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MIRAKUで「必ず!」宣言  作者: 百合男爵
39/42

➖ その8 ➖

店の中は熱気と大歓声だった。


勿論、この騒ぎは俺にとって良い結果になったと言う意味の物じゃない。


そんなことは分かっている。


「黒田官介君!良く頑張ったな!」


そう言って両手を上げて喜んでいるのは又太郎だった。


「ソウソウ、ダイケントウネ!」


マセコも手を叩いてハグしてきた。


次々と、さっきまでのライバル達が満面の笑みで手を握って来る。


だけど、どの顔もどの会話も遠く感じてしょうがない。


たまで他人事の様に聞こえる。


俺は、今笑っているのだろうか……


それとも、恐怖に怯えた青白い表情を見せているのだろうか……


それとも、悲しみに暮れて暗く落ち込んだ表情を見せているのだろうか……


「それでは!全員揃ったので、結果発表と参りたいと思います!」


その前に、と念を押して又太郎がペナルティーについて話を始めた。


「本日のビリッけつのチームの代表者には、参加者全員の食事代全額を支払っていただきまーす」


全員が、ボードに向かって金額の表示に注目した。


喜一郎が、そろそろと前に進み出て言った。


「本日のお食事代の合計は、こちらじゃあ!」


ドドーン!とファンファーレが鳴って金額の数字が大きく出た。


《➖➖➖,000》


イチ!ジュウ!ヒャク!セン!マン!ジュウマン!ヒャクマン!イッセンマン!イチオク!


全員が大合唱となった。


《¥328,459,167》


同時に大歓声と拍手が起こった。


そして全員の視線が、俺に向けられた。


俺だけが呆然と突っ立っているこの光景は、一体何を意味しているのだろうか……


頭の整理がまだつかない。


改めて全員の顔の表情を見つつ、落ち着いて、落ち着いて、と自分に言い聞かせていた。


この次に喜一郎から発せられる言葉は、絶対に聞きたくない。


急に目の前の視界がグニャリと歪み始めた。


「黒田官介君が支払う金額じゃー!逃れられぬ定めなのじゃあ!」


次から次へと、入れ替わりながら皆んなが俺の顔を覗き込んでくる……


どの顔も化け物だ……


モンスターだ……


紫の肌、緑の唇、赤い目玉に黒い牙……


何なんだこいつら、おかしいと思ったよ、俺は罠にはめられたんだ……


そう、まんまとモンスターの餌食にされるんだ……


終わったんだ……


これが終止符、人生の幕が降りる、終演……


ああ母さん、父さん、ゴメンね、俺は所詮この程度なんだよ……


麗亜、本当の姉弟じゃ無いけど、父さんと母さんの事頼むよ……


本当は、麗亜のこと……


ゴメン、もう俺行かなきゃ……


もう、二度とこの世には戻れないんだ……


永遠の別れの時って、こんなにも呆気なくやって来るんだね、母さん……


ああ、離れて行く……


ああ、昇って行く……


これって、いわゆる《天国へ召される》って状態では?


意外に苦しく無いんだな……


なんか実感として感じる気がするな……


でも、やっぱり疲れたな……


眠りたいな……


そのまま俺は、暗い穴へと落ちて行った。


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