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ゲーム世界に三年居た俺は女剣士に見下されました⑦

「ギャオォォォォン!」


 ぐお!? でっけぇ声だなマジで。ガンマの奇声なんか比べものにならねぇ。

 咆哮自体が衝撃波みたいな威力を持ってる。たぶん、この咆哮はスキルだな。


「よっと」


 アマノたちに攻撃がいかないように、俺はアカムの後方へと回って、最低レベルのエレカミを一発背中にぶつけた。


「……」


 アカムが無言で、俺をギロリと睨んできた。

 作戦通り。でも怖い。まるきり怪獣映画やんけ。


「クリアシールド」


 アカムの次の攻撃が予測できた俺は、先にクリアシールドを展開した。

 その直後、予測通りアカムが大口を開けて炎を吐いてきた。

 残念だったな。今度はレベルを上げたクリアシールドだから破れねぇよ。


 アカムの目が完全に俺に向いているのを確認してから、アマノに叫ぶ。


「アマノ! 撃て!」

「わかってるわよ!」


 アマノがコマンドを開いて、ウォタルバブルを発動させた。水弾がアカムの体を包み込み、一斉に襲い掛かる。


「ギャオォォォン!?」


 よし。ダメージありだ。

 青色が特性色のアマノの中級青色魔法だからこそ、レベルに差があってもダメージが通るんだ。


「そのまま撃ってろよ! アカムの注意は俺が引く!」

「わかってるって言ってるでしょ! 一回言えばわかるわよ!」


 俺にウォタルを一発撃ってきた。コラ。仲間に攻撃、駄目、絶対。


 コマンドを開きながらアカムの体を駆け上がって、ギラギラ光るでかい目に向かって色魔法を発動した。


「【ライトガン(光銃)】」


 黄色魔法の【ライトガン】。

 魔力で創った光の銃を撃つことで、強い光が照射される。その光で敵の目を眩ませる色魔法だ。こんなでかい目の、しかも文字通りの目の前で撃ってやったからな。効果は倍増だ。黄色は俺の特性色だし。


「グギャア!?」


 目が眩んだアカムに、アマノのウォタルバブルが連続で襲い掛かる。

 良い感じに、アカムにダメージを与えてるな。あとは……。


「ん?」


 まだ目が眩んでるアカムが、大口を開けた。でも、俺に向かってじゃない。

 空に向かって。天を仰ぐように、だ。


「ヒロユキ! あれもしかして……」


 アマノがそれを見て、焦りだす。

 うん。俺も嫌な予感がしてたところだ。


「ギャオォォォォン!」


 アカムが空に向かって炎を吐いた。

 空に向かって行った炎は空中で止まり、一つの炎玉になって停止。

 ……かと思ったら、いきなり弾けた。無数に分裂した炎玉が隕石のように森全体へと降り注いだ。


 ……洒落にならねぇから。それマジで森壊滅するって。視界を失ったことで、無差別範囲攻撃してきやがったな。ライトガンは少し失敗だったな。


 仕方ねぇな……。


「クリアシールド」


 低レベルじゃねぇぞ。


 ……そこそこレベルあげる!


 俺が展開したクリアシールドが、森全体を包み込んだ。

 森全体に降るなら、森全体を防御すりゃいい。クリアシールドは、レベルと魔力で範囲を拡大できるんだ。さっきはとっさでそんなこと考えてられなかったけどな(アカムがいきなり炎を吐いてきたとき)。それに、さすがの俺でも森全体を包むほどのクリアシールドはけっこう魔力を消費するからずっと展開させてるのはきつい。


「時間かけるとマジで森やられるな……」


 何回もそこそこレベルのクリアシールド展開してらんねぇぞ。


「【プロボック(挑発)】」


 名前の通り、敵を挑発して自分に目を向けさせるスキル【プロボック】。

 視力を取り戻したアカムが、またギロリと睨んできた。挑発成功。


 ……でもやっぱり、こっわ。


「うぉっと」


 アカムが尻尾を上げて、俺に向かって振り下ろしてきた。エクスキューショナーでガードして全くダメージはないけど、上から叩きつけられた衝撃で足が地面にめり込んだ。


 ……めり込んだ?


