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ゲーム世界に三年居た俺は女剣士に見下されました⑧

【アマノ】 職・マジックユーザー

Lv26

力     1

体力   10

素早さ   1

知力  100

技    68


武器  紅玉の杖   魔法攻撃力 60

防具  紅玉の魔服  防御力   40

装飾品 紅玉ピアス  魔法攻撃力+10%


【サニー=アカムレッド】 職・ヒーラー

Lv23

力     1

体力    1

素早さ   1

知力   77

技    85


武器  レッドロッド・改   魔法攻撃力 50

防具  ホワイトワンピース  防御力   40

装飾品 十字架のリボン    回復魔法の効果アップ


 アマノとサニーのステータスはこんな感じ。

 夕日森の戦闘で、かなりレベルが上がったみたいだな。ガンマは実際には倒せてないから、経験値はなかったみたいだけど。


 あの狂気野郎……やっぱ殺っときゃよかったな。やっぱり今になって後悔した。


「……レベル1000だと?」


 俺のステータスを見て、ラナフィスが驚愕。

 まぁ驚くしかないよな。こんなレベル見たら。


「……これがちーと、と言うやつか?」

「チートはやめろ。覚えなくていいから」


 チートチート言うな。


「チートでしょ?」

「おいコラ。お前はそろそろ俺をフォローしてくれてもいい頃じゃね?」

「無理ね」

「……」


 泣いてもいいでしょうか?

