最後のいつも
始めまして。ゆうとんかちです。何となく初めて見ました。どうか温かく見守ってくれると幸いです。
ヤンデレ注意⚠️
目が覚めたとき、台所から包丁の音が聞こえた。
トントントン、と迷いのないリズム。
隼人はぼんやりと天井を見上げる。
この音を聞く朝は、決まっている。
――紬が来ている。
廊下に出ると、味噌汁の匂いがした。
「遅い」
振り向きもしないで紬が言う。
短くまとめた黒髪。
無駄のない動き。
自分の家みたいに台所に立つ姿は、昔から変わらない。
「まだ遅刻じゃない」
「余裕がない時点で遅い」
相変わらずだ。
隼人の母親が早朝から仕事で家を空けるようになってから、
紬は毎朝ここに来るようになった。
理由は単純。
――隼人が、料理も家事も壊滅的だから。
幼なじみとしての責任、らしい。
本人は否定するけど。
「おはよう、隼人」
もう一人の声。
振り向くと、エマが立っていた。
朝日を受けて、白い肌が柔らかく光る。
長い金色の髪を後ろでまとめ、ぎこちなくエプロンを結んでいる。
日本に来て三ヶ月。
父親の転勤で戻ってきて、家が整うまでの間、隼人の家に滞在している。
――昔の約束を果たすために。
「今日は私も手伝った」
「ほぼエマが作った」
「紬が全部教えた」
なぜか視線がぶつかる。
空気が少しだけ張りつめる。
この二人は、仲が悪いわけじゃない。
ただ――譲らない。
昔からずっとそうだった。
テーブルには朝食が三人分並んでいる。
三人分。
それが当たり前だった時期がある。
小学校の頃。
隣同士の家に住んでいた紬と、
海外に引っ越す前のエマと、
そして隼人。
毎朝のようにどちらかの家に集まって、
三人で学校へ行っていた。
ずっと一緒にいるものだと思っていた。
でも、エマが突然いなくなって、
その「三人」は終わった。
「いただきます」
声が重なる。
一瞬だけ、昔に戻ったみたいだった。
「今日、放課後どうする?」
エマが言う。
「隼人が行くならどこでも」
紬が答える。
「選択肢それしかないの?」
「あるけど」
「じゃあ言えよ」
「隼人が決めれば同じ」
意味が分からない。
でも、分かっている気もする。
エマが戻ってきてから、
三人の距離は、昔より近くて、
でもどこか歪だった。
「もしさ」
紬がふいに言った。
箸を置いて、まっすぐ隼人を見る。
「どこにも行けなくなったらどうする?」
「……は?」
「学校にも、外にも」
エマの手が止まる。
「ずっとここにいるしかなくなったら」
冗談には聞こえなかった。
「どうもしないだろ。暇すぎて死ぬ」
軽く返したつもりだった。
でも二人とも笑わなかった。
ただの朝だった。
騒がしくて、
少し居心地が悪くて、
でも確かに「いつもの朝」。
――三人が三人のままでいられた、
最後の朝。
僕は国語が苦手なんですが、色々な小説を読んでその表現の仕方などを自分なりに考えた10話ほどの作品を作ろうと思っています。ヤンデレについては、僕の性癖なので、諦めてください。