「あ」


 やっべ。抜けん。


 おもいっきり足が埋まった。


 いや、マジで抜けないんですけど。半端なくがっつりとめり込んでるんですけど。やっちまった!? これやっちまったよ!?


「あ」


 二回目だぞ。この間抜けな声。


 じゃねぇ!? アカムが今度は横なぎに尻尾を振ってきた!?


「あでっ」


 またエクスキューショナーで防御したけど、衝撃で吹っ飛ばされた。

 ありがとよ。おかげで抜けたよ。ちきしょうが。

 それに俺に反射的にとはいえ、痛いって言わせるとは褒めてやる。デコピンされた程度の痛みだけどな!


「あんた遊んでんじゃないわよ!?」

「遊んでねぇよ!?」


 失敬だな、おい。俺にしては動いてるほうだっての。


「そろそろSP切れるからね!」

「俺を罵倒するよりそっちを先に言えよ!?」


 それが一番重要なんだっての。ウォタルバブルの威力と、アマノのSPで計算して、アカムに与えたダメージを大体計算してんだ。


 ……そろそろ頃合いか。


「いいぞ。ラナフィス」


 俺の合図で、上空で待機してたラナフィスが一気に降下してきた。

 【ウインドスカイ(風空)】。ウインドランの空中バージョンって感じの緑色魔法だ。対象の人間一人を空中へ飛ばせる。一定時間だけ、空を自由自在に動けるんだ。


 そしてもう一つ。俺がラナフィスに持たせたのは。


「――【ソードランス】!」


 ラナフィスの剣、フラムベルジュに赤色魔法の魔力を込めて炎を纏った、即席の魔法剣だ。ようはガンマのプロミネンスソードのちょっと劣化版。魔力で刀身を具現化するんじゃなくて、剣に魔力を帯びさせるんだ。つっても、俺の魔力が込められてるから強いぞ。他人に使わせるには、赤色が特性色の奴じゃないと魔力を扱えないけどな。


 降下の勢いのまま、ラナフィスは片手剣スキルのソードランスで突っ込んだ。名前の通り、剣を槍みたいにして突き攻撃をするスキルだ。一点集中で攻撃の威力が逃げない。ピンポイント攻撃にはこれ以上のスキルはない。


 狙いは――アカムの牙だ。


 ここでモンスターの性質について説明しよう。

 モンスターにはそれぞれ、攻撃されると怯む【弱点ポイント】があるんだ。モンスターの種族によって変わる。んでもって、ドラゴン族モンスターの弱点ポイントは牙だ。


 だから、牙をへし折れば……。


「ギャオォォォォン!?」


 ラナフィスの剣がアカムの牙をへし折った。その直後、ぐったりと体を脱力させる。

 この通り。アカムは完全に怯んで動きを止める。

 あぁちなみに、弱点ポイントにはそのモンスターの持ってる色属性と同じ色属性をぶつけると効果は抜群だ! だから赤色魔法剣でラナフィスに攻撃させたんだ。牙を折るなら、俺の大剣より、ラナフィスの双剣(片方)のほうが狙いやすいからな。


「おっし。後は……」


 アカムが怯んでる間に、最後の仕上げだ。ダメージも充分だし、そろそろいけるだろ。


「……ん?」


 あれ? 確かに怯んだはずなのに、アカムの様子がおかしい。


 怯んでるのに……あれじゃまるで……。


 攻撃体勢だぞ?


「……やっべ」


 感覚でわかった。

 アカムの体に、夕日の光が吸収されてる。

 体の鱗が赤く光って、その光が口に集まる。


 ――【爆裂スキル】か。


 爆裂スキルってのは、ボスモンスター特有のスキルだ。一定量のダメージを受けると、一度きりの最強スキルを放ってくる。


 怯んだ瞬間に、爆裂スキルモードになりやがった。計算外だ。


「――!?」


 アカムが大口を開いて、口に集まった光を一気に放出した。


【サンセットブレス】


「……動くなよ。お前ら」


 さっきも同じこと言ったな。俺。

 でも今回はさっきよりもガチだ。


 間違いなく……。


 これを食らったら、アマノたちは即死だ。


「クリアシールド……じゃ無理だな」


 爆裂スキルは、防御系の色魔法を貫通してくる。防ぐためには……それ以上の攻撃で、相殺するしかない。


 エクスキューショナーを両手で構える。


「ヒロユキ……あんた……」


 アマノが俺を驚いた顔で見てる。


 そりゃそうだ。


 だって……俺がエクスキューショナーを両手で構えたのなんか、初めてだからな。


 悪いな。アカム。


 ――俺を恨むなよ。


「【カラフリアブレード】」


 カラフリアと同じ、全色の魔力がエクスキューショナーを包む。そして重なるように、巨大な剣を具現化した。軽く俺の身長の五倍はある。魔法剣とは違う。これは、剣その物を創造する魔法だ。エクスキューショナーを軸にしないと、俺でも制御が難しい。