 俺の味方は誰もいないのかよ。


「ユッキーユッキー」

「……なんでしょう?」

「ユッキーはちーとじゃないよ!」


 おぉ! 俺の味方をここにいた! 天使のような笑みを浮かべている味方がここに……。


「普通じゃない人だもんね!」

「……」


 いや、一緒だから。


 やっぱり……味方はいなかった。


「……まぁレベル1000の時点で普通ではないわけだが、お前は……お前たちは一体何者だ?」

「俺の心が大ダメージ受けてるから後でいい?」

「駄目だ」


 ですよねー。

 どうせこいつには冗談通用しねぇから、ストレートに説明すればいいか。


「お前、自分の世界が異世界だって考えたことあるか?」

「……お前、頭は大丈夫か?」

「いや、それはもういいから真面目に聞け」


 さすがの俺ももうふざけないぞ。

 サニーにした説明を、もう一度そのままラナフィスにする。俺、説明そんなに得意じゃないんだけどな。でも頑張ってるんだぞ? わかりやすいように説明してるんだぞ。


「……げーむ世界?」

「うん」

「……そもそもげーむとはなんだ?」

「子供が遊ぶ物。いや、最近は大人向けになってる気もするけど」

「……ふざけているのか?」

「ふざけてないっての」


 お前はどんだけ俺がふざけた奴だと思ってるんだよ。さすがに失礼じゃねぇか? 俺だってふざけるべき場所とそうでない場所ぐらいはわかる。


「ねぇねぇ! お風呂入りに行こうよ!」


 真面目な話をしている途中でも、元気で無邪気なサニー。話の流れをぶった切っても全く気にしない。


「そうだな。話の続きはさっぱりしてからにするか。みんなで一緒に……」

「……」

「嘘です。ごめんなさい」


 アマノの殺人眼。殺される。


 俺は男湯に行くよ! 当たり前だけど。


「私は後でいい」


 空気を読まないラナフィスが、ぷいっとそっぽを向いた。

 KYってこいつみたいな奴を言うんだろうな。


「なんでー?」

「風呂は大勢でワイワイやる所ではない。一日の疲れを癒す、寛ぎの場所だ。一人のほうが落ち着く」


 いや、大浴場なんだけど。みんなでワイワイやるところなんだけど。


「年寄り臭いこと言う奴ね」

「一般論だ。それに、騒がれると不埒な輩の気配がわからなくなる」

「不埒?」

「覗きだ。宿の浴場にはそういう輩が付きものだ。今まで何人も成敗してきた」


 ご臨終だな。その覗きども。

 たぶん、とことんにまで追いかけられて、剣の錆にされたんだろうな。


「……お前は……覗かれる心配はないかもしれんが」

「今……私のどこを見てそう思ったのよ?」

「……? 胸だが」


 悪気のない直球ストレート。アマノに会心の一撃。

 やばい。アマノの顔がみるみる修羅に。そして杖を構える。マジでやばい。

慌てて俺は後ろからアマノの体を押えた。


「待てっ!? アマノ!」

「離しなさいヒロユキ!? あいつのでかい饅頭を吹っ飛ばしてやる!」


 饅頭ってなんだよ。吹っ飛ばすって表現怖いから。

 このままだとマジでそれこそ部屋を吹っ飛ばす勢いだ。俺は全力でフォローを入れた。


「安心しろアマノ! 世の中にはむしろその方がって奴がたくさんいる!」

「……」


 ゆっくりと、アマノが振り返った。

 修羅の顔をそのままに。

 あ、やべ。矛先が俺に向かってきた。


「死ねぇ! 水中でくすぐられながら笑い死ねぇ!」

「ぶががっ!?」


 杖をフルスイング。俺の額に会心の一撃。おかしいな? 俺の防御力ならダメージないはずなのに、なんでアマノに殴られると痛いんだろう……。


 つーかその死に方……どっかだ聞いたことあるぞ……。


「いいからいいからー。みんなで一緒に入ろうよー」

「きゅー」


 サニーがアマノとラナフィスの間に割って入り、お互いの手を掴んだ。


「お、おい! 私は後でいいと言っているだろう!」

「そうよサニー! 私もこんな奴と入りたくないわ!」

「仲良くしなきゃ駄目だよー」

「きゅー」


 三人と一匹は、そのまま部屋を出て行った。


 とりあえず……誰か俺の身の心配をしてください。一人寂しく部屋に残された俺のことを……。






ミ☆






 風呂から出た後も、アマノとラナフィスの険悪モードは続いた。

 いや、ていうか……アマノが一方的に、だけど。ラナフィスはなんでアマノが怒ってるのかよくわかってないみたいだし。天然ってときに残酷だな。


「……おい」

「……なによ?」

「……いや、なんでもない」


 ときよりラナフィスがアマノに話しかけても、アマノはギロリとガンを飛ばしてそれを一蹴。ラナフィスは仲良くなりたい、というか……この険悪モードが嫌みたいだな。でもこうなったアマノはしばらく触らないほうがいいぞ。噛みつかれる。


「サニー。けっきょくアカムも連れて行くのか?」


 その二人の空気に耐えられず、俺はベッドでアカムと遊んでるサニーの所に逃げた。


「うん! いいでしょ? アカム可愛いから!」

「きゅー」

「……」


 可愛いは別に理由にならないけどな。

 まぁ邪魔にはならないだろ。こいつの炎、けっこうな威力だし。

 俺はそっと、アカムの頭を撫でようとした。


「ぎゅー!」


 めっちゃ唸られた。

 可愛くねぇ。お前を助けたの誰だと思ってやがるんだ?


「しかし、そのサンセットドラゴンが……」

「アカムだよー」

「……アカムが神器という存在の一つなら、また四角が狙って来るんじゃないのか?」

「別に。倒せばいいし」

「……仮にも四角に対してそんな台詞を吐けるのはお前だけだろうな」


 だって事実だし。

 四角が全員束になってかかってきても、俺負ける気しないよ?


 まぁ一人だけ……。

 【オリビア】が来たら、ちょっとだけ厄介かもしれないけど。


「……お前たちはこれからどうする気だ?」

「ん? とりあえずクロック地方に船で渡るつもりだ。その為に、ここからさらに東にある【紅葉港レッドツリー】に行く。なんかクロックとホワイトシロンがまた戦争を始めるって話だからな。クロックの首都に行く」


 これはさっき町長から聞いた話だ。

 クロックとホワイトシロンがまた戦争を始める兆候があるってな。アカムレッド王も警戒してるらしい。


 三年前の三国大戦。それぐらいの戦争が、また始まる可能性もあるんだ。


「……お姉ちゃんも、クロックにいるかな?」


 不機嫌だったアマノが、その話を聞いて心配な表情を見せた。

 正直、情報はゼロだ。

 この広い世界から一人の冒険者を見つけるってのは本気で大変だ。とりあえず、クエストを進めながら探すしかない。

 ちなみに、町長が集めた冒険者の中に、アマノの姉はいなかった。そもそも、冒険者の中にアマノとサニー以外は、ラナフィスしか女がいなかったらしい。


「アカムレッドは国の中でも小さい国だからな。お前の姉ちゃんがどんだけのレベルになってるかわからねぇけど、クロックのほうがクエストの難易度として高くなる。いる可能性は高くなるな」

