表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭  作者: ゆうとんかち
1/6

最後のいつも

始めまして。ゆうとんかちです。何となく初めて見ました。どうか温かく見守ってくれると幸いです。

ヤンデレ注意⚠️

目が覚めたとき、台所から包丁の音が聞こえた。


 トントントン、と迷いのないリズム。


 隼人はやとはぼんやりと天井を見上げる。


 この音を聞く朝は、決まっている。


 ――つむぎが来ている。


 廊下に出ると、味噌汁の匂いがした。


「遅い」


 振り向きもしないで紬が言う。


 短くまとめた黒髪。


 無駄のない動き。


 自分の家みたいに台所に立つ姿は、昔から変わらない。


「まだ遅刻じゃない」


「余裕がない時点で遅い」


 相変わらずだ。


隼人の母親が早朝から仕事で家を空けるようになってから、


 紬は毎朝ここに来るようになった。


 理由は単純。


 ――隼人が、料理も家事も壊滅的だから。


 幼なじみとしての責任、らしい。


 本人は否定するけど。


「おはよう、隼人」


 もう一人の声。


 振り向くと、エマが立っていた。


 朝日を受けて、白い肌が柔らかく光る。


 長い金色の髪を後ろでまとめ、ぎこちなくエプロンを結んでいる。


 日本に来て三ヶ月。


 父親の転勤で戻ってきて、家が整うまでの間、隼人の家に滞在している。


 ――昔の約束を果たすために。


「今日は私も手伝った」


「ほぼエマが作った」


「紬が全部教えた」


 なぜか視線がぶつかる。


 空気が少しだけ張りつめる。


 この二人は、仲が悪いわけじゃない。


 ただ――譲らない。


 昔からずっとそうだった。


 テーブルには朝食が三人分並んでいる。


 三人分。


 それが当たり前だった時期がある。


 小学校の頃。


 隣同士の家に住んでいた紬と、


 海外に引っ越す前のエマと、


 そして隼人。


 毎朝のようにどちらかの家に集まって、


 三人で学校へ行っていた。


 ずっと一緒にいるものだと思っていた。


でも、エマが突然いなくなって、


 その「三人」は終わった。


「いただきます」


 声が重なる。


 一瞬だけ、昔に戻ったみたいだった。


「今日、放課後どうする?」


 エマが言う。


「隼人が行くならどこでも」


 紬が答える。


「選択肢それしかないの?」


「あるけど」


「じゃあ言えよ」


「隼人が決めれば同じ」


 意味が分からない。


 でも、分かっている気もする。


 エマが戻ってきてから、


 三人の距離は、昔より近くて、


 でもどこか歪だった。


「もしさ」


 紬がふいに言った。


 箸を置いて、まっすぐ隼人を見る。


「どこにも行けなくなったらどうする?」


「……は?」


「学校にも、外にも」


 エマの手が止まる。


「ずっとここにいるしかなくなったら」


 冗談には聞こえなかった。


「どうもしないだろ。暇すぎて死ぬ」


 軽く返したつもりだった。


 でも二人とも笑わなかった。


 ただの朝だった。


 騒がしくて、


 少し居心地が悪くて、


 でも確かに「いつもの朝」。


 ――三人が三人のままでいられた、


 最後の朝。

僕は国語が苦手なんですが、色々な小説を読んでその表現の仕方などを自分なりに考えた10話ほどの作品を作ろうと思っています。ヤンデレについては、僕の性癖なので、諦めてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