第3章 そんな 競技だったとは! ➖ その1 ➖
その一気に加速を始めたテンションに呆気に取られていると、全員が俺の座っているテーブルに集まって来た。
「え?な、何か」
「兄いちゃん、パス出してみな」
急に言われてキョトンとしていると、鞄が急に赤く光りだした。
「早く出してやらないと鞄が燃えちまうぞ」
又太郎に言われ、慌てて中を覗き込んだ。
すっかり忘れていた。
ゲタゲタと笑いが起こる中、そおっと取り出すと、玉は別に熱くはなっていなかった。
途端に皆が一斉に覗き込んだ。
《レッツショータイム!・問答無用!開始10分前》
このメッセージを見た瞬間から、店の中はこれまでのアットホームなムードから一変して気合いのこもった闘いの場となった。
又太郎とマセコは、仕入れて来たモヤシとネギを袋から出して大きなボールへ移し始めた。
「マタチャン、キョウハキャベツタカカッタヨ。カエナカッタヨ」
「かまへん。モヤシとネギだけで最高のモヤシネギ肉炒めじゃ」
テーブルでは、喜一郎がチーム編成の発表を始めた。
何か分かんないけど、面白い事が始まるんだよな。
きっとこのくだりって。
「1番の席は、制服着た若いOLねえちゃん四人のチームじゃー!」
そう言いながら、喜一郎はテーブルの横に①と書かれたポールを立てた。
OLの四人は、それぞれハイタッチでガッツポーズを決めた。
監督は、妥当だと納得の表情だった。
「続いてじゃが、2番の席は、昌さん桂さん良さん信さんのベテラン主婦四人のチームじゃー!」
あらあら、やっぱそうよね〜、とか言いながら、スーパーのビニール袋を抱え直すと、四人は慌ただしく席を移動した。
「その次じゃが、3番の席は、ピチピチ高校女子四人のチームじゃー!」
喜一郎が3番のポールを立てると、女子高生は楽勝楽勝これ勝ったね、などと早くも余裕の勝利宣言をあげてハイタッチを交わした。
この後の展開が全く想像出来なかったけど、気分だけはノリノリ絶好調で腹が空いている事も忘れていた。
そろそろ自分が呼ばれそうな予感がするぞ!
そう思っていたら、その時が来た。
「それから、4番の席は、可愛いお嬢ちゃんの三人と黒田菅介君の四人合同のチームじゃー!」
「よろしくねー」と当然のハイタッチに備えて軽くステップを踏んで両腕を上げた。
でも、彼女達は俯いたまま無言だった。
「アレアレアレ〜、元気無いぞ。ほら、声出して行こう。」
一人がブスーっとふくれっ面で力無く腰掛けると、後の二人も同時に腰を落とした。
「アヤコ、ユウ、サキ、引くな引くな、ここは辛抱辛抱」
そう言いつつ、側では監督が大口を開けてケタケタ笑っていた。
彼女達は、激しく首を横に振って無理無理と連発した。
こっちだって、こんなガキとチームなんか組みたくねえよ。
何の競技なのか分かんねえけど、とにかく子供と組んでまともに闘えるものなんかねえよな。
俺は小学生でなくて良かったよ、ほんと。
つくづく、この世代の女子というものの扱いにくさにヘキヘキする、と思いつつ、これからの展開を思うといいようの無い不安感に包まれた。
「そんでのう、5番の最後の席じゃが、監督と消防のねえちゃん達で四人合同のマッスルチームじゃ」
「今回は、良いメンツが揃ったな。ぶっちぎりで1位だろ。」
そんな会話と高笑いが止まらない四人は、心底ご満悦の様子だった。