「……そう」


 普段はこんな強がりのおてんばだけど。

 姉ちゃんのこととなると、こんな表情を見せるんだ。アマノは。


 見つけてやりてぇけど……あせっても仕方ねぇか。


「姉?」

「俺らはこっちの世界でアマノの姉ちゃんを探してるんだよ。あ、ついでに魔王討伐も目指してる」

「……こっちの世界とか、くえすととか……正直まだよくわからんが、魔王討伐がついでとはな」


 まぁすぐに理解しろとは言わない。

 サニーは子供脳ですぐに受け入れてたけど。


「そういやお前もなにか探してるんだったっけ? 呪剣……だったか?」

「……あぁ」


 ガンマとの戦いで、そんなことを言ってた。

 父を殺した呪剣を探す、とか。呪剣なんて俺も聞いたことがない。


「呪剣ってなんだよ?」

「……装備者の生命を食らう、呪われた剣だ」


 あーいわゆる呪いの装備ってやつか。名前のまんまだな。

 装備した瞬間に【デロデロデロデロデーデロン】とか音楽が流れて【この装備は呪われていた】とかメッセージが出て外せなくなるやつ。この世界にもそんなのあったんだな。


「私の父は魔王討伐の旅に出て、その途中……呪剣に魅入られて、鬼人のような強さを手に入れた。しかし……その強さの代償が自分の命だ。呪剣を使い続けた父は、呪剣に命を食われた。その後、呪剣は行方不明になった」

「……それで? 呪剣を見つけてどうする気だ?」

「決まっている」


 壁に立てかけてあった剣を手に取り、握りしめるラナフィス。


「呪剣を破壊する。もう二度と……父のような犠牲者を出さないために、必ず……この私が……」

「……」


 敵討ちみてぇなもんか。

 まぁ魔人が使ってた魔剣を使ってる立場としては、ちょっと微妙な気分だけど。


「まぁ無理しねぇでせいぜい頑張れよ」

「……私もお前たちの旅に同行する」

「はいはい。せいぜい……って、は?」


 なに言ってんのこの女?


「はぁっ!?」


 俺以上にめちゃくちゃ驚いている……ていうか、嫌悪感満々で声をあげたアマノ。


「え? ラナも一緒に来るのー?」

「……サニー。ラナってなんだ?」

「ラナフィスって長いじゃん?」

「……俺もいただき」


 確かに長くて言いづらいと思ってた。


 って、そうじゃなくて……ラナも一緒に来るだって?


「なんでだよ?」

「そうよ! なんであんたまで一緒に来るのよ!? 冗談じゃないわよ!」

「アマノ。ちょっと黙れ」


 サニーのときは全力で受け入れたくせに。私情を挟むな。


「……お前は強い」

「……」


 ラナが初めて、俺を上に見た。

 うん。いやまぁ事実で当たり前なんだけど……こんな正面から言われると、調子狂うな。


「強いお前といれば、呪剣に……もしくは呪剣に魅入られた者と接触できるかもしれない。だからお前たちに付いて行く」

「……いや、だからってなぁ」


 個人的に、このパーティ。探す物多いんだけど。

 アマノの姉ちゃんに。アカムレッドの王家の宝。これ以上増えるのはなぁ……。


「もう少しよく考えてだな……」

「私はもう、命を捨てる、と簡単には言わない」


 俺がさっきラナに言った言葉だ。


「死ななくてもいい所で死ぬのは許さん。死にたくても俺が死なせない。そう言っていたな?」


 ……言ったけどさ。あれはその場の勢いでって言うか……空気に流されたって言うか……後になって考えると歯が浮くようなこと言ってたなって……死にたくても死なせないなんて言ったっけ? ちょっと美化してない?


