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【完結】追放された地味令嬢、実は王国唯一の“魔力翻訳者”でした 〜役立たずと言われましたが、もう契約は終了です〜  作者: あめとおと


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第6話 聖女の奇跡が止まった日


 王都中央広場。


 本来なら祝祭の日だった。


 新聖女セレナによる「大浄化の儀」。


 王都全域の魔力を整え、民衆に奇跡を示す――はずの儀式。


 広場には人が溢れていた。


「聖女様だ!」

「王国は安泰だな!」


 歓声の中、セレナが壇上へ現れる。


 純白の法衣。

 金の杖。

 完璧に計算された笑顔。


 レオンハルト王太子が満足げに頷く。


「これで不安も収まる」


「ええ、殿下」


 側近も安堵した様子だった。


 最近続く魔導トラブル。

 結界低下。

 設備停止。


 だが聖女の奇跡が示されれば、民心は戻る。


 ――そのはずだった。


「では、ご覧ください!」


 セレナが杖を掲げる。


 魔力が集まる。


 光が膨れ上がる。


 人々が息を呑む。


「浄化よ――!」


 閃光。


 黄金の粒子が空へ舞い上がる。


 歓声が上がりかけ――


 次の瞬間。


 バチンッ!!


 空間が弾けた。


「きゃっ!?」


 光が崩壊した。


 魔力が四散し、暴風となって広場を叩く。


 悲鳴。


 混乱。


「制御が乱れています!」

「結界が共鳴している!」


 宮廷魔導士たちが青ざめる。


「止めろ!」


「止まりません!」


 魔力が暴走する。


 本来、儀式魔法は都市結界と同期する。


 だが――。


 同期できていない。


「なぜ連結しない!?」


 魔導士長が叫ぶ。


 術式盤を確認した瞬間、凍りついた。


「翻訳補助層が……消えている?」


 それは以前、常に存在していた補助構造。


 誰が作ったか意識されないまま使われていた調整式。


 そして。


 それを管理していた人物は――。


「まさか……」


 ◇


 壇上。


「ど、どうして!?」


 セレナが焦る。


「いつも通りやったのに!」


 杖を振る。


 光は出る。


 だが魔法が成立しない。


 形だけの奇跡。


 制御が伴わない。


「聖女様、術式が崩壊しています!」

「下がってください!」


「嫌よ!」


 彼女は叫んだ。


「私が聖女なのよ!」


 さらに魔力を注ぎ込む。


 ――それが決定打だった。


 ゴォォォン!!


 都市結界が共鳴振動を起こす。


 空に巨大な亀裂のような歪みが走った。


 民衆が恐慌状態に陥る。


「逃げろ!」

「結界が壊れる!」


 レオンハルトが立ち上がった。


「何をしている!止めろ!」


「止まりません!」


「なぜだ!」


 魔導士長が、震える声で言った。


「術式の意味が……分からないのです」


 沈黙。


「翻訳記録が破綻しています」

「補助式が存在しないと成立しない構造です」


 レオンハルトの背筋が冷える。


「補助式?」


「はい。以前は常に調整されていました」


「誰が?」


 誰も答えない。


 だが全員、同じ人物を思い浮かべていた。


 静かで。

 目立たず。

 会議の隅にいた令嬢。


 書類を直し続けていた存在。


『ここ、意味が違います』


 あの声。


 あの指摘。


 あの――。


「……リリア?」


 初めて、その名が口から漏れた。


 同時に。


 結界が大きく軋んだ。


 警報魔法が王都中に響く。


 赤い光が空を染める。


「結界維持率、七十%を下回ります!」


 ざわめきが恐怖へ変わる。


 王国始まって以来の危機。


 そして。


 レオンハルトは理解し始めていた。


 自分が何を手放したのかを。


 ◇


 一方その頃。


 北方魔導研究所。


「……王都方面、魔力振動が激しいですね」


 観測水晶を見ながらリリアが言う。


 アルヴィンは頷いた。


「ああ。崩れ始めたな」


「崩れる?」


「長年、君一人で支えていた均衡だ」


 彼は静かに続ける。


「代替は存在しない」


 リリアは戸惑った。


「そんな、大げさです」


「いや」


 アルヴィンは断言する。


「君は自覚が足りない」


 少し間を置いて。


「王国は、もう君なしでは回らない」


 その言葉の意味を。


 彼女が本当に理解するのは――


 まだ少し先のことだった。





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