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――――アイラ・(シルヴァー)『最期の日』

終章:天国の門




 八時、ジェイルが朝の魔術訓練をした後、デートに誘う。服は昔にメイドに勧められて買ったものがある。ヒールを履く練習をする必要がありそうである。ジェイルは喜んでくれるだろうか。可愛いと言ってくれるだろうか。いつもの無愛想ではいけない。笑わないと、でも嘘の表情はしたくない。


 九時半にコヴェントガーデン劇場に着くようにする。劇場のボックス席は親密な空気が馴染み、逢引にも使われるほどだという。これでジェイルをからかってやろうか。ジェイルが劇場の凄さに呆けてるところで、ワタシが誘惑的に近づいて、   。ともかく、ワタシに勇気があったらからかうことにしましょう。


 十二時半に終わり、そのままヴィクトリア駅からフローラティーガーデンまで向かう。その間に昼食。ジェイルの好物は全て把握している。冷めても美味しい状態を保てるようにブロウワーに少しばかり教えてもらった。美味しいと言ってくれるといいのですが。


 特に紅茶煮は苦労しました。少し温度や時間を誤るとグジュグジュになってしまうのですから。少しは褒めてほしいところです。こうして考えているとワタシがただの生娘にでもなった気分です。なんだか心が躍りますし、悶々と顔がにやけてしまいます。


 フローラティーガーデンは聞いた限りですが何もかもが揃っていました。野蛮な闘鶏は論外ですが、アーチュリーや少し気取って、貴族みたいに社交ダンスを踊ってみるのもいいかもしれません。この庭園の目玉は気球で市街を一望できることらしいですが、時間がかかりますし、最悪【浮遊】があるのでいいでしょう。ここ最近ワタシがただの可憐でか弱い美少女だとジェイルが思い込んでいるので、アーチュリーは本気で勝ってみせましょうか。今からでも悔しさに愚痴垂れるジェイルの姿が目に浮かびます。


 最後にはノーサウ村に向かう。全てが終われば誰かがジェイルを連れていくだろうし、それはワタシかもしれないけれども、今のワタシが共に参りたいのです。あそこの眺めは素晴らしいものでした。今のワタシがその瞬間をモノにしたいのです。


 ……一緒にいた時間は必ずしも多くはないけれども、ワタシが生きてきたなかで一番生きていた時間でした。こんなことをすればジェイルは余計に苦しむでしょう。優しいから、想ってくれているから、自責してしまうでしょう。ワタシは自分勝手で、ワタシのためにこんなことをしてしまう。何もせず、何も想わないことこそが一番傷つかない方法だというのに。



 PSこれは叶わぬ願いだから、せめてここでは書き足しましょうか?


 ――――アイラ・(シルヴァー)『最期の日』。


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