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箱庭  作者: ゆうとんかち
3/6

見えない壁

ヤンデレ⚠️

放課後の校門をくぐると、隼人はふと立ち止まった。

 いつもは行き交う生徒の声や足音が、今日はなぜか遠くでこだましているだけだ。

「ねえ、今日も一緒に帰ろう」

 エマが手を差し出す。白い肌に夕陽が反射して眩しい。

 隣にいるだけで、逃げ場がないような圧迫感があった。

「部活あるんだけど…」

 隼人が言う前に、紬が後ろから腕を絡めた。

「終わるまで待つ」

 その声には、甘さだけではなく、決して譲らない強さがあった。

 二人の視線が同時に自分に向けられる。

 無意識に足が止まる。

 笑っているのに、笑っていない。

 心臓が少しずつ早くなる。

 歩き出しても、三人の間には逃げ道がない。

 学校の帰り道は、昔と同じなのに、世界の色が少しずつ変わって見えた。

 影の濃さも、風の音も、周囲のざわめきも――すべて、自分たちのために止まっているようだった。

「隼人、ねえ」

 紬が声を潜める。

「もし、ここから出られなくなったらどうする?」

 冗談だと思った。

 でも背筋がぞくりとした。

 そして、ふと視線を上げると、誰もこちらを見ていなかった。

 クラスメイトも教師も、まるで存在を認めないかのように視線を逸らす。

 まるで自分だけが、世界から切り離されてしまったみたいだった。

 エマと紬の手が自然に隼人の両側に絡みつく。

 無言で、ただ寄り添うだけ。

 言葉は必要なかった。

 逃げようとすればできるはずなのに、なぜかその気になれない。

 夕暮れの坂道を歩きながら、隼人は初めて思った。

 ――もう、外の世界には戻れないのかもしれない、と。

 三人の影が長く伸び、互いに重なり合う。

 息苦しいほど近い距離。

 安心感と恐怖が混ざり合った空気の中で、隼人は、誰かに許されたわけでもないこの日常を、ただ受け入れるしかなかった。

 箱庭――外に出られない、でも逃げたくはない、三人だけの世界。

 その小さな静寂の中に、次第に足音が重なっていくように感じられた。

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