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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
6/17

06 人はそれをお人好しと言う

さくら視点


 荻野さんは、私たちのように魔法が使えるわけではない。

 優しくて、いつだって大人で。ぶっきらぼうな言い方をよくするけど、困っている人を放っておけないお人好し。


 だから。

 あなたの姿を見た時、なんだかすごく胸の中が温かくなって、嬉しくなって、笑ったの。


「バイデントが現れたワ」


 私に魔法少女の力を与えてくれた妖精のチュチュが言った。


「七海、梨穂!」

「うん」


 魔法少女、プリズムトリニティに変身するためのプリズムパクトを握りしめて、頷き合う。

 チュチュ曰く、バイデントたちは美空町のどこかにあるイノセントジュエルという不思議な力の結晶を探すために街を壊しているらしい。


 実はあんまりよくわかっていないんだけど、奇跡を起こすほどの力を持っていて、この世界に定期的に生まれては魔法少女たちによってあるべき形へと昇華されてきたみたい。

 そのあるべき形っていうのも、バイデントたちが何を目的としてイノセントジュエルを求めているのかもわからない。でもだからといって、美空町を壊されるのは困る。


 プリズムパクトを開いて、中の鏡に映った自分に微笑みかける。

 パクトから溢れた光が茶色かった私の髪をピンクに染めて、ふわりと広がった。ポンっと蕾が開くような音がして、八重桜みたいに何重にも重なったフリルが私を包み込んだ。


 魔法少女に変身すると、髪の色も長さも変わってなんだか不思議な感じ。それに、身体能力も。

 七海と梨穂。変身したアクアブルーとシャイニーイエローと一緒に地面を蹴ってジャンプする。ひとっ飛びでビルの上までたどり着くのはいまだにちょっと慣れないかも。

 それでも、どこでバイデントが暴れているのか探すために、ジャンプで移動しながら辺りを見回す。


「あそこ!」

「いけません、逃げ遅れた人が!」


 黒くて大きな体に、赤い目と、鋭い爪。バイデントだ。工事現場の囲いを攻撃している。

 それに、囲いの中には二人の人影があって、一人は女の人で赤ちゃんを抱いている。そしてもう一人は──。


「荻野さん!」


 なんでまたバイデントに襲われているの? あの囲いは背が高いしバイデントが近寄ってきているのに気が付かなかった?

 少し前にもバイデントが暴れているのに巻き込まれかけていて、怪我がなくて良かったと安心したばかりなのに!


 バイデントが囲いを壊して中に入ろうとしている。

 それに対抗するように、荻野さんが赤ちゃんを抱いたお母さんを庇うようにショベルカーでバイデントを威嚇した。ああ、まったくあの人は。


 私には危ないことはするなって言うくせに。

 いざ誰かが危なくなると体が動いてしまう人なんだから。


 ほんの少しだけ口元が緩む。

 しっかりしないといけないのはわかっているけど、どうしても嬉しくなってしまう。


 私たちが守っている街には、荻野さんのように誰かのために一生懸命になれる人がいる。

 それだけでなんだか胸がポカポカして、頑張らなくちゃって気持ちになる。


 近くにあったビルの壁を蹴って急ぐ。

 バイデントが荻野さんの乗るショベルカーに向かって走り出す前に魔法を繰り出す。集中して、あの人を、荻野さんを守る魔法を。


「フラワーウォール!」


 あの時と同じ。誰かを守るための魔法

 正直。私は戦うよりも、誰かを守るための魔法の方が得意な気がする。

 バイデントたちに街を壊されて、誰かが悲しむ姿を見たくなくて魔法少女になった。まだ、すごく大きくて力もあるバイデントたちと戦うのは怖い時もあるけど、やっぱり荻野さんみたいな人を見ると勇気が湧いてくるの。


「花びら舞い散る愛の光、フェアリーピンク!」


 バイデントから荻野さんを守った花弁の壁がほどけていく中で、ゆっくりと着地する。

 できるだけ、安心してもらえるように、笑顔を向けて。


「助けに来たよ、お兄さん」


 荻野さんは私が魔法少女だと知らない。

 もし、知ってしまったら巻き込んでしまうかもしれない。その前に、危ないことするなって、怒られてしまいそうだけど。


 だから、私が魔法少女をしているなんて、荻野さんは知らなくていい。

 魔法少女の私を見て呆気にとられる荻野さんをブルーに任せてバイデントと、空に飛んでこちらを見ている少年に向き直る。


「出たな! プリズムトリニティ!」


 意地悪そうに笑った彼は、カロン。

 バイデントたちと共に、プルートという世界からやって来た破壊の使者らしい。


 なんでカロンは街を壊してまでイノセントジュエルを探しているのか。イノセントジュエルとは壊すことでしか見つけられないのか。

 難しいことはよくわからない。


 わからないけど、それでも。

 誰かが傷ついたり、悲しんだりする方法は絶対にダメ!


 無事に荻野さんと赤ちゃんが安全なところまで避難しただろうことを確認して、小さく深呼吸する。

 本当はいつだってバイデントと戦うのは怖い。カロンや他の破壊の使者たちがいる時はもっと。

 でも、街の皆が悲しむのはそれ以上に嫌。だから私は!


「街を壊す悪い子には、きっちり反省してもらうんだから!」


 皆の笑顔を守るために!




魔法少女の戦う理由。

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