ずれること4.5㎝
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんとおばあさんには子供がなく、でも、どうしても子供がほしかったので、近くの神社に「小さくてもいいので子供がほしい。」とお願いをしていました。
そんなある日のこと。おじいさんとおばあさんに子供ができました。子供は一寸ほどの大きさでした。おじいさんは、この子供に『一寸法師』と名付けようとしました。
が、子どもが言いました。
「じいさん、ちょっと待ってくれよ。俺は一寸よりもうちょい身長あるぜ。一寸法師なんて名前は嫌だ!もっと、『体は子供、頭脳は大人!!』みたいな名前を付けてくれよ。」
そういわれてしまったので、おじいさんとおばあさんは考えに考えて、1.5寸法師と名付けました。
1.5寸法師は、何年たっても大きくなることはありませんでした。何年たっても大きくならないのでおじいさんとおばあさんは、「こいつ、追い出そう。」と夜な夜な相談していました。その相談する姿をみた1.5寸法師は、「やべえ、じいさんとばあさんに家出計画がばれたかも。こうなったら、先手必勝するしかねえ。」と思い、次の日おじいさんとおばあさんに「都に行って名をあげてくる。」と話しました。二人はびっくりしていましたが、「お前がそこまで言うなら仕方がない。」と喜んで送り出してくれました。餞別としてお椀の船に箸の櫂を渡そうとしました。
「マジかよ、ばあさん。お椀の船はまあいいけど、箸の櫂って…。もっとスピードが出そうな、漕げそうな、いい感じのものをくれよ。」
そう言われておばあさんは困りました。家じゅうひっくり返して探した結果、木の匙を持たせることになりました。
1.5寸法師は、お椀の船に木の匙を持って、家の近くの川を下って行きました。
「ねえ、お父さん?幼稚園で読んでもらった一寸法師と、お話がなんだか違うよ?」
「そうかい?でも本屋さんで買ってきた、「昔話全集 第七巻」に書いてあるから、そういうお話なんだよ。最近は、子ども向けにアレンジされたものがあるってよく聞くから、そう言うお話になったんだよ、きっと。」
「フーン。よくわかんない。ほかにどんなお話があるの?」
「そうだな、何々。桃太郎っぽい話と、鶴の恩返しっぽい話と金の斧、銀の斧っぽい話と…」
「みんな『っぽい』話なんだね。」
「ほんとだね。ほら、もうこんな時間だ。そろそろ寝なさい。」
「はーい。」
めでたしめでたし。