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MIRAKUで「必ず!」宣言  作者: 百合男爵
10/42

➖ その9 ➖


こんな姿、誰にも見られたくない!


今、誰か知り合いが通りがかったら、と思うとそっちの方が恐ろしくてたまら無い気持ちになる。


「ねえ!俺は何処に行くのさ、何処に連れて行かれるんだよ!教えろよババア!」


「全てはその石が教えてくれるよ」


そう言うと、どうせ逃れられないなら、運命の流れに身を任なさい。などと声も高らかに、女は赤いハイヒールを脱ぎ、それを頭上でくるくると回しながら階段へ消えて行った。


分かった!これは夢だ。


こんなへんてこりんで馬鹿馬鹿しい展開が起こっているのは、そう、夢だからだ。


ほとほと自分に嫌気がさすよ。なんでもっと早く気付けなかったのだろう。


急に救われた気がして、自分の頬を拳でこずいた。


え?


痛い……


慌ててもう一度頬を強くつねってみた。


全身にヒア汗が噴き出てきた。


両手でもう一度、頭やら両頬やら両目に鼻の穴もついでに突いて見た。


激痛が走ったではないか。


何度試しても結果は同じだった。


何かが大きく狂ってる。


それは良く分かるが、それが何なのかが分からない。


もう一度辺りを見渡してみても、見える視界も限られてしまっている。


その時、ガコン!ギギ〜!ズッポン!と、耳をつんざく大きく不気味な音が車輌内に響いた。


同時に電車がスルスルと動き出した。


「あ、あ、だ、誰か!誰か聞こえませんか!ぼ、僕の声ですぅ!助けて下さい!」


急に涙が溢れてきた。


得体の知れない恐怖に、全身がガクガクと震え始めた。


埋もれている赤いシートの色が、自分の鮮血に思えた。


「い、嫌だー!嫌だー!」


母さん

父さん

麗亜


家族と離れ離れになるなんて嫌だー!


最後に家族の名前を叫けんだ確かな記憶と共に、電車は高速で暗闇の中へ吸い込まれていった。


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