「ユッキー!?」


 サニーが叫んだ。


 俺の体からあふれ出る異常な魔力に。


 アカムを殺す気の俺に――。





ミ☆






 魔力の渦が消えたとき。


 立ってるのは俺だけだった。


 アマノたちは俺の魔力にあてられて座り込んでる。


 俺の周りには、アカムのサンセットブレスで焼かれて砕けた地面。草一本残っていない。

 そして……俺のカラフリアブレードでできた地割れみたいな跡。底が見えないほど深い。まるで天変地異でも起こったみたいな光景だ。


 ………………。


 殺すな? そんなの難しいんだよ。


 子供が虫で遊んでて、よく死なせたりするだろ? 俺にとってはそんな感じなんだ。


 仕方がなかった。


 頑張った。頑張ったぞ。俺は……。














「……頑張って逸らしたぞ」


 カラフリアブレードでできた地割れは、地面にひれ伏すようにして倒れてるアカムの横を通っていた。


 ……あぶね。マジで当てるところだった。当たったらアカムの体はチリも残って無かったぞ。


 全色魔力は制御が難しいんだ。こればっかりはレベル最高でも関係ない。

 サンセットブレスだけをかき消して、よく逸らしたぞ。偉いぞ俺。


「アカム……」


 アカムの姿を確認したサニーが、安堵の表情を作る。


「……サニー」


 鞄からアイテムを取り出して、サニーに投げて渡す。


「わっ!? ……あれ? これって」


 サニーが不思議そうにアイテムを眺める。


 これは【パーティリング】だ。まぁ首輪みたいなもん。

 つまりは、これをモンスターにはめると、仲間にできる便利アイテムだ。けっこうなレアアイテムだぞ。

 仲間にできる条件が、一定以上の体力を削って、怯み状態であることだけどな。

 アカムはまだ怯み状態だ。やるなら今しかない。


「無理だな」


 ラナフィスが冷たく言いやがった。


「ボスモンスターにはパーティリングは効果がない。それにそもそも、あんな大きなモンスターにどうやってリングをはめるつもりだ?」


 パーティリングの大きさは、それこそ犬の首輪程度。森の木よりでかいアカムにはまるわけがない。まぁ通常、こんなでかい奴を仲間にすることなんてないからな。

 つーかそのぐらいわかってるっての。ボスモンスターにパーティリングは効果がないってことも承知の上だ。


 だからだよ。これから仕上げだ。


 アカムに近づいて、コマンドで色魔法を選択する。


「ドレルチ」


 光がアカムを包み込んで、徐々に体が小さくなっていく。

 光が消えたとき、アカムは……さっきの小さな竜の姿になってた。


「……それ、敵にも使えるの?」

「弱ってないと駄目だけどな。これで……アカムはボスモンスター扱いじゃなくなった」


 ドレルチは普通、パーティメンバー用だけど、一定量のダメージを受けて弱ってるモンスターにも有効なんだ。弱らせたのはパーティリングの条件と、ドレルチのためでもある。


 そして、成体のサンセットドラゴンはボスモンスターかもしれないけど、幼体なら話は別だ。これならパーティリングが使えるはずだ。


「サニー。急げ。怯みが解けちまうぞ?」

「……うん」


 サニーがアカムに近づいて、膝をついた。

 アカムは「ぎゅー……」と威嚇の声を出してる。まだ敵意は消えてないみたいだ。


「大丈夫だよ。アカム」


 サニーがそっとアカムの頭を撫でた。


「怖くないから……みんなアカムの味方だよ? もう一人ぼっちにはさせないから」


 笑顔でアカムの目を真っ直ぐに見て、パーティリングを首へと着ける。


「アカムの居場所は……ここにあるよ」


 パーティリングが小さく光り始めた。

 敵意に満ちてたアカムの鋭い目が、見る見る丸くなっていく。成体になる前と同じ目だ。

 パーティリングはモンスターの邪悪な心を浄化させるアイテムだ。


 でも……。


 アカムが正気に戻ったのはそんな効果のおかげじゃねぇな。


