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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
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07 健やかであれ


 立て続けに怪物に襲われたにもかかわらず、翌日普通に現場に出てきて被害状況の確認と、市に出す報告をまとめている辺り、俺もこの世界に順応しているんだなぁと思わざるを得ない。


 あの後帰って調べたんだが、役所の人間に色々と確認してもらって申請書を提出すれば国の補助金が出るらしい。

 田中のじーさんも言っていたが何十年かに一度のペースで、怪物が出ているなら、そういう法案があってもおかしくはないか。

 どこの予算から出てるんだろうな。防衛費の積み立てか?


「いやー、派手にやられましたねぇ」

「いえ、怪物に壊されたのはこっちの囲いの方ですね」

「おっと、そっちでしたか」


 市に派遣されてきたスーツの市役所員、山田さんは解体現場を見て快活に笑いながら言った。

 なぁちょっとこの人も仕事に慣れ過ぎてないか?


 怪物によって壊されたのは奥に置いてある廃材の山ではなく、現場の周りにある囲いの一面と、あの後の戦闘でぶつかったのか潰れたショベルカー。

 廃材自体は運び出して資源回収に持って行くだけだったのでほとんど被害がないのだが、備品が壊されているのがなぁ。


 ショベルカーの方は保険も入っているし、後でそっちの保険会社の人とも会わないといけないので結局工期は伸びそうなんだよなぁ。

 まぁ。ある程度返ってくるものがあるなら、それを元手に二本アームのショベルカーを導入するか? ……経理のお袋が許すわけないよなぁ。


「荻野商事さんにあるショベルカーは何台あります?」

「これと、他の現場に出ているもう一台ですね」

「あー。なら作業日程も延びちゃいますし、他の現場にも影響出ますよね。そちらの補償の方も出させていただきます」


 頼もしいな山田さん! ありがとうございます!

 しゃべりながらも、バインダーに挟んだ紙に何やら文字をメモしていく姿は、まさに仕事のできる男そのものだ。


「因みになんですけど、怪我をされたりなどは?」

「俺は無いですね。一緒に避難した親子も、恐らくは……」

「惜しいですねー。人災があると補償金跳ね上がるんですよー」


 ただちょっと、こういう事態に順応し過ぎている気もするが。

 その他のチェック項目の確認と、現場の写真を撮り。後で提出する書類の確認をして、さっと帰って行く山田さんを見送る。できる男は残業しないってか。


 さて。この後は保険屋さんが来る。壊された仮囲いの残骸を軽く移動させて、人が入らないように会社の備品倉庫に放ってあったトラロープを張った。

 確認してもらうために壊された現場を維持しておいたが、後はショベルカーの保険の確認だけなのでここは軽く片付けてもいいだろう。運び出す時にトラックをいれるためにも時間のある今の内に簡単にやっておくか。


「あの」


 道路に出そうな廃材を中に放り投げていると不意に声を掛けられた。

 振り返ればそこには昨日の親子がいて。今日は、子供はベビーカーに乗せられているようだ。


「昨日は本当にありがとうございます。おかげで私もこの子も怪我一つ無く済みました」

「いえいえ。赤ちゃんが無事でよかったです」


 ベビーカーの上でぐっすりお昼寝中の赤子に視線を落とす。安心しきってまぁ。

 その顔が見れたなら、多少懐は痛いがあの行動で正解だったと言えるんじゃなかろうか。


「こちら、大したものではないですが」

「気にしなくていいのに。すみません、ありがたく頂きます」

「その、他にも何かお礼ができればいいのですが」


 どこかの洋菓子で買って来たのか、きちんとした紙袋を渡されてこちらも頭を下げる。

 気を使わせて悪いな。あとで石川ちゃんに渡して皆に配ってもらうか。


 母親がちらりと視線を下げる。

 彼女の視線の先には、トラロープの張られた入り口と避けられた真新しい廃材が散らばっていて。


「それこそ気にしないでください。国からの補償も出るみたいなんで」

「そうだったんですね」


 何とも腰の低いお母さんだ。ある意味こっちが正常な状態なのかもしれないが。

 しきりにお礼を言う彼女を見送ってさっきから視界の端でちらちら見え隠れしている女子高生に声をかける。


「ンで? そんなところで何してんの、さくらちゃん」

「えーと、こんにちは~」

「はい、こんにちは」


 さっきから電信柱の影から様子を見ていたさくらちゃんを招き寄せた。


「さっきの人って」

「あぁ、昨日この辺りに怪物が出てな。その時一緒に逃げた人だよ」

「怪我とか、なかったの?」

「ん。俺もあの親子も大丈夫」

「そっか」


 何やら元気のないさくらちゃんに不思議に思い彼女の視線を辿る。

 どことなく暗い表情のまま、廃材の積まれた解体現場を見ている。


「何? どうしたのよ」

「その、ショベルカーが……」


 確かに、視線の先にはアームがへしゃげ、操縦席部分も潰れているショベルカーがあって。

 ああ。前に俺が重機乗るのが好きだって言ったのを気にしてるのか?


「あいつもまぁ、五年近く使ったしな。買い替える時期が少し早まっただけだよ」

「……ごめんなさい」

「なんでさくらちゃんが謝るのよ」


 恋愛的な意味ではないと明言しておくが。いつものにこにこしていて元気で人懐っこいさくらちゃんの方が、今の暗い表情をしているよりも見ていて和むしずっと好ましい。

 だからまぁ、なんだ。そんなに俺のことで気に病まなくてもいいんだがなぁ。


「幸い誰も怪我をしなかったし、行政がしっかりしているおかげで補償金も出る。街は魔法少女たちが守ってくれてるんだから、そんな不安そうな顔しなさんなって」

「……うん!」


 顔を上げて、少しだけ困ったようにさくらちゃんが笑う。

 若人よ、健やかであれ。


 ああ、魔法少女と言えば。

 あのピンクの子、どっかで見たことがある気がしたんだが、どこの誰だったかねぇ。





怪物による被害への社会保障がある世界。

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