第二話、夕飯と未来
ご飯を求め、川を下った先には森の出口があった。
正直安心感で頬が緩みそうになったがぽーかーふぇいす。
むん。
ほどなくして村に着いた。
やっとご飯にありつける。
近くの小屋にいた猟師っぽいおじさんに声をかけると、相手はびっくりしたようにして答えた。
「あ、あんた!無事だったべか!?」
何でも、私が森に入ったっきり帰って来なかったので、死んだものと思われていたらしい。
彼に、ミヤマが抱えている破壊熊の頭部を見せると、更に彼は驚いたようで大声を出しながら村の奥の方へと駆けていった。
すぐに村中大騒ぎで、あっという間に私達は取り囲まれた。
ご飯の事しか頭に無かった私が村人達にもみくちゃにされかけるなか。
私の目は群集の端に佇む少女を捉えた。
暗くてよく分からなかったが、彼女の表情は暗いものでは無かったように思う。
両親を失った彼女が今後どのような人生を送るのかは分からないが。
少なくとも、希望のある人生を送ってほしいと願うばかりだ。
破壊熊の頭部を持ちかえり、たちまち村人達に取り囲まれた僕たちは、気づけば大きめの建物に通され、長机に座らされ食事を振る舞われていた。
なんでも、討伐記念に祝宴を開くとかなんとか。
…………というか、僕何もしてないんだけどな。
森から出る途中で、かの熊の所業は聞いていたが、こんなに大騒ぎになるレベルだとは考えていなかった。
まあ、僕もお腹空いたし、周り誰も気にしてないし、いっか。
セリアさんを見ると、表情は変わらず、しかし目の色を変えて食べていた。
帰り道にひたすらお腹グーグー鳴ってたし、よっぽどお腹が空いてたんだろうと思う。
と、視線を感じたのかセリアさんがこっちを見てきた。
僕は慌てて目を反らし、食事に向き合った。
ふと視線を感じたのでそちらを見やると、ミヤマが視線を反らした。
なんだったのだろう。まあいいか。それより目の前のご飯だ。
小さな村らしく高級な物では無いものの、暖かく美味しいものが振る舞われた。
丸いパンに、豆とイモのスープ……いや、これはシチューだ。それに、香辛料で味付けされた豚っぽい肉の切り身。
パンをちぎってシチューをつけて頂く。
パンの、ほのかに甘い香りとシチューの芳醇な香りを感じ、噛みしめる。旨い。シチューの旨味がたちまち口内に広がり、私は幸せな気分に浸る。
匙をとってシチューをすくう。
フーフーと息をかけて冷まし、ひと口。具に使われた、豆やイモのホクホクとした食感が楽しむ。
フォークとナイフでお肉を頂く。柔らかいお肉を噛みしめるたび、ジュワッと肉汁があふれる。香辛料が肉の臭みを消し、アクセントになっている。この村では一番のご馳走であろう。
しばらくご馳走を堪能し、完食してふぅ、と息をつく。
ふと周りを見渡すと、他の村人も集まってあちこちで酒盛りを始めている。
「そういえば、あんた。森には一人で行ったんだろう?どこで拾ってきたんだい、あんな子」
「………森に突然現れたんです。神隠しならぬ、神現し、と言ったところでしょうか。そこで熊に襲われてたとこを、私が助けました。」
通りがかった女性に声をかけられたので、そう答えた。
ついでに聞いてみたが、神現しにあったのは彼が初めてとの事。
と言っても、あの森は危険な獣も多く住むため、他にそういったケースがあっても瞬く間に獣のエサになっていた可能性もあるのだが。
とりあえず、ミヤマは私の連れ、と言うことにしておこうと思った。
暖かい食事を貰い、僕が生きている実感を少なからず噛み締めていた時、村人に声をかけられ、宿屋のような所で泊まる事になった。
あてがわれた部屋に入り、明りを付けないままベットの上でボーッとしながら、今日起こった出来事を振り替える。
いきなり異世界に放り込まれ、殺されかけ、瞬く間に助けられ、おこぼれで食事と寝床を貰い、こうしてここにいる。
朝起きたときは、こうなろうとは思いもよらなかった。
とりあえず、これからどうしようかな……
窓から射し込む蒼白い月の光に照らされながら考え続ける。
どうやったら元の世界に戻れるか分からないし、この村で生活口を探そうか、それとも……と考えながら、僕は異世界最初の夜を迎えた。
というか、今更な話、日本語が通じているのはかなりの幸運なんだよな……
もう少し書く分量増やすべきかな(´・ω・`)