「お帰り。アカム!」

「きゅー」


 サニーがアカムを最後まで信じたからだ。


 だからアカムも答えたんだろうな。


 ……俺、めっちゃ臭いこと考えてるな。似合わねえ。


「ヒロユキ。あんたさっき……本気出したの?」

「ん?」

「……さっきの魔力。怖いぐらい強かったから」


 だろうな。お前ら魔力にあてられてたし。


「んー……あれで三割弱ぐらい」

「三割!?」

「……なんだよ?」


 そんなこの世の物とは思えないみてぇな目で見るな。俺は幽霊か。


「……チートって恐ろしいのね」

「チート言うな」

「……ちーと?」


 俺とアマノの会話を横で聞いていたラナフィスが首を傾げてた。


「……さっきので三割というのは本当なのか?」

「……俺、そんなこと言ったっけ?」


 誤魔化そう。こいつは色々詮索してくるから面倒だ。


「魔剣を所持。そして全く本気で戦っているように見えないのに……異常な強さ。それに使う色魔法とスキルも一つの職業では使えない物ばかりだ。どう考えても普通ではない」


 鋭く考察してくるな。

 ……こりゃ誤魔化しきれないか? しょうがねぇな。


「……気が向いたら帰って話してやるよ。とりあえず、お前は傷の手当が先だ」

「気が向いたら、ではない。話せ」


 なんで命令形? 俺のほうが強いってわかっても、俺に対するそういう態度は変わらないの?


「……あーそれから、後ろの狂気野郎」


 振り返らないで、声だけ投げる。

 もちろん、狂気野郎ってのは……あいつのことだ。


「……」


 木の陰に隠れてたガンマが姿を見せた。

 死んでなかったか。ちくしょう。本気で残念だ。

 でも、完全にボロボロだ。さすがにもう戦えそうにない。


「その怪我でまだ俺と戦りたいってのか? そんな殺気向けんじゃねぇよ」

「……お前の名前は?」


 誰が教えるか。


「ヒロユキよ」

「おいコラ。勝手に教えんじゃねぇよ!」


 他人事だと思ってよ! こいつに名前を教えることが、どういことなのかわかってるのか!?


「ヒロユキ……か。ひゃはは……覚えたぞぉ……ヒロユキ、お前は必ず俺が殺す……首を洗って待っていろぉ!?」


 な? こうなる。嫌なフラグが立っちまった。


「嫌です」

「次はもっと熱い戦いになるようにしてやるぜ……ひゃーっはっはっは!」

「聞けよ。コラ」


 狂気の顔で笑いながら、ガンマはフラフラと去って行った。


 ……今のうちに殺っといたほうが今後のためじゃね?


 よし殺ろう。俺はエクスキューショナーに手をかけようとした。


「ユッキー」


 でも、サニーが声をかけてきて、その手が止まる。


「アカムがお腹空いたって。早く町に戻ろ?」

「きゅー」


 ニッコリと笑うサニーと、きゅるるるとお腹を鳴らすアカム。


 ……。


 まぁいいか。


 うちのお姫様に免じて、今日の所は見逃してやる。


 この笑顔見てたら、どうでもよくなっちまった。






 ……たぶん、あとでめっちゃ後悔すると思うけど。










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『おまけショートチャット』


「弱点ポイントって、どのモンスターにもあるの?」

「あるけど、基本的にボスモンスターでしか俺は狙ったことがない。雑魚モンスター相手なら、普通にぶっ倒したほうが早い。色属性合わせるの面倒だし」

「ユッキーにも弱点ポイントあるのー?」

「アマノが上目遣いで言い寄って来るのが弱点ポイントかもな」

「死ね。呪いの言葉で呪い死ね。髪の毛が全部抜けて発狂死しろ。顔を掻きむしって絶叫しながら走り回ってショック死しろ。もうなんかとりあえず死ね」

「そういう言い寄るじゃないから!? 全然上目遣いじゃないし!? 最後なんか適当だし!」

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