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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
9/17

09 茜色に染まる


 女子高生ってマジで恋バナするんだな。

 今日も今日とて元気に俺を見つけて近くに寄って来た。そこまではいつも通りなんだが、その後がいつもと微妙に違った。


「梨穂ってば、その男の子のこと、「お気に入りなんです」っていうんだよ」


 くすくす笑いながら話すさくらちゃんはご機嫌だ。

 普段からよく学校であったことや、面白かったドラマやSNSの話なんかをしてくれるが、今日の内容は恋バナだった。二回目だが、女子高生ってマジで恋バナするんだな。


 俺が高校の時はそこまで意識して女子生徒同士の会話なんて聞いていなかったし、男同士でつるむ方が圧倒的に多かった。

 いや、俺が女子に話しかけられなかったというわけではないぞ? 普通に話しかければ話返してくれたし、向こうからも普通に話しかけられたし。


 まぁ、あの頃すでに俺がうちの会社を継ぐ予定なのはクラス中に広がっていたし、「二代目」などと、雑なあだ名をつけられて、クラスの女子には体よく雑用を頼まれていたんだが。

 誰に向けてなのかもわからない言い訳を並べつつ、囲いを立てた現場の前で立ち話をする。


「それでね。七海が梨穂になんでもっと早く教えてくれなかったのよー! って」


 何ともまぁ平和なお話だなぁ。

 梨穂ちゃんという子にいい感じの男の子がいて、七海ちゃんは相談してほしかったのね。しかし「お気に入り」とはまぁ、梨穂ちゃん結構女王様気質なところがあるな。


 女子高生らしい会話に一安心しながらも、同じ女子高生のさくらちゃんが、頻繁に自分に構いに来るのはどうなんだとも思う。

 高校生なんて一瞬なんだから、もっと同年代と関わりなさいよ。


「素敵、ですよね」


 ふんわりと笑いながらさくらちゃんが呟く。

 少し傾き始めた夕日のせいか頬が赤く染まって見えた。だからなんとなく。特に何も考えず口を開いた。


「さくらちゃんはいないの? そういう人。って、これはさすがにセクハラか。すまん」

「い、いえ! 大丈夫です」


 ……話の流れとはいえさすがにまずかったな。何を言っているんだ、俺は。本人は大丈夫だと言ってくれたが、あの発言は普通にまずい。

 昨今何がハラスメントなるかわからないからな。やっぱ会社にも講師とか呼んで講習してもらった方がいいのか?


 一応気を付けてはいるんだが、やっぱ男ばっかの職場だとこうなるな。いや、それを言い訳にするのも良くないんだが。

 とにかく、まぁはい。今後は気を付けます。


「その。今はまだ、そんなにはっきりとしたものではないんですけど。そういう関係になれたらなぁって、人なら、います」


 照れているのか、少しもじもじしながらもさくらちゃんが応えてくれる。

 あぁ、うん。そうか、そうだよな。このお嬢さんは、ついこの間まで中学生だった。感情に名前を付けられなくても何も不思議ではない。

 まさに恋に恋する女子高生の横顔で、どこか遠くを見るように誰かに思いを馳せていた。


「はは、かわいい」


 自然と口角が上がる。

 うん、可愛い。いいじゃないか、年頃のお嬢さんらしくて。


 ある程度のコントロールや道標は必要だろうが、青少年特有の全能感というのは何も悪いものばかりではない。

 健全な方向に向かっているのなら、大いに結構。その無限大とも言える熱量でぜひ青春を謳歌してくれ。大人にしか見えない煩わしいことは、こちらで引き受けるから。


 俺はさくらちゃんの保護者や教師ではない。同じ街に住む、よく話すだけの他人。だが、それでもだ。

 子供は地域で育てるとはよく言ったもので。普段から怪物が出る街なんだ。死者こそ出ていないが、それこそ奇跡みたいなもので、いつ不幸な出来事が起きてもおかしくない。

 ならば、大人として。こういう子供の横顔を守っていってやろうじゃないか。


 幸いこの街には魔法少女たちがいる。

 代々彼女たちの尽力のおかげで怪物たちを退け、数十年の平和を勝ち取って来た。今回も直接的な怪物の対処は彼女たちに頼むとして、俺たちは可能な範囲で未来を担う若者たちを守り、導いてやるべきだ。


 なんて。たかだかアラサーに足を踏み入れたばかりの俺が言っても、言葉の重みも何もないんだが。

 それでも、会社の若い奴らやさくらちゃんを見ると何かしてやりたいって思うし。人として、大人として、彼ら彼女らの未来が明るいものであるようにと願いたくもなる。


 一瞬、さくらちゃんが空気を勢いよく飲む音がした。

 何事かと首を傾げれば、俺を見上げたまま固まっているさくらちゃんがいて。ぽかんとしたような、動揺したような不思議な表情をしていて。かと思えば、勢いよく顔を反らしまくし立てる様に口を開く。


「あ、あのあのあの! 私、用事思い出したんで! それじゃ!」

「え。お、おう」


 余程大事な用事だったのか、早口でそれだけを言い残すと、返事も待たずに走り出した。

 そんな前傾姿勢で走ると転ぶし物にぶつかるぞ。……いや足早いな、さくらちゃん。ここから注意してももう聞こえないだろうくらいには、背中が小さくなっている。

 しかし、まぁ。なんだったんだ?




鈍感というより、そもそもそういう目で見ていないので、そういう考えに至らない。

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