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中編(本田の推理編)

 (中編は事故の解決に繋がるヒントが多いです。)


 本田は急速に頭角を現した新米アラサー刑事で薄毛である。この高速道路の事故の真相を追ううちに、コレは殺人事件なのではないかと疑い始める・・・

 7月21日の昼3時。坂井は今日の午後から非番。一人になった俺は、引き続き事故のあった現場に来ていた。


 片側2車線の高速道路の追い越し車線に残された50mもの長いブレーキ痕。この事故を起こした河田の容態は良くなかった。場合によってはこのまま死亡する可能性も考えられる。それほど強い衝撃を彼は受けた。シートベルトをしていなかったことと、推定時速110km以上出していただろうことが、彼の責任の重大さを物語っている。


 ここで何かを見た河田は、とっさにブレーキを踏んだ。少しハンドルを左に切っていたせいか、そのままクルマは左側に吸い込まれて衝突。


 ブレーキ痕が始まっているポイントに立ってみる。周囲にはちらほらとガラスの破片がまだ残っている。ここから50mブレーキ痕が続いているのだから本当にスピードというのは恐ろしいものである。


 ブレーキ痕をみると途中でハンドルを切り返したような形跡が一つもない。


 河田の助手席に乗っていた斉藤未由が証言するには、目の前で何かが光ってその後真っ暗になった。その真っ暗な状態のまま衝突して行った可能性がある。


 『ん・・・?』


 足元のガラスの破片。俺は妙な感覚を覚えた。


 『こんなとこにもガラスの破片が・・・ある?』


 ここはブレーキ痕が開始しているポイントだ。河田のクルマが、そこで何かに衝突していない限り、ガラスの破片がこんな場所にあるはずがない。そう、河田はここで光る何かにぶつかって目の前が真っ暗になったのである。つまり、河田は2度衝突した。しかしこちら側のガードレールにはキズ一つない。河田のクルマに衝突した何か。・・・衝突した後、逃げたか、飛んで行ったか、それとも消えてしまったのか。追い越そうとした他車が絡んでいたのか・・・?しかしその様な状況証拠が何一つない。証言もある。その線を追っていくのは少し難しい。


 やはり気になるのは、直前に整備を受けたというガソリンスタンドだ。まずここに向かって手がかりを探すか・・・




 美祢(みね)のガソリンスタンドはインターチェンジから近く、これから高速道路に乗ろうとするクルマの給油地として繁盛しているようだった。車を止めて店舗に入り、店長らしき人物に声をかける。


 「ははあ。そんな事故があったのですか。ウチも高速道路の手前にありますからね。空気圧点検はよくさせてもらってるんですよ。だからどっちかというとちょっとウチに責任があるとか言われてもですね、ちょっとですね」


 「こちらではウォッシャー液補充なんかのサービスもやってあるんですか?」


 「はあ、たまにその様に言われることがありましたらやっておりますよ。もしやる時はせっかくなんでオイル点検もやるようには言っておりますが。昨日のその時間は・・・。ほらそこの。石井が入ってたはずだけど」


 店長の証言をいくつか聞き、礼を言う。自動販売機で冷たい缶コーヒーを2本買い、それを片手に店舗を出ようとすると、意外な人物と出くわした。助手席に座っていた斉藤未由(みゆ)だ。


 「斉藤さんではないですか。体調のほうは大丈夫なんですか?」


 斉藤未由はこちらを見てすぐに誰だか気づいたようだ。すこし具合の悪そうな顔をしているが。


 「刑事さん。実はわたし、思い出したことがあって。昨日じつは、ここでガソリンスタンドに寄ったんです。そしたらちょっと昔の知り合いに会って。ほらあそこにいる、石井くんっていうんですけど」


 「ほう?」


 「あの人、実はむかしちょっと友達だったりしたんですけど。昨日たまたまここでばったり会ったんですよ。で、昨日翔クンの車のボンネットを開けたのはカレです。カレに聞いてみたら原因がわかったりしないんですか?」


 「ふむ・・・事情聴取の必要がありそうだな」


 俺は石井の手の空くのを待って、声を掛けてみた。


 「石井さん。警察ですが。実は・・・」


 石井は私が警察であるコトを知らせる前から、少し挙動不審というか、びくびくとおびえているようだった。いかにもあやしい感じがするが、何か知っているのか?


 「・・・未由のことですね。確かに昨日ココに来て、未由の彼・・・?のクルマを整備しましたよ。オイルチェックとフルードチェック、電圧確認と、あと・・・ウォッシャー液が少なかったので補充しましたかね。あとタイヤの空気圧」


 「その言い方だと、斉藤さんとは昔関係が?」


 「ええ。高校生時代に付き合っていたヒトなんですが。なんだかんだあって1年くらいで別れちゃいましたが・・・やっぱり僕を疑ってるんでしょうか?一つだけ言っておきますけど、車に変なことなんてしてないですよ!ぜったいに!そんな未練なんてないっすから。未由、昨日はいつもどおりだったのに、今日は包帯なんてしてるからビックリしたくらいで」


 そうか・・・。


 

 

 もう缶コーヒーはぬるかった。俺は署に帰った後、事故車両がレッカーされた場所へ向かう。車の中でコーヒーを飲みつつ俺は推理した。ここまでの証言でいくつかおかしい点があった様な・・・!そこに無線で連絡が入る。河田翔、事故を起こした本人―――いや、今回の事件の被害者が亡くなった、と。


 眩しく夕日が照り返す中、俺は事故車両をもう一度チェックした。・・・予想通り―――不自然に凹んだクルマの屋根。そして―――バネが―――ない。あるべきバネが抜き取られている。コイツがこの事件のキーとなる部品。そしてコイツは殺人事件。犯人は・・・間違いなくクルマの仕組みをよく知っている・・・アイツ!


 後編を書く前にちょっと中編を書いてしまいました。あまりに素っ気無い前編だったので、追記というか、事件に深みを足してやろうかなと。中編では話が発展して、犯人がどーのという話になっていますが。前編だけの情報では絶対つかめない内容も多く入っています。そもそも前編では事件というよりは事故の状態ですし。


 前編の内容だけで事故の原因を掴んだ人はさすがお見事でした。中編ではよりわかりやすくなっているのではないでしょうか?

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