第六話 入国
今俺は空を飛んで最初の目的地、『東の錨』《イーストアンカー》と呼ばれる都市に向かっている。最低でも1日の野宿が必要だ。旅は順調に進んでいる。はずだったのだが、なぜか2日目の朝、俺は人を1人背中に乗せて飛んでいる。
「はあ……なんでこんなことになってるんだか……。」
時は昨日の昼頃。
「♪♪~~♪~♪~~」
鼻歌をうたっていると、
「ん?」
森の向こうの方に煙が上がっている。さてどうしようか、
「どちらにしようかな、天の神様のいうとおり、あっぷっぷーのぷっぷっぷ。」
結果は「行く」だそうだ。厄介なことにならないよう祈る。信じてるぜ、神様。
人型になって煙の現場に降りてみると、そこは人と魔物が戦った跡だった。辺りには壊れた武器が何個か落ちていた。
「助けて……くれ……」
「うおおっっっ!」
「そこの人……たすけ……てくれ……」
いきなりしゃべるからビックリした。急いで倒れていた人に回復魔法をかける。
『我が魔力を以ってこの者を癒す力となれ、回復《ヒール》』
とりあえず倒れていた男の人の怪我は回復させておいた。
「あなたはどこから来たんですか?」
と尋ねてみたが返事がない。ショックか何かで気絶してしまったようだ。この人がどこから来たのか、何者なのかが分からないので、気絶しているうちに持ち物を確認させてもらう。
防具の中を探っていると、身分証明書のようなカードを見つけた。そのカードによると、この男の名前は、カイル・アーガストというの『東の錨|イーストアンカー』の冒険者ギルドのに入っているらしい。歳はダンザド歴1608年生まれらしい。まったくわからん。見た目は金髪で背は俺より少し高く意外とイケメンなほうだ。若そうなので新米なのだろうか。
他に手がかりはないかと、魔力を眼に纏わせてみてみると、辺りには人と魔物が戦った跡と何人か誰かが逃げた跡があった。これはなんか有りそうだな。
ここにカイルという男が眼を覚ますまでずっといるのはさすがに暇なので、龍になって背中に乗せて飛んでいこう。
だが乗せたはいいが、人を乗せながら飛ぶのは難しい。落ちないよう気を配らないといけないし、何よりいまの俺の元に戻ったときの体でも少し重く感じる。神様、すっごく面倒です。どうにかしてくれないでしょうか?
それでも神様は僕を恨んでいるかのように、面倒ごとを増やしてきた。
「うおおああああ!?空飛んでるなんでえええ!?」
どうやら目を覚ましたみたいだ。
「うるさいんで黙って俺の背中に乗って動かないでもらえますか?落ちて死ぬのはあなたなんですよ?」
「死っっ死ぬうううう!!!」
うるさい。黙れ。 俺は睡眠魔法をかけて強制的に眠らせた。
「はあ……なんでこんなことになってるんだか……」
これで「東の錨」に行くまでは安心かなと思っていたが、もう一回起きて叫ばれたので、
「あの、黙ってくれませんか、落ちて死ぬのはあなたなんですよ。」
「すいません……」
うるさかったが根は素直みたいだ。しかし残念なイケメンだなあ。失望しちまったぜカイルよ。
「あの、助けてくれてありがとう。」
「そんなことより、ほら! ついたよ!」
目指していた国、「東の錨《イーストアンカー》」についた。柵みたいなのがあって、国に入るための門の前には門番が立っているのが分かる。向こうの方に海もあって、結構でかい国だ。それに目を凝らしてみたら、国全体にドーム状の結界がはってある。
「そういえばどうやって中に入ろう?」
「それなら僕の身分証明書があるので大丈夫のはず。」
「おお!ありがとう!」
これで入国という面倒ごとが減った。誰かも分からない一人の旅人なんて入れてくれるわけないしな。
こういうことだったんですね神様。
地面に降りて、人型になって門へ向かう。
「人型にもなれるんだ……」
「そうだけど。」
「君ってスゴイ龍なんだね。」
「う、うん。まあね。」
今気づいたけど龍って普通こんなことしないんじゃないか?でもこいつバカっぽいから全然怪しまれていない。というより得体の知れないドラゴンと普通に会話できてる精神を褒めるべきだ。それなら他の人にばれないようにすればいいだけか。
「俺が龍だっていうこと絶対に誰にも話しちゃダメだよ?」
「わかった。」
いろいろ話しているうちに門についた。そして門番っぽい人が話しかけてきた。
「お前たち、何者だ!身分が分かるものがあったら出せ!」
カイルが身分証を渡す。
「よし、通っていいぞ。しかしそちらのものは?」
「僕を助けてくれた旅人で僕をここまで連れてきてくれたんです。身分証はないですが怪しいものじゃないですよ。」
「お、おお、そうか。では通れ!」
ついに入国!