血塗れた歴史を踏み締める者
申し訳ございません。今日から期末テスト一週間前となるため、再来週の月曜日までpcが使用不可能となります。この呪縛から解き放たれたらすぐさま再開しますので、その間楽しみに待ってくださると幸いです。
……このページにたどり着くまでの多量の空白は、おそらくはこれが原因なのだろうか。ジェイルは黙々と読み進めた。
『エドワードはショックでおかしくなってしまった。死体に意思を宿らせようとしたため、我々はそれを止めた。すると彼は持っていた拳銃で自殺しようとして、無意識のうちにその拳銃に付与をした。彼の底の見えない悲しみに魔素が反応し、本来不可能であった人間の生成を出来てしまったのだ』
ジェイルは本を読むのを中断すると、アイラに視線を向けた。彼女は視線に気付き、こちらを蒼く透き通った双眸で凝視すると、やがて顔を悲しげに俯かせてしまった。
「……ワタシに何か言葉を掛ける必要はない。余計なお世話はいらない」
「……すまない」
それ以上なんと言えばいいか分からず、本に逃げた。
『エドワードがどれだけ悲観に暮れたか想像もできない。彼は自分の息子にジェイルと名づけた。死が眠っているだけだと思いたかったに違いない。造られてしまった少女には相伴者と名づけた。彼は精神的なダメージのあまり、我々全員の名前を忘れてしまった。だから我々はアイラと同様に、自分の役目をその名に刻むこととした』
「…………」
もはや何も湧いて出てこなかった。虚無感に近い何かが心を満たしていた。
『16年。メイザス・ダロウェイが死亡した。エドワードがレイピアで彼の首を捻り、アイラの弾丸で彼の頭を砕き割った。彼らは泣いていた。リティシアの死を悲しみ、どうしてここまで敵対してしまったのかと泣いていた。泣きながら殺しあっていた。しかしこれで全てが終わった』
結末は分かっていた。こうは書かれているが、実際はメイザスを仕留め損なって、それで殺された。だからこうしてこの世界に呼ばれ、この血塗られた道の上に立つこととなったのだから。
ジェイルは本を閉じて、アイラに歩み寄って改めて礼を言った。
「ありがとう。……ってもお前は無視するんだろうけどな」
アイラは小さく首を横に振ると、席を立ち上がりこちらに歩み寄った。すぐ近くの距離まで来ると、彼女は蒼い瞳で上目遣いをする。
「……礼はいらない。ただ強くなってくれればいい。そのためにワタシ達はいる」
刹那、腹部に強烈な痛みが走った。内蔵が揺らされるような、吐き気を催す衝撃が響き、ジェイルは思わずむせ返る。
「ガホッ! ごほっ! ……なにすんだよいきなり!」
「……すぐに油断する。相手が老人のフリをして近づいてくる可能性だってある。油断は駄目」
手足で防げということだろう。しかしこんな状況で遠慮なく攻撃をしてくるなんて予測できるはずがない。
ジェイルは腹部を押さえたまま、自分がさきほどまで座っていた席に戻り、深いため息を付いた。
暗雲が立ち込めて、じりじりと痺れるような痛みを発していた胃がいつのまにか痛みを止めていた。
「なぁ、アイラ。次読むとしたら何がいい?」
――――もっと知らなくては。結局父さんのことも母さんのこともまだ分かり切れていない。魔法の理屈も、ここがどこなのかさえも。
アイラは面倒くさそうに本棚から数冊取ると、こちらに手渡した。それと同時、華奢な体つきからは想像もできない強烈な蹴りの一撃を繰り出そうとしてきたため、今度こそ手で防いで見せた。
彼女は脚に硬化を施していたらしく、金属と金属がぶつかり合うような、激しく甲高い音が鳴り響いた。
アイラが蛇のようにじっと睨み、ジェイルは久々に、純粋な笑顔を浮かべた。