「もし、私が自ら命を捨てるような行動を取ったときは……」


 あんまり表情を変えなかったラナが。


「お前が止めてくれ」


 笑った。


 満面の笑み……まではいかないけど、確かに、笑みを浮かべてる。


 ……綺麗だな。


「……わかったよ」

「ちょっ!? ヒロユキ!」

「アマノ。ラナは相当な実力者だぞ? パーティに入れば絶対に戦力になる。さっさとクエスト進めて、姉ちゃん見つけたいだろ?」

「……」


 姉のことを持ち出されて、アマノはそれ以上なにも言えずに押し黙った。

 アマノは個人的にラナが気に入らないみたいだけど、ラナのレベルと装備的に、パーティに入れれば絶対に役に立つ。さっき、俺の作戦を軽々と実行できてたところを見ても、戦い慣れてるしな。


 つーかたぶん、四角とかそのクラスが来ない限り、ラナがいれば俺の出番はしばらくない。


 ……楽したいわけじゃないよ?


「……私はまだ認めたわけじゃないからね」

「あぁ。よろしく頼む」

「だから認めてないってば!」

「ラナもこれから一緒だぁ! 賑やかになってきたねぇー」

「きゅー」


 まぁ一気に一人と一匹増えたからな。確かに賑やかになってきた。


【ラナフィス=ルミナシアがパーティに加わった】


【ラナフィス=ルミナシア】 職・双剣士

Lv73

力    190

体力    90

素早さ   70

知力    15

技     60


武器  フラムベルジュ×2 攻撃力 450×2

防具  聖騎士の鎧     防御力 300

装飾品 パワーリング    攻撃力+20%


 ……男一人に女三人。


 俺、軽くハーレム状態?


「……あ」


 馬鹿なこと考えてる場合じゃねぇ。そろそろ現世界に戻らないと、明日は学校があるんだぞ。


「……」


 そういや大事なこと忘れてた。

 ラナをパーティに入れたってことは……やっぱり。


「……アマノ、サニー。そろそろ現世界に戻るぞ」

「え? なんでー?」

「俺たちは明日学校なんだ。それにあんまり遅く戻ると瞳姉にぶっ飛ばされる」

「がっこう?」

「……まぁ明日説明してやるよ」


 俺はラナに向き直って、手招きした。


「なんだ?」

「……簡単に説明するとな。俺たちが別世界から来てるってのはさっき説明したな?」

「まだ信じていないがな」

「……心配するな。これから嫌でも信じる」

「どういうことだ?」

「こういうことだ」


 俺とアマノがコノントローラーを起動させた。






ミ☆






 意識が戻ってくると、視界に入ってきたのは見慣れた俺の部屋。無駄に広い民宿だからな。半径五メートルなんて家の敷地内で余裕だ。だから部屋でコントローラーを起動させても、他人を巻き込むことは無い。

 服もいつもの私服だ。うん、戻ってきた。現世界に。


「学校か……だるいわね」

「おいコラ。優等生がそんなこと言うな」

「別に優等生じゃないし」


 あんなに勉強できるくせに。


「ご飯まだ食べてないからお腹空いたよー」

「心配しなくても瞳姉がたっぷり作ってるはずだ。めちゃくちゃ張り切ってたし」

「ほんと? こっちの世界の食べもの美味しいから大好きー!」


 いやまぁ、素材自体はそんなに変わらないと思うけど。


 そんな俺たちの会話の中で……。


「……どこだここは?」


 呆然としているラナ。


「ここが現世界。つまり、俺たちの世界だ」

「……正気か?」

「いたって正常だ」


 さっきも言ったとおり、これから嫌でも信じるから心配するな。


「きゅー」


 ……ていうか、アカムまでいるの?










━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『おまけショートチャット』


「ユッキー。世の中にはむしろその方がってどういう意味ー?」

「サ、サニー……その話題を蒸し返すのはいかがなものかと……」

「……(ギロリ)」

「……サニー。耳貸してくれ」

「うん」

「……簡単に言えばな。小さい方が好きって奴も居るってことだ」

「小さいってなにがー?」

「えぇっと……それはもちろん胸――」

「それ以上。サニーの耳に余計な情報を入れたら潰すわよ」

「な、なにをですかね……?(股をきゅっ)」

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