始まりの景色
炎が燃え上がる戦場で魔法が飛び交い、武器がぶつかり金属音が響き渡る。
血で血を洗う戦いの中、国力が低下し、民が飢え、滅亡へと向かっていく。
大勢の人が死んだ、家族が死んだ、友が死んだ、恋人が死んだ。
僕の中にしかない、いいや僕だけが知る本来これから起こるできごと。
こんな未来は許さない。僕が必ず‥‥
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メルドニア大陸西部に位置する国、アドメシア王国は人間種の中でも特に人族が国民の大半を占める王国である。
アドメシア王国王都アルンの中央にある国内最大の学校であるアルン王立学院は15歳から18歳までの生徒が通い、学問、魔法、武術などを最高レベルで学べる正にエリートのための学校である。
しかし、貴族においては爵位が高いほど合格難易度が下がり王族や貴族でも
公爵ともなれば試験をなしに入ることができるのである。一方、平民の試験内容は当然最高難度であり、また貴族と違い十分な教育をなされていないような家も多いので平民が合格するのは難しいのである
そんな中今日は入学式であり学院の門を数多くの馬車が通っていく。
その中の1つの馬車の中に肩と腰の間くらいまで伸びた長い黒髪、中性的な美しい顔立ちでやや女よりの顔である黒目の少年------アルマ=サーリングの姿があった。
視点:アルマ=サーリング
正直この学院に入学するのは気が引ける‥‥。
なぜなら俺は公爵家の息子、といっても正妻の子供ではなく、側室の息子なので小さい頃から正妻やその子供である兄に敵視されないように、努力することをやめて愛想をふりまいてきたのだ。
貴族の当主は普通は正妻の長男がなり、よほどの事情がない限りその他の人が当主になることなんてあり得ないのである。
それに家の場合正妻の実家の爵位は伯爵で、側室である家の母親は平民の出なのでそれが覆ることなど天地がひっくり返ってもないのである。
しかし、正妻であるリリィ様は平民の出である母にも、その子供である俺にも優しくしてくれていたのだが、俺が小さい頃から異常に賢かったせいで、4歳の時から次期当主である兄、フレイ様の座を脅かすのではないかと思うようになり、俺たち家族の仲はすぐさま悪くなっていった。
‥‥‥‥‥‥‥‥ということが起こるはずだったので俺は自分の才能の全てを隠し無能を演じることにしたのである。
それからは一切努力することをやめて、兄様や、リリィ様たちに愛想を振りまき生きてきたのである。
おかげで家族の中は良好であり、俺は幸せであったのだが‥‥‥‥‥‥
3年前
「ねぇ、あなた、アルマも王立学院に入れて見たらどうかしら?」
とリリィ様が食事の席で突然そう言った。
俺はその発言にギョッとした。なぜリリィ様がそんなことをおっしゃったのかよくわからなかったからだ。王立学院にいって変に注目をあびるようなことをリリィ様言い出すとは思えなかったからだ。
「うーーーーむ、しかしなぁ、アルマにまともに勉強なんてさせてないぞ?
アルマも下手な役職などにつかずひっそりと暮らして生きたいと言っていたではないか。」
とお父様----マドレア=サーリング公爵はそう返し、フレイお兄様は
「僕も来年から通うんだし、アルマも入学させてあげましょうよお父様!!
かわいい、かわいい僕のアルマのためなら僕がアルマに色々教えてもいいですよ?」
そんな興奮しながら言われると何を教えられるのか本気で怖い‥‥。
僕はただの弟ですよね!!??
信じてますよお兄様???
お兄様は僕を可愛がりすぎていると思う。僕が女の子みたいに見えないこともない見た目だから一時期ほんとにそっちの気がないか疑ったこともあるけど‥‥
婚約者といい感じに言ってるとこも、女の子に抱きつかれて顔を赤くしているところも、そのあと隠れてでハアハア言ってるとこも見たからその気はないはずだ。
兄としての威厳は最後の光景を見た瞬間弟を立てて崩れ落ちたけどね‥‥。
そんなお兄様は、背が高く柔らかい金色の髪に赤い瞳が優しげに輝くイケメンである。魔法、武術、勉強も超優秀で持っているアビリティの数も正確な数は教えてくれないが14歳で10を越えるという化け物だ。
まあ、隠れ変態なので俗にいう残念系イケメンというやつだ。
ちなみに、アビリティとは魔法とは違う様々な独自の力のことで、神からの贈り物とも言われ何らかな成長をしたときに突然目覚めたり、生まれつき持っていたりするのである。
俺なんか12歳で1つしか‥‥、まあ、努力をやめた時点でアビリティが増えるはずもないから仕方ないか。
そんな兄はリリィ様似だ。リリィ様も金色で赤い目の美人だ、いや訂正する絶世の美人という言葉のほうがふさわしい。
お父様は黒髪で黒目の優しい感じのイケメンだ。
お母様はサルベラといって銀髪碧眼でリリィ様に負けないくらいの超絶美女でメイドとしてこの家で働いた所をお父様が‥‥‥‥‥‥ゴホッゴホッ
三人とも30を越えているのに全く老けて見えない現象は『魂の昇華』と呼ばれ、鍛え上げられた魂はその人を人間からより高度な存在へと近づいていくらしい。
それによって肉体も変質に加齢による影響が少なくなっていくらしい。
お兄様はお父様の顔の特徴をきちんと受け継いで、バランスのいい感じになっているのに、俺は髪の毛と目の色は受け継いだけど顔の特徴は多少といった感じで。ほとんどがお母様に似だのだ‥‥‥‥‥‥。別に嫌じゃないけどもうちょっとダンディに成りたかった‥‥。
「そうよね、やっぱりフレイもそう思うわよね?
