表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
8/17

08 悩み多きお年頃


「荻野さんって苦手な人っています?」


 パーキングで一服していたらやって来たさくらちゃんが言った。

 別にこちらから拒絶はしないが、今までタバコ吸っていたし匂うだろ。車の換気も兼ねて車の扉を全開にして、外に立って吸っていたから目に付いたのかもな。

 ひとまず残り少しだったタバコを車の灰皿に押し付ける。……帰りにガソリン入れるついでに灰皿の中身捨ててもらうか。


 それにしても、今日も元気にやって来たと思ったら何を言い出すのやら。

 別に、暗い顔もしていないので深刻な話というわけではないのだろうが、どうしたどうした。


「何? なんか合わねぇ奴でもいた?」

「私じゃないんですけど、友達がどう対応したらいいかわからないらしくて」


 なるほどなぁ。関わらなきゃいいんじゃね? とは、言いにくいか。

 高校生なんて家と学校と、あとはバイト先がすべてみたいなとこあるし、気軽に関係を絶つにはちょっと関係が密接過ぎるのかもしれない。

 何よりさくらちゃんの友達ってことは十五、六でこの間まで中学生だったわけだ。さすがにバッサリと切り捨てて次へ行けと言うのは情がないか。


 しかしまぁ、苦手な人ねぇ。

 仕事となると苦手とか言っていられないし、必要最低限の礼儀だけは通すべきだ。逆を言うと必要最低限だけ関わっていればいいとも言えるが。上手いことやり過ごすしかないんじゃねぇの?


 人ではないが、俺もついさっきまで苦手な状況を乗り越えてきたわけだし?

 本来なら今日、引き渡す予定だった現場について報告をするために建築業者の社長に会いに行っていた。

 怪物により囲いやショベルカーを壊された結果、工期が微妙に伸びてしまった謝罪をしに。


 いやー、ひっさびさに緊張したわ。幸い今までうちは経験してこなかったが、あいはら建設の社長曰く、現場に怪物が出て工期が伸びる、っていうのはそれなりにあるらしい。

 今回は解体業である内だったが、酷い時は柱まで立てて怪物に壊され基礎からやり直し、というパターンだとか。悲惨すぎるな。


 早めに怪物を完全に退けて、平和な世の中にするために魔法少女には頑張ってほしいとは相原社長の言で。

 壊すだけのうちとは違って、建築業は途中で壊されるリスクもある。恩恵自体はあるが、その分持ち出しもそれなりにあるのかもしれない。


 大人の事情を考えている俺の横で、さくらちゃんが腕を組みながら難しい顔で眉を寄せた。

 わかりやすく「考えてます」って顔してるなぁ。


「荻野さんは、苦手な人がいたらどうしています?」

「基本的には当たり障りなくだが……相手はどんな奴なの?」

「んー。確か、はっきりした性格で、でもすぐに意地悪してくる年上のお姉さんって言ってたかな」


 すぐにからかったりして意地悪されるから嫌いらしいです。なんて困ったように話すさくらちゃんに、なんとなくそれは友達の反応がいいんだろうなぁと思う。

 本当に無意味に嫌がらせをされているのなら、もうちょっと違う反応をするだろうし。


「なんつーか、構いたいんじゃねぇの?」

「ならなんで意地悪するの?」

「小学生男子によくあるあれとは微妙に違うが、自分が構って反応が返ってくるのが楽しいんだろうな」

「ふーん。変なの」


 ごもっともです。

 さすがにそこまで酷くなかったと思いたいが、俺にも覚えがある。いくつだったかは忘れたが、小学生の頃気になっていた女の子に生まれかけのカマキリの卵を見せて泣かれたんだよ。あれは悪いことをした。


 基本的に小学生男子は思っている以上にガキなので、相手が反応してくれると嬉しくて気を引こうと嫌がらせじみた行動をとることがあるんだよ。

 まだ正しいコミュニケーション方法がわかっていないので、そういう行動になるんだ。だから我慢しろというわけではないし、実際嫌な思いをしているお友達にとっては迷惑なのは変わりない。


「どうすればいいの?」

「はっきり嫌だって突っぱねてしまうなり、距離を取るなり色々ある」

「皆、仲良くできればいいのにね」

「まぁ、色々な奴がいるからな」


 皆仲良く、とは言うが、必ずしもそうしていられないのはさくらちゃんも理解しているのだろう。何かを考えているさくらちゃんは相変わらず眉間にシワが入っている。

 友だち思いの悩み多き女子高生だな。俺に懐いているのだけが意味不明だ。


 会社の古株たちに「よく懐いている」とからかわれるも、あくまで一過性のもの、物珍しいだけとは思う。

 女子高生にとっては二十六なんておじさんだろうし、向こうだってそんな気はないだろう。若者同士でよろしくやってくれ。


「ま、手に負えなくなる前に身近な大人にちゃんと相談なさいよ」

「荻野さんとか?」

「そこはまず保護者だろ」

「はーい」


 お父さんお母さんにあんまり心配かけるんじゃないよ。

 一番さくらちゃんたちを大切に思っている人たちでしょうに。


 好き勝手言える立場の人間の言葉が、耳障りが良いのは理解できるけど、それは責任が無いから言えることなのよ。

 親に言い難い話があるのも理解できるけどね。


「まぁ、多少は力になるがな」


 メーターパネルの前に転がしていた眠気覚まし用のガムをさくらちゃんに握らせる。

 それでも食べて、すっきりさせなさい。あんまり悩んでると、勉強が頭に入らなくなるぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