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「奴の命は」

作者:

「奴は、俺が殺る」

この言葉を一体何回言ってきたのか。

俺、│八咫烏やたがらす 神羅しんらはふと星が散りばめられている夜の空を屋根から見上げていた。

「奴」とは、夜桜 鈴蘭(やおう すずらん)のことである。俺の復讐劇の幕を上げた、張本人。

・・・さて、俺が奴に復讐することになったときの事を話してみようか。



・・・俺の住んでいた星は、ある戦闘部族が人工の殆どを占めており、そして俺もまた、その戦闘部族に生まれた一人だった。幼少の頃から戦闘術を叩き込まれ、実戦を繰り返す。この星にも生存競争というものがあって、日々生傷が耐えなかった争いの中で俺は育っていった。このまま我々の部族が繁栄していけば、と思った。



             しかし、その繁栄は「あの日」を堺とし崩壊する。



俺が11歳だったあの日、全てを奪われた。突如現れた奴は、瞬く間に俺らの星を滅茶苦茶にしていった。俺が悲しみと怒りで泣き叫ぶのをやめ、ふと辺りを見たその光景は、存在そのものが不明な「地獄」をこの世に具現したようであった。広く燃え広がる炎、一面の焼け野原。そして目に入れぬ事を許さないかのようにどこに目をやっても入ってくる……死体、死体、死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体。

ただ、頭の中がまるで、消しゴムでサッと消されたかのように真っ白になった。

ジャリッという、近づく足の音。

「……………生きてる……人か…?」

ああよかった、と顔を上げると。

「……………。」

そこには返り血にまみれている、刀を持った少女が一人。この世ならざる極寒の目で俺を見下している。

……そうか、……そうか。こいつが、この星をーーーーー。

ふっ、と笑い、体を起こしたところでだ。

突然、顔を思いっきり踏みつけられた。そしてそのまま顔を蹴られた。

…何故だ。何故このような目に会わねばならない?わからなかった。

血を流して死体の上に自分が倒れる。

   俺もそっちへいくよ、皆ーーーーー。


しかし殺される覚悟を決めた直後、その少女は顔に紙切れを落としてきた。

「……それ、宇宙飛行機の券…。死にたくなければこの星から逃げろ」

……は?見逃してくれるのか。この状況で、殺さずに。

「………う…。………うああああああああああ!!!!」

もう、泣き叫んだ。声が完全につぶれるくらい。



ーーーその直後、俺はこれから跡形も無くなるであろう我が故郷に別れを呟き、宇宙飛行機へと乗った。




ーーーーーーーこれくらいか、今、俺が記憶にあるのは。しかしその宇宙飛行機の中で、誓った事は覚えている。


「奴の命は、必ず俺が。」


その言葉は今でも、俺の体をつき動かしている。


……右に誰かの足音がした。俺はあの日と同じように、体を起こして言った。

「…思いにふけるのは、そんなにも悪いことなのか」

「…それに私は答えられるのかしら」

あの日よりより冷たくなったか、その極寒の目。そこには紛れもない夜桜 鈴蘭がいた。

「よもや貴様から姿を現すとはな…」

「………あの日私は、アナタを逃がした。理由は、面白いほど簡単に死んでいく同種族の中でアナタは少し違った感じがしたから。」

俺は立ち上がり、言う。

「……俺は思いにふける事こそあるが、俺も少なからず貴様と同じ部類の人間だ。今や俺は善か悪かでさえわからない。」

「私は紛れもない悪?」

「どうだか。…だがあの時、俺を逃がしたのは慈悲があったのは確かだった。だが過去は過去、今は今だ。貴様が悪から離れようと、より闇に染まろうと…俺には知った事ではない。俺はただ、貴様の行った行いを憎んでいるだけだ。」

「ーだから」俺と奴の言葉が重なる。


「アナタ(貴様)の命は、必ず俺(私)がー。」

そう言い、互いに持つ刀の鞘を軽くぶつけた。



シャリン、という金属音が闇夜に響いた。


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