あなた、アルマの人生は確かにアルマが決めるべきよ。でも学院で色々な友達を作って色々な経験をしておいたほうがこの先いいんじゃないかしら?
私だってアルマのこれからのことが心配なのよ。」
絶句した。
俺は小さい頃の経験でリリィ様には心を完全に許して居なかったのだ。
心のどこかで俺は絶対に嫌われていると思っていたからだ。
そんなリリィ様が俺のことを思って言ってくれている?
「リリィ様は俺のことが嫌いではなかったんですか?」
思わず聞いてしまった。
周りの空気が一瞬で固まった。リリィ様は驚きで目を見開いている。
あ、やばいやらかした‥‥。そう思って言葉をつむごうとすると
「そうね‥‥。確かに昔はフレイの座を脅かすかもしれないあなたのことを警戒していたこともあったわ。でもね今はあなたを本当の子供みたいに思っているのよ?だから少しでもいい人生が歩めるようになってほしいの」
そう言ったリリィ様の言葉に嘘は全く感じられなかった。
「そうだな。確かにそうかもしれんな‥‥。よし、アルマ、学院へいって自分の可能性を広げてこい。フレイあと一年こいつに色々教えてやってくれんか?お前を越える家庭教師はもう中々おらんだろう。マリーもそれでよいか?」
「私はアルマが決めた道ならそれを止めはしません。どうするのアルマ?」
そうか、いつの間に俺たちは本当の家族になっていたんだな‥‥
それなら‥‥
「わかりました。学院に通います。これからお願いします。お兄様」
「任せておけ。僕が学校では教えてくれないことまで手取り足取り‥‥」
「いえ、学校に必要な内容たけで」
そういうと食卓に笑いが起こった。
あぁ、幸せだな。いつまでもこんな幸せが続けば‥‥‥‥。
よし、これで無能は卒業だな!
これから俺の才能が開花するぜ!!
フハハハハハ
そして現在。
なんて思ってた時期が俺にもありました。
どうやら俺はほんとに無能だったみたいなのだ。
小さいころはアビリティ、魔法なんか使わないので刀術や剣術に優れて身体能力も高く頭の回転が速かった俺は才能があると思っていた。
だが、俺は魔法を練習しても全く使えず、アビリティも取得しにくいのだ。
それには理由があったのだが‥‥‥‥。
どんな理由があったとしても使えないものは使えないので俺はまさしく無能であった。
それだけ魔法とアビリティという力は強大なのだ。
もともと、俺は試験がないので学校に入学しても最低限困らない程度には勉強はしたが‥‥‥‥‥‥。
考えても見てくれ。
化け物がうようよいる国内最大の学院に魔法も使えずアビリティもほとんど使えない状態で放り出される俺。
それは例えるなら女の子ばかりの教室にパンツ一丁で放り出されるのと等しいのだ!!
ご想像頂けただろうか?
