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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
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04 青少年と全能感


 ぐっと伸びた三本の爪が家屋だったモノを掴み、どんどん引っぺがしていく。バキバキと音を立てて剥がれたそれを脇によけつつ、上から下へ下へと崩していく。

 久しぶりの現場だ。ショベルカーに乗るのも久しぶりだが、操縦はしっかり体が覚えていたらしく、特に問題もなく作業を続ける。


 やっぱ久しぶりに乗ると楽しいな。昔見たアニメみたいにロボットを操縦している感じで。

 子供の頃に憧れた乗り物に乗って仕事している俺はある意味いい人生を送れているのかもしれない。家業を継いだだけとはいえ、平均よりちょっと上でいたいっつー、万人に言える贅沢な悩みを解決できている程度には恵まれた環境だな。


 バリバリと剥ぎ取った廃材を移動させるべく、レバーを軽く引く。

 最近はどうにも怪物の出現が美空町に集中しているのか、街に被害があって建造物の解体依頼が多い。


 仕方ないとはいえちょっと人の不幸で食っているような感じになっているので、重機で建物を解体するのが好きなんて大っぴらには言えないよなぁ。

 まぁ、壊れかかった建造物を放置すれば倒壊の危険もあるし、必要な仕事でもあるんだがな。


 最近解体ばっかりだから違う仕事をしたいと言う竹城君に、トラックで廃材の運搬を任せてさくさくと壊していく。椎名とチョウさんが入って以降は指導を任せることも多かったし、俺が現場にいる時くらいは気楽な仕事をしてもらうか。

 因みに今日の現場に一緒に来ている椎名には散水を任せている。


「俺この水撒くやつすきなんすよねー。なんか花に水やってるみたいじゃないっすか」

「埃が散らないようにしてるだけだけどな」


 粗方崩し終えて伸びをする。さすがに朝からほとんどぶっ続けだとくたびれるな。少し休憩するか。

 エンジンを切り、ショベルカーの鍵を引き抜いて久しぶりの地面に降りる。建物本体の解体は終わった。後は基礎の撤去と廃材を片付けて、整地。二、三日でこの現場も終わりだな。


「ちょっと一服行ってくるわ、片付け頼む」

「うーす」


 椎名に声をかけて仮囲いを出る。防塵布を潜って外に出れば、いつも通りの街が広がっていて。

 なんというか、面白い光景だよなぁ。塵やら騒音を抑えるためにしている囲いと外で、全く違う世界が広がっているんだから。


 鍵と一緒にポケットに放り込んだ小銭をじゃらりと鳴らし、適当に足を進める。タバコも吸いたいが、コンビニは微妙に遠いんだよなぁ。

 大人しく目に付いた自販機で済ませるか。つい癖でいくつもポケットに入れてしまう小銭を取り出して自販機の投入口に放り込む。缶コーヒーのボタンを押し、間をあけてもう一度押す。ガコガコと音を立てて缶が二つ転がった。


「スーツじゃない!」


 不意に聞き慣れた声が聞こえてそちらを向けば、よく見知ったさくらちゃんがいて。

 何がどう興味を惹かれたのか、何の変哲もない汚れた作業服に目を輝かせている。何がそんなに気になるんだか。


「現場に出てたからね」


 取り出し口の缶コーヒーを二本取り出して、ポケットに残っている小銭を確認する。まだあるな。

 残っている小銭をさらに自販機に入れて適当にボタンを押す。ミルクティーでいいか。


「現場ってアレ乗るの? ほらアレ! 黄色くて長いの!」

「ショベルカー。黄色だけじゃないけどな」

「そう、それ!」


 相変わらず楽しそうに話す子だなぁ。追加で買ったミルクティーを取り出して起き上がれば、すっかり見慣れた制服の女子高生が隣に居座っている。

 遊びたい盛りなのはわかるが、あんまり学校帰りに寄り道するものじゃないよ。俺だってよく買い食いはしたが、さすがに俺とさくらちゃんじゃ状況が違う。


「最近物騒だし早めに帰りなさいよ」

「大丈夫ですよー、まだそんなに暗くないし」

「確かに変な奴もいるけど、怪物だのなんだのも出るんだから」


 本当に、物騒な世の中になったもんだよ。いくら怪物に対抗できる魔法少女がいるとはいえ、一人で登下校している時に怪物が出て逃げ遅れるのは心細いだろう。

 いや、頻繁に街を壊す怪物が出ている以上、家にいても同じなのか? むしろなんで避難勧告出てねぇんだよ。街の住人も普通に受け入れているし。こんなことを考えている俺が可笑しいのか?


「あー、それは。はい」


 どことなく歯切れの悪いさくらちゃんを見下ろす。

 え、何? なんかあるの?


 えへへ、なんて笑って誤魔化そうとするさくらちゃんにため息を吐く。

 確かに高校くらいの頃は好奇心やら正義感やら、謎の全能感がまとわりついていてなんでもできる気になりがちだが、さすがにこれはまずいだろ。

 数日前うっかり怪物に遭遇して死にかけた俺が言うんだから、大人しく言うこと聞いておきなさいね。


「気になるからって見に行くなよ、危ないんだから」


 なんとなく覚えのある青少年特有の全能感に呆れつつ、手にしたミルクティーをさくらちゃんに差し出す。

 大人しくペットボトルを受け取りながら頷くさくらちゃんに、これ以上やかましくは言わないでおく。


 一応、信じるからな。

 こら、ちゃんと視線を合わせなさい。目が泳いでるぞ。



現場仕事と危機管理。

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