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"招き人"の召喚ー1

続けての投稿です。今回はここまでです。

よろしくお願いします



~若き日の王(この時は王国の王ではなく、追い出された祖国の王子である)アルフレッドとその盟友ヨハンは、その夜草原の中で見つけた清らかな水が湧き出る泉の横で休むことにした。

 ここまで追ってから逃れるため歩き続けであったアルフレッドはすぐに体を休めようとしたが、それをヨハンが止める。怪訝そうな顔をするアルフレッドにヨハンは言う。

「この泉はきっと何かの神の意志が宿る泉に違いない。その近くで休ませてもらうのであるから、祈りを捧げるのが良いだろう」アルフレッドは泉に神の意志が宿るという事は聞いたことがないが、信仰深く、博識である自分の友のヨハンが言うのであるから、従うことにした。二人は泉に向かって祈りを捧げた後、休み疲れを取った。

 その翌日の早朝、雄鶏が二回鳴いた。二回目の鳴き声は一回目のものに比べて若干違った声をしていた。その声で目が覚めた二人は自分たちの目の前で起きていた事態に驚いた。目の前の泉が光っていたのだ。驚く二人の前で、泉の光は次第に収まっていき、光が消えた後の泉にいたのはアルフレッドたちと変わらないくらいの年の女性だった。

                               列王記・1~




「あとどれくらいで鏡が開かれる?」

「伝令が伝えてきた指示によれば、あと二分とのことです」



 俺は本陣の中にある鏡の前で待ちながら、この国の歴史書である列王記の最初の巻の一部を思い出していた。

 周りではこの遠征軍の司令官がほかの兵士に時間を確認している。ベアトリーチェは俺のすぐ後ろで静かに立っている。そもそもなぜ俺が鏡の前で待っているかといえば、この鏡が転送装置であるからだ。

 “渡り鏡”と呼ばれるこの鏡はこの国の王城と主要都市、戦場の本陣などに置かれており、迅速な情報の伝達を可能にしている。これを知ったときは敵に奪われたらすぐに王城に行かれてしまうのではと思っていたが、基本的に王城のほうから鏡を開かない限り、移動をすることはできないのだそうだ。

 そのため地方から王城に移動する場合は王城側から時間を指定され、その時間になるまで待機しているのが基本なのだ。



「あと1分で鏡が開かれます。準備のほうはよろしいですかな?」



 司令官からの問いに「問題ない」と答える。

 今から王城まで戻った後は少し着替えなどで時間を取った後翌朝まで“招きの儀”に立ち会わなくてはいけない。

 そもそも“招きの儀”とは何かと言えば、早い話が“異世界召喚”である。その“異世界召喚”である“招きの儀”でこの世界に来た人を“招き人”と呼ぶ。この儀式は王国の初期から行われていて、今までにかなりの人数の“招き人”がいる。かく言う俺も“招き人”である。

 三年ほど前にこの世界に来たが、今ではこの世界で当たり前のように生活している。いきなり知らない世界に来ても何とかなるものだと実感したものだ。

 “招き人”はこの世界に来た時に自分が最も働ける分野が決まる。この分野、大きく分けて“武”と“文”に分かれていて、“武”の分野では剣術を得意とする“剣”、槍術の“槍”、馬の扱いを得意とする“騎”、時代を通して数が少ないが、戦闘に関する指揮や自身の戦闘などの全てに通じている“戦”などがある。

 “文”の分野では内政から外交まで政事の全てに精通していて、最終決定権のある国王に対して意見を言う事が出来る“政”、学問などの教育関係に強い“学”、植物や農業関係の“農”、魔術に関して研究や実験などの全般に関わる“魔”など今までに確認された分野は数多い。

 ちなみに俺は“魔”の“招き人”である。


 そんな数多い分野の中でも一番珍しく、貴重なのが“王”と呼ばれる分野である。これはもう分野と言っていいのか分からないが、“招き人”の中に確認されたものであるので、一応分野の中に入っている。この“王”は文武関係なくすべての分野に通じていているオールラウンドな存在だ。その分野の専門には若干劣るが、それでも平均以上の能力や結果を出せる。

 ちなみに俺がさっきまで思い出していた列王記の部分に出てきた泉に現れた女性も“王”の“招き人”である。最もこの時はまだよく分かっていなかったみたいであるが、後年の“学”の“招き人”を中心とした歴史家によって、その後の彼女の功績を見て“王”の分野であると判断された。

 そして、“招き人”は代々同じ分野の“招き人”に受け継がれてきた苗字を継承する。俺の場合“魔”の“招き人”の苗字は“ヘルメス”である。この世界に来て“魔”の“招き人”だと分かり、“ヘルメス”を名乗ったのは34人。俺が今現在の“ヘルメス”なので、正式な名前はハルト・T・ヘルメス34世と言うことになる。

 血が繋がっているわけでもなく、苗字が同じだけでなぜ世とつくのか疑問だが、そういう決まりであるらしいので従うしかない。

 今現在“招き人”は全部で四人いる。この四人が全員同じ時に来たかと言えばそうではない。“招きの儀”にはいくつかの決まりがあるのだ。

 まず、一人の王の治世に行われる“招きの儀”の回数は決まっている。その決まり方は王が即位する日の朝に鳴く雄鶏の数によって決まるという。儀式が行われる具体的な日時までは分からないが、回数だけはその時にわかるという。ちなみに俺がこの世界に来たのは王が即位して二年たった後だったらしい。

 そして、先代の王の時に来た“招き人”が生きている場合同じ分野の“招き人”は現れない。今の代の王が即位したときに鳴いた雄鶏の数は三。そして今までに来た“招き人”は俺を含め二人。今回が最後の儀式になる。

 この世界に来る人の年齢は平均して二十歳。基本的にはそうだが、過去には三十過ぎの人が来たとの記録もある。各王の時代に来る“招き人”の数は必ず複数だという。少ないときに二人、多い時には七人もの“招き人”が来たという。今いる四人の“招き人”のうち二人は前の代の王の時にやってきた人たちで、もうこの世界で四十年近く暮らしている。

 儀式が行われる回数は即位のときに分かるが、具体的な日時はその時が近づいてくると儀式が行われる“泉の間”が自然と発光して時期が分かるという。



「ヘルメス卿、時間です。鏡が開きます」



 近くの兵士の声で、考えを終わらせて鏡を見つめる。見つめること数秒、自分の姿を映していた鏡面の中心から波紋が広がり始め、その波紋が鏡全体へいきわたると、自分の姿を映していた鏡に違う景色が見えていた。見えていたのは王城側の鏡がある部屋だ。どうやら鏡が繋がったみたいだ。



「それでは後のことは任せましたよ。司令官」



 斜め後ろで見送りをしている司令官に告げると「お任せください」と返してきたので、それに頷き、逆側の後ろにいるベアトリーチェを見て、彼女が頭を下げ、準備出来ているのを見て、俺は鏡へ歩き出し、鏡をくぐって王城へ帰還した。





読んでいただきありがとうございました。次も早いうちに投稿したいと思います。感想、ご指摘お待ちしております。

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