎゃっ!?」

「うぐっ!?」


 取り囲んでいた兵士たちをまとめてなぎ倒して、最後に振り回した兵士を大臣に向かって投げつけた。大臣も腰の剣に手をかけようとしてたからな。兵士、ご苦労さん。良い武器だったぞ。


「……逃がすと思っているのか? 城の中は魔法結界が張ってある。結界を張った童以外、魔法は使えぬぞ」


 そういや、魔法結界は媒介に魔力を注いだ本人だけは、魔法使えるんだったな。


 だけど、それがどうした? 魔法が使えないからって、俺には関係ない。そんなのなんの脅しにもなってないぞ。


 黒の女王の言葉を無視して、この状況を恐々と見てるアマノの手を引いて、応接間の入り口に向かって歩く。そんな俺の態度がお気に召さなかったのか、黒の女王が魔法を詠唱した。


「【ヤークベルト(闇帯)】!」


 中級黒色魔法。ヤークベルト。黒い閃光が帯状になって敵を貫く魔法だ。黒色魔法は黒の女王の特性色だ。その威力は相当だろうな。


 まぁ……俺には関係ないけど。


「うぜぇ」

「!?」


 装備欄でエクスキューショナーを装備して、片手で一線。ヤークベルトをかき消して、闘気の斬撃が黒の女王に向かって飛んでいく。魔力を使わないスキルなら普通に使えるからな。初対面でラナにぶっこまれたソニックブレイドだ。大剣でも撃てる。


「うっ!? ……」


 まぁ当てる気はなかったけど。ただの威嚇だ。斬撃は黒の女王の脇をかすめて床と壁を切り裂いた。最低レベルで撃ったけど、ちょっとムカついてたから少し力が入っちまったな。


「もう撃ってくるなよ? 次は当てるから」

「……」


 俺の威嚇にびびったのか、黒の女王も兵士たちも、それ以上攻撃してくる様子はなかった。まぁそれを狙っての攻撃だったんだけど。


 あーあ……穏便に済ませたかったのに、けっきょくやっちまったな。だったら最初から力づくでいけばよかった。


 城内を歩いてても、俺たちを止めようとする兵士はいなかった。黒の女王から指示が出てないのか? まぁ楽だからいいけど。そのままクロック城の門を出たところで、だんまりだったアマノが口を開いた。


「ちょっと……よかったの? あんなことやっちゃって。それから手を早く離せ」

「仕方ないだろ。向こうから仕掛けてきたんだ。城をふっ飛ばさないだけありがたいと思えぐらいだ。クロックに長居する理由もなくなったし。離すから手を握りつぶそうとするのやめて」


 ったく……お前の身の安全を考えて手を引いてやったのに。理不尽だ。それで俺が文句を言われるなんて。


 まぁ、でも神器がまた出てきたことで、俺たちのパーティのクエスト。その流れがわかってきた。


 パーティのクエストは、それぞれ違う。何かをストーリーの軸にして、クエストが進んでいくんだ。無意味なフラグなんてない。


 その『何か』。


 アカムレッドの王家の宝。サンセットドラゴン。神器を探す魔王軍と黒の女王。


 それは全部、繋がってたんだ。俺たちにとって、ストーリーの軸になるのは……。


「……俺たちのクエストは、どうやら神器が関わってくるクエストみたいだな。んでもって、たぶん、ミソラさんのパーティが進めてたクエストにも、神器が関わってた」

「……え? それって」


 そうだ。


 同じアイテムが関わったクエスト。つまり、それを進めて行けば……必然と、ミソラさんに行きつく。俺はそう確信した。


 そしてもう一つ……。


 俺たちのクエストが神器を軸に進むなら、アカムレッドの王家の宝も、神器の可能性が出てきた。






ミ☆





「……童の魔法を、片手でかき消した」


 強いと思っていたが……これほどとは。ただの冒険者ではないらしい。四角の一人、紅炎を倒したのは、まぐれでもなんでもないと言うことか。


 あいつから感じる魔力……想像以上だ。


「……ふふふ……ふはははははは!」


 いいぞ……欲しい……あいつが欲しい! あの力を、童の元で扱いたい! 童の物にしたい! ふはははは! そうすれば、ホワイトシロンとの戦争の勝利も、確実となる!


