蝕む魔術
今回は文章量が少ないです。ご了承ください。
周囲に散らばる瓦礫。漂う砂塵。その建物はもはや原型すら残さずに破壊されていた。廃材と剥き出しになった地面を踏み締めて、チェイサーはニヤリと笑った。しかし彼の姿は魔術の暴走によって変質し、顔半分はまるで黒い鱗のようなものに覆われ、片目は爬虫類のように瞳孔が細くなってしまっていた。
「……まさか、ここまでとはな」
彼は地面に倒れ伏すエドワードの死体を懐かしげに眺める。チェイサーはさも当たり前のように剣を握り締め何かを試すように何度か素振りをした。
「惜しいのだがな。まぁいい」
一人心地に呟いて、周囲を見渡す。周囲の家屋も半壊していて、大通りからは依然として悲鳴が聞こえていたが、それは統率されていて、効率的にこの死闘の中心から離れていくのが分かった。やがて、人々を避難することに一区切りを得たのであろうブロウワーが姿を現した。黒をまぶしたかのような金の髪が揺れて、彼女の翡翠色の双眸が驚愕によって見開く。
「チェイサー……その顔は!? だ、大丈夫なのか? 敵はどこに行った?」
「ああ、これか。思っていたより魔術の暴走をしてしまってね。多分戻らないよ。けれどおかげで……エドワードを今度こそ弔える。しかし……メイザスには逃げられてしまった」
チェイサーの返答に少女は憂いげに瞳を揺らした。距離が近づいて、ブロウワーは心配するように変質した皮膚を撫でた。
「私がもっと早く来てれば……。すまねえ、チェイサー」
「気にする必要はない。ただ……早く皆のところに戻りたいよ。少し疲れてしまった……ハハ」
チェイサーは乾いた笑みを零しながら、動かなくなったエドワードの身体を持ち上げようとするも、力なくよろける。するとブロウワーは慌てて手を伸ばし、肩を貸した。
「無理すんな。エドワードは【浮遊】で運ぶ。一緒に帰ろう。皆喜ぶに違ぇねえ。大丈夫、きっとメイドも無事だ。……大丈夫、大丈夫」
彼女は自らに言い聞かせるようにそんな言葉を口にした。涙を堪えているのかその表情は取り繕った緊張を保ち続けていた。チェイサーはそんな彼女の肩を素直に借りながら、誰にも聞こえないような声でエドワードを喋らせた。
「……あぁ、早く会いたいよ。もうすぐだ。…………リティシア」
不気味で、亡者の未練がましい邪悪な声は、彼自身にしか聞こえなかった。