キャーと悲鳴をあげられ指をさされ通報をうけた先生に職員室に連行される俺を‥‥。
まあ、今のはさすがに言い過ぎたが、実際それぐらいの羞恥プレイなのである。
側室の息子とはいえ一応公爵家の息子である俺面と向かって悪口を言ってくるやつは少ないだろうが、裏で散々言われ、女の子から冷たい視線をおくられる未来が待っているのだ。
そりゃ足取りも重くなるってもんでしょ。
普通、貴族のなかでも5つしかない公爵家の子供は実力が高いって常識があるから余計足が重い‥‥。
そうは言ってもいかないわけにはいかないので馬車からおりて入学式開場に向かう。
そこでーーーー
「アル君!!」
かわいらしい声が後ろから聞こえた。
そこにしたのは身長は150センチくらいの小柄な女の子で、髪色は茶色とブロンズを掛け合わせたような色で肩くらいの長さで、目はクリクリしていて瞳は薄い緑色に輝いて見える。これだけ聞くとかわいい小動物のようですむが、巨乳なのが相乗効果を生み可愛さに加えなんともいえないエロさもかもし出している。
彼女は俺の幼馴染みのルル。
彼女は平民で公爵家の俺と関わりはないと思えるが、俺の場合は特殊で使用人の目を盗んで屋敷を抜けだしたことがきっかけで出会いそれから屋敷からこっそり抜け出しては遊んでいた。
まあ、6歳の時にお父様にばれて叱られてからは許可を頂いて外出していたし(護衛はつけさせられた)、一度お父様に頼んで家に招待した関係でお母様と仲良くなりそれからはちょくちょくうちにくるようになっていたのだ。
そう、うちの家は貴族のそれも公爵家にしてはどこかおかしいのだ。
まあ、そのおかげで領民から愛されている領主なのだが‥‥‥‥。
それで何故彼女がここにいるかと言うと「アル君がいくなら私もいくよぉ!」
とかいって家や図書館に入り浸り勉強し最高難度の試験に合格したのだ。
もともと彼女の両親は凄腕の魔法使いと傭兵で武術と魔法に関しては並大抵でない教育??をうけていたのだ。
彼女はまさしく天才の中の天才といえ、その才能はお兄様と比べても遜色ないくらいのものである。
「ルル、ちゃんと遅刻しずにこれたんだな」
「まあね、さすがに平民でそんなこと入学式からしたらと思うとゾッとするよぉー」
この学院では平民が一番入るのが難しいのに一番立場が危ういのだ。貴族になるべく目をつけられないようにしなければならないので初日から遅刻などした暁にはね‥‥。
「それに、今日からアル君との幸せラブラブ学園生活がはじまる記念すべき日なのよぉ?遅れたら勿体ないよぉ!『ルル今日の授業は君のことを講義しておくれ』『あんっ、もうアル君たらぁ♪』 みたいなぁ!いやーどうしよう‼」
顔を赤くし、自分の体を抱きしめクネクネしながらいっている。
まず、お前の頭をどうにかしようか‥‥。
「お前は相変わらずぶれないなぁ」
「私の行動権利はアル君への愛が30%とアル君への肉欲が70%なんだからぁ!」
「女の子が肉欲とかいうな!てかそういう下ネタは男の俺のセリフじゃないの!?」
「だってアル君ヘタレだからねぇ。いまだに私のこの愛をうけとめてくれないし‥‥」
俺を追って国一の学校にまで入学してくるお前の重い愛は今の俺にはお腹いっぱいだよ。
こいつは俺のことを好きでいてくれるみたいだが、今は俺の返答待ちなのだ。
その理由は貴族は結婚するまで相手に手を出してはいけないいう暗黙の掟があるのだ。結婚して正妻を決めてからは関係ないらしいけど‥‥。
ぶっちゃけ今こいつと付き合ったら俺は我慢できる気がしない。こいつの誘惑に打ち勝つためには今のこの距離より近づいてはだめなのだ。
そんな俺の葛藤はいざしらず。
「いいもん、いつか絶対アル君を私にメロメロにして見せるんだから」
もう、充分メロメロなんだけどねー
と心の中でだけ返事して、入学式開場に一緒に向かった。
「(略)‥‥‥‥‥新入生がこの学院で自分の可能性を広げて大空に羽ばたけることを願います。在校生代表生徒会会長シルバ=アドメシア。」
3年生の生徒会シルバ第一王子のお言葉で入学式はおわった。
王子は赤い髪アメジストの瞳が特徴的で紫の瞳と赤い髪はは王族の証とまで言われ、必ず子供に遺伝するのだとか。
その後、これから住む寮に向かい家からもって帰ってきた荷物を整理すると、すっかり夜になってしまっていた。荷物はたくさんあり従者がお任せをと言ってくれたものの悪いので手伝って疲れてしまったので俺は肝心なことを忘れて眠ってしまった。
今日は『あの』日なのであった。
深い闇の中日付が変わり時計の針が深夜0時をさした瞬間。
寝ていた俺が見ていた夢はかきけされ俺は幻想のなかへと落ちて言った。
----------大切な幼馴染みが傷ついた。
俺はなにもできなかった。
------------国にとっての命運をわける人が死んだ。
俺はその場に居なかった。
-------------お兄様が騙されて家が潰れた。
俺はどうすることも‥‥
--------------お父様が死んだ。
俺は俺は‥‥
---------------命がたくさん消えていく。
俺はただその光景を眺めることしか-----------------。