 お前は必ずもう一度私の元へとやってくる……そのときこそ、童の物にしてくれるぞ!





ミ☆





「……」


 ヒロユキたちが城に向かってからだいぶ経つな。時間的にはまだ昼のはずだが、陽が出ていないから、だいぶ冷え込んでいる。いや……それにしても寒すぎないか? まるでホワイトシロンの雪原のようだな。


 宿の食堂でもらった温かいスープを持って行くと……サニーはベッドに座っていた。


「サニー? どうした?」


 宿屋の部屋に入ってからというもの、サニーはずっと窓の外を眺めている。そんな様子に、アカムも心配そうだ。


「うん……ユッキーたち。大丈夫かなと思って」

「……」


 黒の女王に会うんだ。それなりの危険もある。

 だからこそ、ヒロユキはサニーを置いていったんだ。アカムレッドは三国大戦でクロックの襲撃を受けている。母親を殺されたサニーにとって……少しの精神的隙が、命取りになる可能性もある。


 だが……心配は無用だ。


「心配するな。ヒロユキが居る。黒の女王がなにかを仕掛けてきたとしても、大丈夫だ」

「……うん。そうだよね」


 弱々しく笑うサニー。


 ……自分がこんな状態なのに、ヒロユキたちの心配をするとはな。健気な少女だ。


 今、私にできることは……サニーの傍に居てやることだけだ。心の傷は簡単に治るものではない。


「冷えてきた。スープを飲むといい。暖炉を焚こう。暖かくしているんだぞ」

「うん。アカムが居るから暖かいよー」

「きゅー」


 アカムをぎゅっと抱きしめているサニーは、本当に可憐だな。微笑ましい。


 スープをサニーに渡して、部屋の隅に置いてあった暖炉用の薪を手に取る。魔力を込めてある薪だ。赤色魔法で着火すれば、すぐに暖まるだろう。


 暖炉に火を焚こうとして……異変に気が付いた。


「……?」


 凍っている。暖炉の中にあった、使いかけの薪が。


 馬鹿な……確かに寒いが、物体が凍るほどの寒さだと? そんなことは、クロックではあり得ないはず。ましてや、魔力が込められた薪だぞ……? 簡単に凍るわけがない。少なくとも、自然現象では……。


 ……自然現象ではない? まさか……。


「……!? サニー!」

「え?」


 気配に気が付いたときには、少し遅かった。


 部屋の中が……数秒のうちに青く染まって、凍り付いていく。気温が一気に下がり、呼吸をするのも苦しいほどだ。


 青色魔法……!? しかもこれは……氷属性か!


 サニーを抱え、剣を抜刀して構える。魔力を感じる……かなり強い魔力だ。この前のガンマと同等の……。

 その魔力の主は……部屋の扉を破って入ってきた。吹雪のように、冷気が部屋に入り込んでくる。


「……み~つけた」


 青髪の……女?

 細く、冷たい青色の瞳は感情がまるでないようだ。その瞳で……私とサニーを交互に見てくる。それだけで、射抜かれるような感覚に襲われる。


「神器……渡してもらおうかしらねぇ。でもその前に……どうしたら、良い声で泣いてくれるかしら? あなたたちは……♥」


【四角・氷刃のフィリア 出現】










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『おまけショートチャット』


「……(じっと自分の手を見つめる)」

「なんだよ? そんなに俺に手を握られたのが嫌だったのか?」

「……」

「言っておくけどな。お前の身の安全の為だぞ? 兵士たちが剣構えてたし。お前を単体で置いておくとどうなるか「うっさい。黙れ。毒キノコの味が気になって食べてみたら思ったよりやばくて死ね」」

「……(こいつ。最近死ねの詳細が具体的になってきてない?)」

「……いきなり握るんじゃないわよ。馬鹿」

「あ? なんか言ったか?」

「うっさい。黙れ。首の骨へし折るわよ」

「純粋に殺そうとするのやめない?」

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